目次
はしがき
第一章 「領土の罠」をどう乗り越えるか
はじめに……岩下明裕
国境・境界問題を考える学問と組織 /「領土ナショナリズム」、「領土の病」
政治地理学から見た領土論の罠……山﨑孝史
国家の政治地理学から地政学へ /政治地理学、地政学の衰退から批判的再構築へ /領土・領域と「領域性」 /領土と主権 /合理主義の表れとしての領域性 /領域がもつイデオロギー上の問題点 /世界地図に現れる「領土の罠」 /「領土の罠」の三つの要素 /絶対主権と実効主権 /沖縄=日本最大の領土問題 /グローバリスト・アメリカの主権行使と沖縄 /領土問題をいかに脱構築するか
竹島問題で海域が見えないことの罠……福原裕二
日韓における竹島/独島への関心 /李承晩ラインとは /国交正常化交渉における竹島問題 /現地の漁業者の思い /「生の枠組み」と「第三の視角」 /竹島をめぐる漁業調査 /排他的経済水域設定のインパクト /竹島の価値と関連事業費 /日韓暫定水域と漁業の実態 /「面」や「立体」で捉える
日本の国境地域の現実……本間浩昭
「見えない壁」 /国境の陥穽 /狙われる周縁部 /いま、北方領土で何が /国境の「波動」 /バックキャストという手法 /境界=豊かな生態系 /隣のパラレルワールドとどうつきあうか /「世界平和公園」構想 /世界各地の経験に学ぶ
思想から見た罠……土佐弘之
領域的権力と脱領域的ネットワーク /ジオボディの形成 /均等的な空間観と植民地主義的分割 /ジオボディを乗り越える思想
第二章 「領土問題」――ジャーナリズムの責任を問う
領土を論ずるスリルと怖さ……若宮啓文
安倍政権の成立と竹島/独島問題 /領土問題をめぐる空気の変化 /冷戦からポスト冷戦へ /プーチンと会う /「引き分け」と「始め」 /竹島問題に一石を投じる /ジャーナリズムの役目とは
座談会 領土問題と向き合う……若宮啓文・本田良一・本間浩昭 (司会 岩下明裕)
北方領土に関するスクープ /メディアにおける中央と地方 /メディアの違いとリスクを嫌う風潮 /忘れられる過去 /「邪道」の魅力と「炎上」覚悟 /フロアからのコメント /北方領土問題の解決策 /日本外交の問題点 /尖閣の国有化
第三章 歴史を時代に即して理解する……和田春樹 (聞き手 岩下明裕)
安倍・プーチン首脳会談 /イルクーツク会談再評価の危うさ /コーズィレフ秘密提案の当事者の証言 /ペレストロイカ期ソ連のシミュレーション /日ソ平和条約交渉と訓令一六号 /千島(クリル)列島をめぐる認識のずれ /色丹認識の変遷 /アイヌ問題を考える /共同経営の方法と主権 /今後の日露関係 /明治期日本の国境画定作業と竹島 /植民地からの分離独立という文脈 /地域住民の立場 /尖閣=沖縄と台湾の問題 /連関する沖縄、奄美と千島 /戦後日本の国境意識と日米安保
第四章 「領土ナショナリズム」と闘う……岡田 充 (聞き手 岩下明裕)
「生活圏」のリアリティ /日台漁業取決めと馬英九「東シナ海平和イニシアチブ」 /日中台の三角形 /「核心的利益」の多義性 /漁民動員の可能性 /報道の変容と「領土ナショナリズム」 /ナショナリズムと被害者意識 /国境離島の苦悩と模索 /尖閣問題の今後
第五章 「売国奴」からのメッセージ……天児 慧 (聞き手 岩下明裕)
大国主義化する中国に物申す /大国主義の来歴を問う /マッチョな中国の内部矛盾 /反中国包囲網は可能か /現場主義で島を見る /「核心的利益」という言葉 /大国主義批判の作法 /「屈辱の近代史」認識 /経済成長と矛盾の増幅 /中国にとっての対外イメージ /日中関係の今後
あとがき
執筆者紹介