前書きなど
あとがき
都立高校(上野・白鴎)に二十九年つとめたわたしには、今でもたくさんの卒業生との濃淡さまざまなつきあいがあります。もう古希だ、還暦だという年になっている人たちなら、こんな本でも多少は共感してくれるのではないかと、早い頃の卒業生のだれかれの顔を思い浮かべながら書きました。その世代の人たちが、近くのだれかに伝え、その人がまただれかに伝えてくれて、飯舘村の記憶が首都圏の人の間に残されていけば、わたしのささやかな仕事も多少は意味があろうというものです。もう少し若い五十代、四十代以下の世代の人たちにも期待するところはあります。飯舘村がどんな形になっているかを見届けられるのは、その人たちでしょうから。
村の人に読んでもらうつもりはないので、話を聞かせてくれた人のお名前を、あえて、本名で書かせてもらいました。ひょっとして、そのことで叱られるとしても、それはそれで止むを得ません。その人の顔を思い浮かべ、その声を耳に甦らせ、その時の記憶のままに書かなければ、文章がどうしても流れてくれなかったのですから。敬語を最小限にとどめたことも併せて、「それがわたしの流儀だから」と言ったら、やっぱりそっけなさすぎるか知らん。
菅野允子さん、いろいろお世話になりました。お蔭でたくさんの人とお話ができて本になりました。末永くおつきあいください。