目次
ゆきちゃん Yuki
稲荷のキツネ Fox into the Inari Shrine
オシッコがしたくなる The Uege to Pee
オレンジ色の火 oange flames
ねとぼける Half-asleep
不思議な話 A Mysterious Story
逆立った髪の毛 Hair Standing on End
うわさ Rumors
小一郎 Koichiro
ふえたキツネ More Foxes
いも団子 Potato Dumplings
ヨトウ虫 Cutworms
いたずら Tricks
消えたキツネ火 No More Fox Fires
化けの皮 Truth Revealed
ほんのり、しあわせ Small Happiness
ピカドン Pikadon
丸子山の稲荷神社 Inari Shrine on Marukoyama Hill
永遠の鳴き声 Eternal Voice
あとがき Afterword
前書きなど
第二次世界大戦の終わりごろでした。
灯火管制がしかれて、家の明かりは一点も外へ漏らさないようにして暮らしていました。
甘いものはなく、甘い野菜を作って食べるのがささやかな贅沢でした。
干し柿・さつまいも・たまねぎ・豆類。
戦争のために殺虫剤がなくて、あらゆる虫は手で取っていました。
夜盗虫は夜中に活動します。
早いものは四月に孵化して夜盗蛾になります。
夜中の害虫駆除は、母もわたしも二人の妹にもつらい仕事でした。
幸いにも、川向こうの人たちがキツネ火の踊りを楽しんでいると知ったので、仕事が楽しくなりました。
戦争中はこれと言った娯楽の無い時代です。
まさか小一郎ぎつねが川向こうの人たちを楽しませているなど、夢にも思いませんでした。
でもあの時代の自然は美しく、のどかでした。
山は青く川は清く空気はおいしく
小一郎ぎつねは、こんな時代の話です。
(あとがきから)