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サピエンス異変――新たな時代「人新世」の衝撃

サピエンス異変――新たな時代「人新世」の衝撃 ヴァイバー・クリガン=リード(著) 水谷 淳(翻訳) 鍛原 多惠子(翻訳) 本書にはキーワードとして「人新世」という言葉が出てくる。 これは地質学の概念で近年、地球は新たな地質年代に突入したと考えられるようになってきており、2019年には国際地質科学連合に正式に認定される予定の言葉であり、これからの時代を表す言葉として印象的に使用されている。 つまり、この本は過去の人類の進化からどのように人間の骨格的な変化が起こり、それに付随したイノベーションを紹介し、その流れから「人新世」時代にはどのような変化が人類に起こるのかを提示している。 特にスマホなどで手首や指を酷使している現状から起こりうる病状についてかなりの時間を割いている。 また食物についての変化はかなり面白い考察であった。 近年、収穫高を上げるために食物改良されていた植物はCO2濃度の上昇による温暖化、光合成の促進などにより、より早く収穫でき、カロリー(光合成による糖生成の増加)も多く得ることができ、さらには水をより効率的に利用するようになって必要な水の量も減るようになっている。 しかし、地質におけるミネラルの総量は増えるわけではないので、過去に比べてミネラル不足が深刻化する(25種類ミネラルの将来の不足分は8%との論文を引用)。それにより糖を多く摂取することにより糖尿病患者や肥満が増え、相対的な健康の低下が考えられると結んでいる。 個人的には少し話を盛っているような印象を受けた。 なぜなら、新たな病状や深刻な障害になる人間が増えたのは単純に世界中における平均寿命が伸長しているためであり、全体を見れば幸福度は増加しているように世界は見える。 現代人の病状やこれから起こるであろう手の病気は先進国と言われるレベル4の人たちが受けるものであり、現状レベル2の人は3に、3の人が4になる過程においてはそれらは大きな問題ではないと考える。 ミネラル不足を声高に叫んではいるが、ではそのミネラルにより引き起こされた病気は全体おいてどのくらいの割合なのだろうか?? それは現在において顕在化しており、今からすぐにでも対策すべきことなのだろうか? 人が気づいていない点についての指摘は着眼点として、非常に非凡なものであると思うがいまいち響かない。 また章ごとにまとめを作っているが、その章に記載がないものが追記されている。 それに対しての補足がないため真贋を疑ってしまうのは残念な部分であった。

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