さんの書評2019/02/03

世界を変えた14の密約

世界を変えた14の密約

全ては目的があったわけではなく、あくまで目標が結果的に求めていた世界に当てはまり、世界がそのように偏移していっただけではある。
しかし、その目標がなぜ立てられたのか?インタビューを中心にその物語をほどいていく。全14章
但し、この物語は現在進行のものも含まれるが惜しいかな、全ては欧米中心で話は進んでいく。意図的かどうかは不明だが
そのため少々、ものの捉え方にある種の思想が滲み出ている。
ノヴァル・ハラル氏の「サピエンス全史」を読んだ後ではその視座の違いが如実に感じられたのが、残念である。
一方、その幅広い情報網や直接のインタビューによる核心に迫る内容は重みを感じる。

#risk 第2章 小麦の空売りとアラブの春
2010年アラブの春はtwitter革命、facebook革命を言われているが、物事のスタートは主食のパンに使用される小麦が世界的に高騰し、入手できないことで革命が起こされただけで決して、情報革命がもたらしたものではない。
一方、その小麦の高騰の原因は空売りは穀物メジャーと言われるABCD(ADM、バンジ、カーギル、ドレフィス)が世界の小麦の9割支配している。
それは15種の作物が全世界で摂取される食物エネルギーの90%を支え、うち米・トウモロコシ・小麦だけで世界人口の3分の2に当たる40億人の主食を占めることを考えるとこれは大きな問題となる。
つまり、ABCDが地球の人口を食べさせ、食料の価格を決めている。
アフリカのサブサハラ(サハラ砂漠より南の地域)は、地球上でもっとも食料不足が深刻な地域で人口に対して必要な食糧と、食料輸入量との乖離が、どの地域よりも大きい。
食料の5割が輸入で賄わられ、35%が小麦である。
しかし、2005年ABCDは危機に瀕した。小麦の収穫が予想できず2005年の利益が下がった。
そこで、ABCDは国際市場で穀物の供給不足に賭けた。
供給過多となった場合でも、価格を不当に高くしいずれにしても設けられる体制にした。
つまり、世界中で小麦の空売りを行った。
ナイル川からチグリス・ユーフラテス川流域は肥沃な三日月地帯と言われ、ひよこ豆、小麦、
オリーブなどの発祥の土地であるが、ここは世界最貧地域である。
1980年代にIMFと世界銀行は地域の穀物生産に投資するより、農耕を減らして欧米への果物の輸出を奨励する政策を打ち出し、この地域は小麦を輸入し始めた。
2006年から2007年にかけては豊作で、理論的には価格が下がるはずだったのに、ABCDは逆のことをした。
そのため小麦の価格は高騰し、アラブ諸国は食料価格を抑制し、補助金を増やす政策を打ち出したが、輸入業者や製造業者の儲けが大きく増え、民衆への還元は少なかった。
それに対してオバマ大統領はABCDのふるまいを「非人道的」だと名指し、その影響力を弱める法案を通そうとしたが失敗に終わった。
そのため、イスラム国が食料不足から民衆を開放した結果となった。
その原因を作ったのは『空売り』であり、それは将来価値を証券化することが大きな焦点である。
それはすべての価値(リスクを含む)を賭けの対象にしたために起こった。

#drugs 第6章 国民全員を薬漬けにする
保険会社が保険を売るために、医学的な根拠に欠ける数値を基に新しい基準を作ったことにより、薬が売れるようになった。
これはその嘘を暴く側であった大学などの研究室に補助金を注ぎ込むことを可能にした結果、起こった事例である。もともとは禁止されていたことであったが、国は不景気を理由に補助金の削減を決めた。
そのため製薬会社と研究施設の思惑が一致し、その問題が解消されたのだ。
これらは現在でも日常的に見られる。
ビタミン不足を訴え、睡眠不足を訴える。情動不安であればADHD。コレステロールが高ければ高脂血症薬に高血圧には高血圧薬
全ては病人のためではなく、未病の状態。つまり、予備軍に入れさえすれば需要は伸び、利益も増える。
最近であれば男性の更年期障害である。
全てに病名を当てはめることにより、その症状を定義づけでき対象方法が考えられる。

#now 第14章 21世紀のインフラストラクチャー
企業や個人や都市がやがて来るテクノロジー革命を生き延びるために必要なのは一つのことだ。
順応性
順応を妨げるのはモノだけではない。考え方もだ。
敵はロボットでもテクノロジー企業でも移民でも中国でもなく、自己満足と、安定しているので変わる必要がないという考え方か、若しくはどう変わっていいかわからないので変われないという感覚だ。

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