目次
序 章
第1章 科学の正しいやり方とは?
――創造科学論争を通して
1 創造科学のしぶとさ
2 帰納と反証
3 創造科学と進化論の比較
第2章 科学は昔から科学だったのか?
――占星術と天文学
1 占星術と科学の微妙な関係
2 蓄積的進歩からパラダイム論へ
3 科学の変化と疑似科学
第3章 目に見えないものも存在するのか?
――超能力研究から
1 超心理学とは何か?
2 科学的実在論と反実在論
3 超能力なんかなくても超心理学はできるのか?
第4章 科学と疑似科学と社会
――代替医療を題材に
1 代替医療と機械論的世界観
2 科学社会学と相対主義
3 合理主義からの相対主義批判と社会への影響
第5章 「程度」の問題
――信じやすさの心理学から確率・統計的思考法へ
1 信じやすさの心理学
2 統計的に有意とは?
3 「程度」思考の有用性
終 章
参考文献・ウェブサイト表
あとがき
索 引
前書きなど
「科学」というものが現代の社会で重要な役割を果たしているというのは、多分誰も否定しないところだろう。最近目立つところではコンピュータやら遺伝子組み替え食物やら、科学と関係のありそうなものは身の回りにいくらでもある。科学というのはなんだかすごいらしい。しかし、正面きって「科学って何?」と聞かれたら、どう答えたらよいだろう? 「物理学」とか「生物学」とか、学科の名前を並べていくのも一つの方法だろうけど、それだけではそういういろいろな分野を共通して「科学」と呼ぶのは何故なのかが分からない。
この本は、一応科学哲学の本ということになっている。「科学って何?」という問いに哲学の観点から答えるわけだ。しかし、「哲学の観点から」とはどういうことだろう? 「哲学って何?」というのも「科学って何?」というのと同じかそれ以上にやっかいな問いだが、これをある程度はっきりさせておかないと、この本で何をやろうとしているかさっぱり分からないことになりかねない。そこで、わたしなりの説明を以下で試みる。ただし、哲学者というのは、哲学という領域の一番基本的な性格についてすらおよそ一致するということを知らない人種である。それは、あらゆることをとりあえず疑ってみる(場合によっては「あらゆることをとりあえず疑った方がよいかどうか」ということすら疑ってみる)という哲学者の習性からして当然のことなのだが、哲学というものを他の人に説明する上では非常に厄介である。したがって、以下の「哲学とは何か」についてのわたしの説明を読んで「こいつぁ哲学のことが何も分かっちゃいねえ」と叫んでこの本を壁に投げつけたり焚書にしたりする哲学者が少な……
[「序章」冒頭より]