目次
日本語版へのまえがき 7
マルクス・ガブリエル
緒論 ポスト・カント的観念論への回帰を求めて 13
マルクス・ガブリエル スラヴォイ・ジジェク
第一章 反省という神話的存在 35
―ヘーゲル、シェリング、必然性の偶然性について
マルクス・ガブリエル
1 仮象―ヘーゲルの反省論
2 神話という思考以前の存在
―反省の限界についてのシェリングの考察
3 必然性の偶然性
第二章 二つの自由をめぐる規律訓練 179
―ドイツ観念論における狂気と習慣
スラヴォイ・ジジェク
1 ヘーゲルの習慣
2 自己のオート―ポイエーシス〔自己―制作〕
3 何も指示しない表現
4 習慣、動物、人間
第三章 フィヒテの哄笑 233
スラヴォイ・ジジェク
1 フィヒテの自我からヘーゲルの主体へ
2 絶対者と現象
3 フィヒテ的な賭け
4 障害(Anstoß)と事―行(Tat-Handlung)
5 分割と限定
6 有限な絶対者
7 定立された前提
付録 「なぜ世界は存在しないのか」 315
マルクス・ガブリエル
訳者解説 329
あとがき 342
参考文献 353
索引 356
前書きなど
本書の第一の意義は、何よりも現在ドイツで注目を集めている気鋭の哲学者マルクス・ガブリエルの著書の最初の翻訳書籍であるということであろう。本書には、二十代(執筆当時)とは思えぬ驚くべき読書量に裏打ちされた、ガブリエルのきわめてオリジナルかつ明快なドイツ観念論の歴史の再構築が記録されているだけでなく、二○一三年に出版されドイツではベストセラーとなっている『なぜ世界は存在しないのか』(Warum es die Welt nicht gibt(Berlin: Ullstein, 2013))につながる重要な洞察を数多く見いだすことができる。さらに、メイヤスーに対する批判、ラディカル・デモクラシー、科学主義批判といった、いわゆる「ドイツ観念論」との関連で論じられることの少ない現代的な問題への示唆を含んだ、若さ溢れる野心的な論文であり、ガブリエルの思想が単なる「流行りもの」ではないということが、一読していただければ十分に理解していただけると思う。
ジジェクについては紹介するまでもないだろうが、現在影響力のある哲学者の中で唯一といってよいほど、ドイツ観念論についての深い見識を持ち、かつその現代的意義を語ることのできる哲学者である。本書では、ヘーゲルの人間学と後期フィヒテに取り組んでいるが、主体や自我の受動性に着目するその議論は、ガブリエルのドイツ観念論解釈と共鳴し合っている。
(あとがきより)