目次
目 次
第1 章対称性と群 1
1.1 平面における対称性 1
1.2 空間における対称性(正四面体の回転を例として) 5
1.3 群の公理と抽象的な群 10
1.4 部分群と群の生成系 18
1.5 より複雑な群の例 26
1.6 準同型と同型 34
1.7 群の直積 39
1.8 ラグランジュの定理と同値類 43
1.9 発展 51
第2 章整数と多項式 64
2.1 整数 64
2.2 多項式 85
2.3 環 106
2.4 発展:単因子論(整数版) とアーベル群の構造 112
2.5 発展:単因子論(多項式版) とジョルダン標準形 119
第3 章定木とコンパスによる方程式の解法と体 132
3.1 体について 132
3.2 複素数を有理数から眺める 136
3.3 ベクトル空間の次元と拡大次数 142
3.4 体の歴史的問題 149
3.5 歴史的問題の不可能性 154
3.6 円分体 158
3.7 少し抽象的に 163
3.8 代数学の基本定理の証明 167
3.9 発展 170
第4 章整数論の楽しい話題 176
4.1 ピタゴラス数とn =4 の場合のフェルマの最終定理 177
4.2 偶数の完全数 180
4.3 素数は無限個存在する.ではどのくらい? 182
4.4 自然数のベキ乗の有限和とベルヌイ数 187
4.5 自然数の偶数ベキ乗の逆数の無限和 191
4.6 オイラーの関数とメビウスの反転公式 194
4.7 RSA 暗号 197
問題の略解203
参考書220
人物(数学者) 一覧222
前書きなど
まえがき
本書は大学2・3 年次の代数学の入門書として書いたものである.大学1・2
年次の線形代数学に引き続いて代数学を学びたい方を念頭においているが,で
きるだけ少ない予備知識で代数の魅力を味わいたいと考えている読者のために
読み物としても十分おもしろいように配慮している.予備知識としては,木村・
竹内・宮本・森田『明解線形代数(日本評論社) を参考にして欲しいが,他の類
似の本でも良い.
本書は群,環,体等の抽象概念を天下り的に定義してからはじめるのでなく,
逆にいろいろの興味深い例からはじめてそれらを系統的に扱う必要性を読者に
十分認識してもらってからこれらの代数系を導入するという,ブルバキとは対
極的な行き方を取っている.
第1 章は群論の入門である.雪の結晶や正四面体の対称性から出発して群の
公理に進む.章の最後では3 枚の黄金長方形を組み合わせて正二十面体を作る
方法,正多面体の回転対称群を具体的に知る方法などをわかりやすく述べる.
第2 章では整数と多項式の類似性を論ずる.整数と多項式(または整式) の
見かけは非常に違うが,その全体(つまり集合) を考えると,素因数分解,最大
公約数,最小公倍数などについて共通の性質を持っている.これらから整数と
多項式の単因子論が導かれ,線形代数で学んだジョルダン標準形に対する新し
い見方ができる.この章は(可換) 環論の入門と考えてよい.
第3 章では定木とコンパスによる作図と関連付けながら体の理論をやさしく
述べる.いわゆるガロア理論は扱わない.角の三等分は一般に定木とコンパス
では作図できないが,T 字型の簡単な道具を使えば可能なことを述べる.
第4 章は整数論の楽しい話題である.整数論は非常に長い歴史を持ち,数学
の女王と呼ばれている.歴史が長いだけあって整数論の結果には驚くほど美し
い,または不思議なものが数多くある.また今でも未解決の難問も多い.この
章ではその中から比較的意味の分かりやすいトピックを選んで楽しい読み物と
した.証明のやさしいものには証明をつけている.
前著,『明解線形代数』のときと同様,本書の作成にあたっても多くの同僚教
員の意見,種々の文献を参考にした.また授業で使ってみて学生の意見も参考
にした.ここに感謝したい.前著と同様全国の大学で教員・学生の諸氏に幅広
く読まれることを期待します.
2009 年夏
木村達雄,竹内光弘,宮本雅彦,森田純