紹介
2012年春に開業する新たなシンボル、東京スカイツリー。
2年半の歳月をかけてスカイツリーの成長を記録するとともに、
ツリーを媒介にして、新旧のものが混じり合った周辺の有機的な街並み、そして人々の営みを絶妙な距離感と光彩で写し出す。
「非常階段東京」(日本写真協会新人賞受賞作)で、大都市の幻惑的な魅力を見事に表出させた佐藤信太郎が撮り下ろす渾身の作品集。
ここに収められた写真では、一つの風景が複数のショットによって捉えられ、再び一枚につなぎ合わせられることで、
すべての細部に焦点があった映像を眼前に表す。
風景の細部を捉えたひとつひとつの写真たちは、縫い合わされ、
一枚のパンフォーカス画面となってわたしたちの前に現れる。
思いがけない場所に現れた塔、そしてそこからうかがい知ることのできない微細な街の表情を見れば、
写真家がいかに丹念に歩く人かがわかる。
そこでは街が、鳥瞰に対する警句のように光っている。
—細馬宏通