目次
現代存在論講義 I 目次
序 文
本書の成立とスタイル
本書の主題
本書を世に問う理由─なぜ『現在論在論講義』なのか
著者の立場─暗黙の前提
第一講義 イントロダクション─存在論とは何か
1 何が存在するのか
1.1 「何が存在するのか」から「どのような種類のものが存在するのか」へ
1.2 性質と関係
1.3 物とプロセス
1.4 部分と集まり
1.5 種という普遍者
1.6 可能的対象および虚構的対象
2 存在論の諸区分
2.1 領域的存在論と形式的存在論
2.2 応用存在論と哲学的存在論
Box 1 表象的人工物としての存在論─存在論の可能な定義
2.3 形式的存在論と形式化された存在論
2.4 存在論の道具としての論理学
Box 2 同値、分析あるいは存在論的説明について
2.5 存在論とメタ存在論
まとめ
第二講義 方法論あるいはメタ存在論について
1 存在論的コミットメントとその周辺
1.1 世界についての語りと思考
1.2 存在論的コミットメントの基準
Box 3 すべてのものが存在する?!─存在の一義性について
1.3 パラフレーズ
Box 4 “No entity without identity”─クワイン的メタ存在論の否定的テーゼ
2 理論的美徳─「適切な存在論」の基準について
2.1 単純性
2.2 説明力
2.3 直観および他の諸理論との整合性
3 非クワイン的なメタ存在論
3.1 虚構主義
3.2 マイノング主義
3.3 新カルナップ主義
Box 5 カルナップと存在論
まとめ
第三講義 カテゴリーの体系─形式的因子と形式的関係
1 カテゴリーと形式的因子
1.1 カテゴリーの個別化─形式的因子
1.2 存在論的スクエア
2 形式的関係
2.1 4カテゴリー存在論における形式的関係
2.2 存在論的セクステットと形式的関係
Table 1 主要な形式的関係のまとめ
まとめ
第四講義 性質に関する実在論
1 ものが性質をもつということ
1.1 何が問われているのか
1.2 存在論的説明あるいは分析について
1.3 実在論による説明
2 実在論の擁護
2.1 分類の基礎
2.2 日常的な言語使用
2.3 自然法則と性質
3 ミニマルな実在論
3.1 述語と性質
3.2 否定的性質
3.3 選言的性質
3.4 連言的性質と構造的性質
3.5 付録:高階の普遍者について
Box 6 アームストロングへの疑問
まとめ
第五講義 唯名論への応答
1 クラス唯名論
1.1 クラスによる説明
1.2 例化されていない性質および共外延的性質の問題
1.3 クラスの同一性基準と性質
1.4 すべてのクラスは性質に対応するのか
2 類似性唯名論
2.1 類似性の哲学
2.2 類似性唯名論への反論
3 述語唯名論
3.1 正統派の唯名論
3.2 述語唯名論への反論
4 トロープ唯名論
4.1 実在論の代替理論としてのトロープ理論
4.2 トロープの主要な特性とそれにもとづく「構築」
4.3 トロープ唯名論のテーゼとそれへの反論
Box 7 トロープへのコミットメントを動機づける理由
4.4 実在論との共存
まとめ
結語にかえて─存在の問いはトリヴァルに解決されるのか?
読書案内
あとがき
索引
装幀─荒川伸生
前書きなど
現代存在論講義 I あとがき
本書を構想してから何とか出版にこぎつけるまで8年以上の歳月を要してしまった。われながら自分の怠惰さと要領の悪さに呆れる限りである。この間、公私ともに様々なことがあった。他の誰よりも、自らの大切な仕事を犠牲にしてまで私を支えてくれた妻の陽子に感謝したい。彼女がいなければ、本を書くどころか日常生活もおぼつかなかったことだろう。今年で4歳になる息子の正剛が日々成長していく姿にも大きく支えられた。本書の執筆のため、休日ですら一緒に過ごす時間を十分に確保できなかったことを申し訳なく思っている。また、人と比べてかなり長い学生生活を送った私をあらゆる意味で支援してくれた父と母にも感謝の言葉を述べたい。私は自分の息子に同じだけのことをしてあげられるだろうか。そのように自問させるほど両親は放埓な私に寛容であった。
本書の草稿を作成するにあたって様々な人に迷惑を掛けた。とりわけ『ワードマップ現代形而上学』(新曜社、2014年)の共著者である鈴木生郎さん、谷川卓さん、秋葉剛史さんの三氏は、私が学会等で上京するたびに、草稿の検討会に付き合ってくれた。彼らは年齢という面では「後輩」の研究者であるが、私などよりもはるかによく現代の諸議論に通じている。おそらく「先輩」の依頼をむげに断ることもできず草稿を読んでくれたと推測されるが、検討会の場では容赦ない意見を出してくれた。ときには「そんな細かな要求をされても」と途方に暮れもしたが、彼らのアドヴァイスに従って、加筆した箇所や、バッサリと削除した件も少なくない。同様に、小山虎さん、植村玄輝さん、富山豊さん、北村直彰さん、森功次さんにも草稿の電子ファイルを送りつけて、二日間にわたる検討会に参加していただいた。彼らは私が尊敬する中堅・若手研究者であり、すでにこの分野や隣接する分野で優れた業績をもつ。彼らの手厳しくも温かな助言は私を大いに勇気づけてくれた。この場を借りて感謝の言葉を申し上げたい。
本書はこの数年間に私が行ってきた講義や演習がベースになっている。根気強く授業に参加してくれた九州大学の学生諸君にお礼の言葉を述べたい。とくに大学院生の後藤真理子さんは、ほぼマンツーマンの演習の中で、草稿の分かりにくい箇所を数多く指摘してくれた。また前任校である九州国際大学の学生たちや、非常勤や集中講義等で教えてきた九州産業大学および山口大学の学生たちにも感謝したい。彼らの一部にとってはハタ迷惑な授業であったかもしれないが、大きな暴動も起こることなく授業を進めることができた。 序文で表明した「哲学には固有の問いと方法および説明方式がある」という私の信念は、五つの講義を通じて、確からしいものと映ったであろうか。この点については読者の判断に委ねるほかない。しかし私の信念に賛同する人はもちろんのこと、依然として懐疑的な人も、本書の続編である『現代存在論講義II』をぜひ手に取ってほしい。そこで論じられる主題(「物質的構成」、「同一性と変化」、「種の実在」、「可能世界」、「虚構的対象」など)は現代存在論の典型的なトピックスであるだけでなく、哲学へのこうした信念なしにはとうてい論じることができないトピックスでもあるからだ。
最後になったが、本書の出版に携わってくれた新曜社編集部の高橋直樹さんには、度重なる体裁の変更等で多大なご迷惑をお掛けした。彼の哲学に対する熱意がなければこの「講義録」は永遠に日の目を見なかったであろう。
2017年2月
著者