目次
一年まえの冒険
序章*ある朝の事件
第1章†虹色のトンネル
旅立ち/時間と空間のはざまで
第2章†不思議の国の夜
それぞれの夜/不思議の国の手形の話
第3章†謎の銀行
大都会フナン・シティへ/真ん中銀行の出現/絵本を探して
第4章†真ん中団の野望
団長マナカ登場/ねらわれた研究所/コモンズの悲劇
第5章†ミライ望遠鏡
未来を見つめる/脱出! スットコホルム研究所
第6章†不思議の国のNEO
フナン・アワーズ/不思議の国のお金の世界
第7章†追跡と逃亡
さらわれたあっちゃんこ/さらなる追っ手
第8章†レジスタンスの結成
シモイーダの正体/誕生、レジスタンコ!
第9章†133ミリ秒の抵抗
RESISTANCE IS FUTILE(抵抗は無用)
RESISTANCO IS FERTILE(レジスタンコはどんどん生みだす)
真ん中団の崩壊
第10章†最後の対決
拳銃と鴨/再出発/共同体(コミュニティ)への帰還
終章†石油文明のあとに
さまがわりした空、さまがわりした海/過去に学ぶ/大空のリボン
本書に登場するキーワード解説
前書きなど
■坂本龍一さん
中心も銀行も政府もない「不思議の国」にぼくも行ってみたい。
「不思議の国」で行われていることを全て逆さまにすると、今のアメリカ、そしてぼくたちの世界になる。そこはお金が神である世界。
ロイスおばあさんが怒るのも無理はないよね。
地球の有限性を無視した不自然な経済によって支配されたこの世界。
人間の頭が作り出した自然の法則を無視した経済が、環境を破壊し、エネルギーと資源を奪い合う戦争に至る。
そこに持続性はない。
ヒトも自然の一部だという当たり前のことを、ぼくたちの脳は忘れているのだ。
人類はミライ望遠鏡が描き出したように、悲惨な絶滅へ向かうのか?
ところが、このお話の最後にはちゃんと希望の未来図が描かれているのだ。
そして、今ここに「不思議の国」を作ろうと思えばできるのだと、ぼくたちを勇気づけてくれるのだ。
■貴戸理恵さん
もしも、わたしたちの暮らしに「中心」がなかったら。そこでは「あげる」ことと「もらう」こと、「生みだす」ことと「使う」ことが、めぐりめぐっておなじところにあるのです。
そんな「中心」のない「不思議の国」の危機に立ち向かうのは、小さな女の子のあっちゃんこ、ロボットのケンチャ、子犬のパピーちゃん、あっちゃんこのお母さんという「中心」のない家族と、その仲間たちです。抵抗──「レジスタンコ」!──が、主義主張や銃によってではなく、音楽やダンスとともに地球をめぐる光のリレーによってなされるとは、なんと楽しくうつくしいイメージでしょう。そして、「価値を決めるのは、可能性と、物語」とは、なんとあたたかく胸おどる「お金」のあり方でしょう。
人と人とが切りはなされ、敵対するようしむけられる、不安な時代です。けれどもどうかわたしたちが、苦しみのあまり、安心の代償としての不自由を、求めてはしまいませんように。自由と安心とはあたりまえのように両立しうると、この物語は教えてくれるのです。
■森野榮一さん
社会が発展して、さぞみな豊かになったと思いきや、気候変動、温暖化。環境があぶない。
繰り返す不況で生活苦、問題は成長し続けないと持たない経済。事業資金を借りたら利子を付けて返す。そのぶんだけ経済が大きくならないと返せない。みな、お金の計算に四苦八苦。
ところが地球だけは、化石燃料を掘り出しても、廃棄物を捨てても代金や処理費用を請求しない。環境が犠牲にされる。
こういう仕組みは続かない。環境も人間も救われる未来はないの?
あっちゃんこと一緒に不思議の国を冒険してみよう。持続可能な未来があるよ。