夏休みにコミックと併せ読みたい原作小説

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阿房列車―内田百けん集成〈1〉 ちくま文庫

内田 百けん

大正から昭和の文豪・内田百間(正しくは門構えに月)が、たいした目的もなく列車に乗って西へ東へ。老作家に嫌々つきあわされてる感じの出版社の若者がまたよし。

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センセイの鞄 (新潮文庫)

川上 弘美

川上弘美を一躍スターダムに押し上げた名作。主人公のひとり「センセイ」はどこか百間に通じる。読んで感動したら前田塁『小説の設計図』で裏読みを(←宣伝)。

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人間失格 (集英社文庫)

太宰 治

小畑健が表紙を書くとなんかカッコイイけど、ホントはぜんぜんダメ人間の話です。やれやれだぜ。

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阿房列車 1号 (IKKI COMIX)

内田 百けん

で、名作『わさび』の一條裕子がコミック化するとこんな感じに。原作本文からの引用やセリフの編集の妙を味わうもまたよし。

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センセイの鞄 1 (アクションコミックス)

川上 弘美

『坊っちゃんの時代』の谷口ジローがコミックにすると、原作の妖艶さが漂白されてまるで違う作品みたいですがそれも善き哉。

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人間失格 1 (BUNCH COMICS)

古屋 兎丸

絵師・古屋兎丸は現代にもってきちゃいました。なんかダメダメ感がいっそう増しているのはなぜだろう。太宰治本人の青春時代を描いた、楠木あると『ンダスゲマイネ。太宰治蒼春篇』もゆるゆるとよいです。

小説とコミックどっちが好きかときどき悩むひとにオススメ

何年か前に、子嚢急くの冒頭をコミック化してそのまま小説本編につなげる、みたいな企画をたてていたことがあって、あれこれの理由で二社で流れつつもまだやりたいなあと思っているのですが(どこかやりたい会社ないです?笑)、そうこうするうち、小説全体がコミック化されたり翻案される姿を目にする機会が多くなってきました(似たこと考える小説好きは、そりゃあいるよなあ、としみじみ)。

でも、コミックでぜんぶ読んで終わり、じゃもちろんちょっと寂しいので、原作と併せ読むとおもしろいコミックを選んで、その原作をまずは並べてみました(下段がそのコミック版です)。小説とコミック、物語の構造はもちろん同じなのですが、小説では文字で描写されいる細部がコミックでは絵になるので、いろいろな発見があります。たとえば『阿房列車』は、原作の小説(正確には随筆と言うべきかもですが)だといささか気難しげだけれどおもしろい語り手(百間)が、コミック版では一気にコミカルなじいさんになりますし、背景に汽車が細かく描かれることで「鉄マンガ」風味が強くなる。逆に『センセイの鞄』では、川上弘美の小説ならではのほのかなエロティシズムが谷口ジローのあの絵で一気になくなって(その意味では、おもしろさを削ってしまってもいるのですが、そのぶん違う魅力が足されています)、そのひといきぶりがおもしろい。

小説とコミックは、ぜんぜん違うメディアです。そのことが、こうしてならべてみるとよくわかる。以前、知り合いの図書館の司書教員さんが、「ラノベを置かないと図書館に子供がこない」と苦笑してましたが、たとえば森見登見彦の『新釈 走れメロス 他四篇』(これ、タイトルも昭和の文庫のパロディですよね)と太宰を抱き合わせで貸し出したりすれば(いま借りるとこっちもついてくる!みたいに)、読み比べの快楽に気づいてもらえる、かもしれませんね。

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閲覧回数:3570回、公開:2010/07/04

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書いた人 : makoto_icさん

授業をしたり、雑誌をつくったり、文章書いたり、あれこれ小説の紹介したり、パチンコ打ったり野球を観たり(後ろふたつの生活に占める割合が、精神的健康のバロメーター。今年はひどくよろしくなく)。
「日々是博奕」がポリシーで、「器用貧乏暇なし」が実情です。やれやれ。

Twitter : makoto_ic - 作者につぶやく

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