前書きなど
はじめに
ブレーキの壊れた大型トラックの暴走ほど恐いものはない。いま、「安倍自公政権」と大書された大型トラックが大暴走している。
安倍晋三の運転するそれの助手席にすわっているのは公明党代表の山口那津男である。
先ごろ問題になった「マスコミを懲らしめる」などの自民党代議士の発言も、公明党がまったくブレーキをかけないから、彼らが天下を取ったような気になって、ホンネをさらけだした。
これについては、連立を組む公明党の責任も重大である。私は、公明党は自民党の共犯者だと思っている。
安保法制という名の戦争法案についても同じだろう。明らかに憲法違反のこれを公明党が自民党と一緒に強行しようとしているのだから、公明党は「平和の党」などと言わない方がいい。「戦争の党」と言うべきで、「平和の党」は世を欺く偽装表示である。
もし、「平和の党」と名乗りつづけたいなら、一刻も早く自民党と離れて野党になり、戦争法案を葬り去らなければならない。
改めて、現在から時をさかのぼって、公明党や創価学会批判の論稿をまとめてみて、この集団が、創価学会は平和を求めているけれども、公明党がそれを裏切ってしまったという二枚舌を使っていることに気がついた。
〝二枚舌集団〟というレッテルを進呈してもいいが、両者は一体なのであり、公明党は創価学会名誉会長、池田大作の私党なのだから、そんな言いわけは通用しない。
私は二〇一四年春に、『サンデー毎日』で十五年も続けてきた「政経外科」の連載を突然打ち切られた。新しく編集長になった潟永秀一郎の意向だった。池田大作批判がきっかけだったが、断じてそうではないと力説する潟永は、『創』のインタビューに答えて「池田大作名誉会長」と言っている。私が呼び捨てにしているのとは大違いで、彼は呼び捨てにできない敬意を池田に払っているのだろう。
前記の自民党の勉強会で講師の百田尚樹は、
「沖縄の二つの新聞社は絶対つぶさなあかん」
と露骨なアドバイスをした。参加していた安倍親衛隊の大西英男は、広告料を減らしてマスコミを締めあげろなどとも言ったらしいが、創価学会もまた、テレビや新聞のスポンサーとなって、陰に陽に圧力を発揮している。
ともかく、戦争法案を推し進めているのは自民党だけでなく公明党、そして、その背後の創価学会なのだということを強調しようと思って、この本を緊急出版することにした。
一体である両者からの冷静で理性的な反論を待ちたい。
二〇一五年七月三日 佐高信