さんの書評2019/03/05

ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム

ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム この本は「イノベーターのジレンマ」のクレイトン M クリステンセンによる著書である。 マーケティングが真に追及すべきことは何なのか?をジョブ理論として提唱している。 これは今までと何が異なるのか? それは今までのマーケティング(顧客満足)のみを追及するのではなく、顧客がそのプロダクトを雇用する際に、どのような要件(ジョブ)を解消するためにそれにより進化し、何を解雇したのか?を見るべきであるとしている。 つまり、ジョブを雇用した際の状況を俯瞰してライバルを見極めるべきであるとしている。 またジョブを定義する際、気を付けるべき問題が二つあるとしている。 片付けるべきジョブには形容詞や副詞で説明してはならない。 例えば”便利な”は、顧客が競合他社ではなくあなたのプロダクトを選ぶ理由ではあるかもしれないが、ジョブではない。明確に定まった「片付けるべきジョブ」は動詞と名詞で表現できる。「手作業でタイプしたり編集したりしなくてもいいように、本を口述で”書く”必要がある。はジョブであり、「もっと正直にならないといけない」はジョブではなく、目標である。 二つ目は、ジョブには適切な抽象度が必要であるということだ。 同種のプロダクトでしか問題を解決できないのなら、それはジョブではない。 つまり、「350mLペットボトルに入ったチョコレート味の飲み物が欲しい」はジョブではない。 「通勤中、私の目を目覚めさせ、運転に専念させるものが欲しい。更に10時からの会議の間に空腹を感じないものが良い。このジョブにはバナナ、ドーナッツ、コーヒーを雇用することが考えられる」。 このジョブを片付ける候補者はすべて異なる製品カテゴリに属している。このような抽象レベルで表現すべきである。特に抽象度は高い方が良い。 非常にわかりやすく本も章ごとにまとめと投げかけを設定している構成されており、腑に落ちる部分が多数あった。 <ジョブの定義> ・ジョブとは、特定の状況で人あるいは人の集まりが追及する進歩である。 ・成功するイノベーションは顧客の成し遂げたい進歩を可能にし、困難を解消し、満たされていない念願を成就する。またそれまでは物足りない解決しかなかったジョブ、あるいは解決策が存在しなかったジョブを片付ける。 ・ジョブは機能面だけで捉えることはできない。社会的および感情的側面も重要であり、こちらの方が機能面より強く作用する場合もある。 ・ジョブは日々の生活の中で発生するので、その文脈を説明する「状況」が定義の中心に来る。イノベーションを生むのに不可欠な構成要素は、顧客の特性でもプロダクトの属性でも新しいテクノロジーでもトレンドでもなく、「状況」である。 ・片付けるべきジョブは、継続し反復するものである。独立したイベントであることはめったにない。 企業は果てしなくデータを蓄積しているものの、どういうアイデアが成功するかを高い精度で予測できるようには体系化されていない。むしろデータは、「この顧客はあの顧客と類似性が高い」「顧客の68%が商品BよりAを好む」といった形式で表現される。だが、こうしたデータは、顧客が「なぜ」ある選択をするのかについては何も教えてくれない。 第一部まとめ ・ジョブ理論はプロダクト/サービスを購入して使用する(雇用する)のは、顧客の生活に生じたジョブを満たすためであるとし、定義は「ある特定の状況で顧客が成し遂げたい進歩」である。 ・顧客のジョブを完全に理解するには、ある特定の状況で顧客が成し遂げ様としている進歩を、機能的、社会的、感情的側面も含めて理解し、さらに顧客が引き換えにしても良いと考えているものを理解しなければならない。 ・顧客の片付けるべきジョブを理解するば、顧客に雇用されるための本当の競争が浮かび上がる。これは競争相手より魅力的な解決策を生み出すうえで極めて重要な情報となる。 ・本当のジョブを理解していない企業は「一つですべてを満足させる」万能の解決策に惹かれがちで、結局誰も満足させることが出来ない。 ・ジョブに基づいて区切ったセグメントにフォーカスする必要がある。このセグメントには、現状では満足な解決策が存在しない「無消費者」も含まれ、彼らのジョブを不満足に片付けるよりは、何も雇用しない方を選ぶ。無消費に眠る好機は企業にとって巨大だ。 第二部まとめ ・ジョブの理解を深める方法はたくさんあり、その中には伝統的な市場調査の手法も含まれる。”ジョブ・ハンティング”の戦略を練ることも有益ではあるが、その際に最も重要なことは、どの技法を使うではなく、どういう質問をするのか、そして答えとして得られた情報をどうつなぎ合わせるかにある。 ・ほとんどの企業は、既存の顧客への理解を深めようと大掛かりな市場調査を行うが、ジョブについての重要な知見は、あなたのプロダクトも他社のプロダクトも買っていない無消費者を調査することで得られることも多い。 ・ほとんどの企業は、顧客のジョブの機能面ばかりに重点を置いているが、感情的および社会的側面の発見にも同等の注意を向けるべきだ。3つの側面全てに対処することが、ジョブを踏まえた解決策には不可欠 ・顧客の行動について集めたデータは客観的に見えても実は偏っていることが多い。データは特にビック・ハイアだけを重視し、リトル・ハイアが顧客のジョブをプロダクトが解決したことを意味する場合もあるが、本当に解決したかどうかはリトル・ハイアが一貫して繰り返されることによってしか確認できない。 ・顧客が新しいプロダクトを雇用する前に、それと引き換えに何を解雇する必要があるかを理解すること。何かを雇用した裏で何を解雇されたのかを十分考察する必要がある。 ・顧客の状況や、悪戦苦闘の時間、不完全な体験、それらに伴うストレスを詳細に記述した一種のストーリーボードを描くことによって、ジョブの理解を深めることが出来る。 ・ストーリーボードでは、新しい解決策を推進する力を把握しておくことが重要である。この力には満足していないジョブを押す力と新しい解決策を引き付ける力の二つがある。 ・変化に対抗する力が強くても、それを緩和するような体験を用意することが出来る。新しいものへの移行に不安があるのなら、それを最小化する体験を付随させればいい。 ・ジョブのディティールはジョブスペックとして把握する。これには顧客が求める進歩を機能的、感情的、社会的側面から記述したものや、受け入れられるトレードオフ、打ち負かすべき競争相手や、克服すべき顧客の障害物などが含まれる。ジョブスペックはジョブの深い奥行きと複雑さを実行可能なイノベーションの指針に変換する際の青写真となる。 第三部まとめ ・顧客のジョブへのフォーカスをそらす最も影響が大きいのは、マネージャーがデータの3つの誤謬に陥りやすいことだ。 能動的データと受動的データの誤謬ー規模を拡大中の企業は、ジョブの奥深い複雑さを特徴づけるデータ(受動的データ)を重要視しつづける代わりに、業務に関係したデータ(能動的データ)を生成し始め、その見かけ上の客観性と精緻さに誘惑されやすい。これにより、企業は片付けるべきジョブより、プロダクトや顧客特性を中心にした組織に変貌してしまう。 見かけ上の成長の誤謬ー企業が大きな投資を行う時、顧客に売るプロダクトの数を増やしたり、解決するジョブの種類を広げたりして、成長を勢いづけようとしがちだ。これを「見かけ上の成長」と呼び、これは中核のジョブを丁寧に解決していく状態とは正反対に位置する。 各章データの誤謬ー既存ビジネスモデルにあうようなデータをマネージャーが生成しようとする。

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