紹介
忘れてはならない20 世紀の歴史の一端を映し出す人生の軌跡!
アンナ・ヤウクは、19 世紀末にヴォルガ地方のドイツ人移民
(ヴォルガ・ドイツ人と呼ばれる)の裕福な農家に生まれた女性である。
16 歳の時、不慮の事故で左足を切断するが、自立を求めて洋裁学校を開く。
だが、一家を戦争と革命、内戦の悲劇が襲い、困窮と飢餓に突き落とす。
アンナは家族と別れてドイツへの脱出を決意。不自由な足にもかかわらず、
徒歩で国境を越えるが、官憲に捕まりポーランドの収容所を転々とした後、
やっとドイツに入国する。
1930 年代に入るとドイツのアンナのもとには、ロシアの大飢饉による
親族からの飢餓の訴えが続く。そして悲劇は再び……。
本書が依拠したアンナの手記は、ロシアの厳しい環境のなかで豊かに育った、
教養あるひとりのドイツ人移民の女性がみた歴史の現実がある。
その視線は、ソ連にあって社会主義建設の過程で「追放せよ」として
弾圧された「クラーク」(富農)の視線でもあるが、貴重な証言でもある。
目次
●目 次
はじめに
一 ヴォルガ・ドイツ人とは
二 平穏な、豊かな生活、そして不慮の事故
――第一次世界大戦前
(1)アンナの家
(2)ヴォルガ・ドイツ人の生活
(3)不慮の事故
(4)アンナの夢
三 戦争、革命、内戦、そして飢餓のなかで
(1)戦場の兄弟たち
(2)ドイツ人捕虜との交流
(3)免れた強制移住
(4)社会主義革命、そして財産没収
(5)兄弟は戦場から帰還、そして赤軍へ
(6)内戦、そして徴発
(7)困窮、そして飢餓
四 ドイツへの脱出――不法に国境を越えて
(1)列車でサラトフからミンスクへ
(2)不法国境越えを決意
(3)森のなかを徒歩で国境越え
(4)ポーランドの収容所を転々として
(5)いよいよドイツ入国
五 ロシアに再び大飢饉、両親の死、飢餓からの訴え
――一九三〇年代初頭
(1)両親の死――妹アマリーからの手紙
(2)飢餓からの訴え
(3)兄弟姉妹家族の消息
おわりに――アンナのソヴィエト批判
あとがき