目次
1 桐壺巻―物語のはじまり
ダイジェスト1 帚木三帖
2 若紫巻―紫の上と藤壺
ダイジェスト2 末摘花巻
3 紅葉賀・花宴巻―光源氏 青春の恋
4 葵・賢木巻―波乱の予感
ダイジェスト3 花散里巻
5 須磨・明石―流離と復活
ダイジェスト4 澪標・蓬生・関屋巻
6 絵合・松風巻―新たな宮廷秩序
7 薄雲・朝顔巻―藤壺退場
8 少女巻―物語の転換点
ダイジェスト5 玉鬘十帖
9 梅枝・藤裏葉巻―栄華の完成
10 若菜巻―老年の光源氏
11 柏木・横笛巻―不義の連鎖
ダイジェスト6 鈴虫・夕霧巻
12 御法・幻巻―紫の上と光源氏の退場
[コラム]たのしい『源氏絵』の世界
主要人物紹介/あとがき/執筆者紹介
前書きなど
光源氏の超人的な資質やその多彩な女性関係にしても、近代小説のリアリズムの物差しを当てて不自然だとか不道徳だとか非難するのは、見当違いというものではないでしょうか。光源氏とのふれあいを通してこそ、さまざまな男女の心と人の世のありさまが、四季折々の情趣とともに、物語的〈ロマネスク〉に織りなされてゆくのですから。本書は、『源氏物語』から選り抜きの名場面や重要な一節を取り上げて鑑賞しながら、物語の大きな流れと、より深く読み味わうための留意点や必要な知識などをわかりやすく解説しています。また『源氏物語』には漢詩文の引用も多く、それが物語世界の奥行を深めていますので、とくに司馬遷〈しばせん〉の『史記』と、「長恨歌」をはじめとする白居易〈はくきょい〉の詩の引用については、やや詳しく解説しています。複雑な物語世界を見通しやすくするために、物語の本流の解説に重点を置いて、支流の物語は(そこにも本流に関わる重要な問題や名場面がたくさんあるのですが)、「ダイジェスト」で概説するに留めました。また光源氏没後の物語、いわゆる続篇も割愛しました。しかしそうした割愛と引き換えに、本書はこの分量としては望みうる最良の、充実した入門書となっていると自負しています。(「監修者のことば」より)