紹介
子ども虐待のニュースに、私も一歩誤っていたら……と身震いする思いのお母
さんも少なくないのではないでしょうか。親子関係は特別なつながりであり、
無条件の愛情で結ばれている、と信じられていますが、実際には、子育てはき
れいごとだけではすまない、子どもとの格闘の連続です。著者は15年以上にわ
たって母親にインタビューし、「子どもをイヤになる」瞬間を話してもらいま
した。そこから見えてきたのは、子どもとの楽しい幸せな面だけではなく、思
わずカッとなったり落ち込んだりする、ネガティブな面も含むアンビバレント
な子育ての姿です。親子も人間関係、楽しい時間だけでなく、軋轢、葛藤も経
験しながら豊かな関係が育っていく、というあたりまえに気がつけば、新しい
育児の視界が開けてくるのではないでしょうか。著者は青山学院女子短期大学
准教授。
目次
あたりまえの親子関係に気づくエピソード65─目次
目次
はじめに
1章 子どもはかわいくて当然? かわいくないのはおかしい?
1 親子関係とは
(1)「育テ上ゲネバナラヌ」という思い
(2)親になることとは
(3)養育者の能動性
2 親子は一体か
3 親子も人間関係
(1)個と個のせめぎあい
(2)個と社会のせめぎあい
4 親子のネガティブな部分は不適応の印?
(1)育児ノイローゼ
(2)育児ノイローゼが生まれた社会的背景
(3)社会問題としての育児不安
5 ネガティブな側面の積極的意味
2章 どのようにインタビューしたか
1 なぜインタビューなのか
2 語り手にとってのリアリティを
3 人びとの日常を記述すること
4 子どもへの不快感情を語ること
5 本書のインタビューの詳細
3章 母親が子どもをイヤになるのはどんなとき?
1 幼児をもつ母親へのインタビュー
(1)母親たちが子どもをイヤになるのはどんなときなのか
(2)インタビューにあたって
(3)インタビューの内容
2 インタビューから見えてきたこと
(1)子ども同士のやりとり
(2)母親と子どものやりとり
3 まとめ
(1)せめぎあう親子
(2)目の前の事態をどうとらえて切り抜けているのか
(3)イヤになることの意味
4章 初めて子どもをもつ場合
1 親になるということ
(1)親になることによる変化
(2)親になるプロセスとイヤになること
(3)インタビューについて
2 どんな行動をイヤになるのか
(1)不快感情をもたらす行動と生後2年間の変化
(2)子どもの発達に応じて変化すること
(3)具体的な行動
3 生後2年間の変化
(1)誕生~6ヶ月ごろ──〝わからない〟から〝わかる〟へ
(2)6ヶ月~12ヶ月──危険へ近づく子どもの身体への関心
(3)18ヶ月~──子どもの〝わたし〟との出会い
4 まとめ
5章 〝反抗期〟を乗り越える
1 〝反抗期〟と集団との出会い
2 インタビューから見えてきたこと
(1)どんな行動をイヤになるのか
(2)3歳までの変化
(3)3歳以後
3 まとめ
6章 わが子という他者
1 母親が子どもをイヤになるということ
(1)育てるからこそイヤになる
(2)〝最後の砦〟であること
(3)親子のズレを認識する機会
2 イヤになることから見る親としての適応プロセス
(1)生後5年間の変化
(2)他者と出会う──二つのターニングポイント
(3)資源の有限性
(4)グレーゾーンのかかわり
(5)イヤになることを明るく語れる関係
3 ふたたび親子関係とは
おわりに