目次
はしがき 3
第1話 仮説実験授業の授業運営法 ……………………… 11
「授業書」を使う(11) 授業書を読むことから授業がはじまる(12) 予想の選択肢(13) 予想分布を黒板上に集計(14) 理由の発表(15) 討論(15) 実験−その前に予想変更(17) 次の問題に (17) 読み物の役割(18) カリキュラムは作らない(19) まず一つの授業書だけやってみること(20) 感想文を書いてもらう(21)
第2話 仮説実験授業の発想と理論 …………………… 23
仮説実験授業の原則的な考え方(23) 「授業」と「学習」(25) 「予想」と「仮説」(27) 授業の法則性の追求と「授業書」(29)みんなの共有財産としての「授業書」(30) 仮説実験授業の骨組み(31) 教育の民主性と「○×」 式(33) 問題の意図を明確に(34) 頭のよさは着想の豊かさ(37) まちがえ方の教育を(39) 成功・失敗の基準をきめておく(41) 近代科学の成立に学ぶ(44)
第3話 評 価 論 ………………………………………………………… 47
──なぜ,何を教育するかの原理論
1.誰が何を評価するのか ……………………………………………… 47
目標があれば評価もある(47) 教師の目標・子どもの目標−目的意識に合わせた自己評価(48)
2.相対評価の根源と効用 ……………………………………………… 51
相対評価の根源−ホンネとタテマエ(51) 強引な相対評価批判の誤り−点数のたし算のできる根拠(54) 選択があれば競争がおこる−合理的な相対評価もある(57) 「できる」と思われたいから「できる」−優等生的学習意欲(59)
3.教育内容の改変を …………………………………………………… 62
「みんながやらなければならないこと」は何か(62) 実用的価値と哲学的価値(64) 知らなくてもよいが知っていると楽しいこと(66)
4. 絶対評価の基本 …………………………………………………… 69
合格と不合格の2段階−目標がはっきりしていること(69) 自分のすばらしさがわかる評価−できないことがわかってから教える(72) 学びたいものを学ぶ−テストされたいことをテストする(73)
5. いろいろな場面での評価 ………………………………………… 76
評価は絶えず行われている(76) 感想文−おたがいに評価しあっている内容を知る(77) 孤立して孤立しない論理−自信をもって生きるために(79) 見えない心の動きを見る(80) 態度や探究心−大切だからこそ評価してはいけない(82)
第4話 仮説実験授業の理論の多様化 ……………… 85
──イメージ検証授業・仮説証明授業・新総合読本・もの作りの授業
松本キミ子さんの絵の授業と仮説実験授業(86) 仮説実験授業とは何であったのか(87) 〈キミ子方式〉の絵の授業の特長(89) 『たのしい授業』の創刊と仮説実験授業(92) イメージ検証授業と仮説実験授業(93) 仮説証明授業と仮説実験授業(96) もの作りの授業と仮説実験授業(99) 新総合読本の作成運動と『社会の発明発見物語』の重要性(100) 授業書の作成について(100)
第5話 どんな授業書があるか …………………………… 104
──授業書その他の教材一覧
授業書の作成は力学分野からはじまったが……(104) 統一カリキュラムは作らないのが原則(106) 検定教科書にヒントを求めるのも一便法(107) 授業書は途中をとばさないで用いること(108)完成度の高い授業書と教材の解説一覧(109)
A.小学校低学年でもできる授業書 ………………………………… 110
足はなんぼん? 背骨のある動物たち にている親子・にてない親子 空気と水 ドライアイスであそぼう かげとひかり ふしぎな石−じしゃく,その他 タネと発芽 おもりのはたらき,その他
B.自然界の多様性をとりあげた基本的な授業書 ………………… 113
磁石 ふしぎな石じしゃく 電池と回路 自由電子が見えたなら ゼネコンで遊ぼう 光と虫めがね 宇宙への道 月と太陽と地球 花と実 30倍の世界
C.物性=原子分子の一般的な性質に関する授業書 ……………… 116
ものとその重さ 空気の重さ もしも原子が見えたなら 分子模型をつくろう 溶解 結晶 粒子と結晶 温度と沸とう 三態変化 水の表面
D.小学校でも教えられる力学関係の授業書 ……………………… 120
ばねと力 磁石と力 まさつ力と仕事量 滑車と仕事量 トルクと重心(てことりんじく・重心と物体のつりあい・天びんとさおばかり) 重さと力・浮力と密度 長い吹き矢,短い吹き矢 ふりこと振動 お茶の間仮説実験・ころりん サイエンスシアターシリーズ
E.中学高校程度の物理学関係の授業書 …………………………… 123
速さと時間と距離 力と運動 電流 電流と磁石 ものとその電気 程度のもんだい 磁気カードの秘密 電子レンジと電磁波 偏光板の世界 光のスペクトルと原子 磁石につくコインつかないコイン サイエンスシアターシリーズ
F.化学・生物・地学関係の授業書 …………………………………… 127
いろいろな気体 燃焼 錬金術入門 原子とその分類 熱はどこにたくわえられるか 生物と細胞 生物と種 地球 不思議な石,石灰石
G.社会の科学1 (日本の地理・歴史関係の授業書)……………… 129
日本の都道府県 ゆうびん番号 沖縄 日本歴史入門 歌って覚える歴史唱歌 日本歴史略年表 おかねと社会 鹿児島と明治維新 日本の戦争の歴史 えぞ地の和人とアイヌ 名産地・自給率・量率グラフの世界など 新総合読本の中の日本史関係の読み物教材
H.社会の科学2 (世界の地理・歴史関係の授業書)……………… 132
世界の国ぐに 世界の国旗 焼肉と唐辛子 はじめての世界史 世界が一つになってきた歴史 対数グラフの世界 コインと統計 オリンピックと平和 ハングルを読もう
I.社会の科学3 (社会の科学・道徳・公害の授業書)…………… 134
社会にも法則があるか 三権分立 生類憐みの令 禁酒法と民主主義 差別と迷信 洗剤を洗う たべものとウンコ たべもの飲みものなんの色 ゴミドン 日本国憲法 靖国神社 道徳の授業プラン 新総合読本の中の〈社会の科学〉読み物
J.算数・数学の授業書 ………………………………………………… 137
つるかめ算 量の分数 分数の乗法 分数の除法 かけざん 2倍3倍の世界 電卓であそぼう 広さと面積 勾配と角度 図形と角度 図形と証明 落下運動の世界
K.国語・外国語などの授業書 ………………………………………… 140
漢字と漢和辞典 漢字の素粒子と原子 道路標識 変体仮名とその覚え方 読点の世界 たのしい授業プラン国語1〜3 1時間でできる国語 ことばの授業 新総合読本のリスト よみかた授業書案 検定国語教科書に収録されたことのある読み物 英語のこそあど 英語と国語のこぼれ話 読者指導に関するもの
L.技術・体育・迷信・美術・その他の授業書 ……………………… 144
技術入門 物の投げ方の技術と技能 小久保式開脚とびの授業 コックリさんと遊ぼう 虹は七色か六色か キミ子方式の絵の授業 おやつだホイ! 煮干しの解剖 ベッコウあめ・折り染め・プラバン
仮説実験授業を受けた子どもたちへのメッセージ ……………… 147
たのしく学びつづけるために 予想・討論と実験と 心に残る思い出の授業
第6話 授業の進め方入門 藤森行人 …………………… 148
──初めて仮説実験授業をする人のために
子どもに「先生」と思ってもらえるとき …………………………… 148
仮説実験授業の授業運営法 …………………………………………… 152
授業の評価は子どもが決める ………………………………………… 161
仮説実験授業研究会会則・趣旨説明 ……………………………………… 170
研究会の最近の活動 …………………………………………………………… 174
あとがき 176
授業書および実験器具等の価格一覧 178
前書きなど
〔初版〕はしがき
この本は,はじめて「仮説実験授業をやってみようj という人でも困
らないように,仮説実験授業の授業運営法やその考え方や参考資料をま
とめたものです。すでに仮説実験授業を十分承知という人々にも,便利
なガイドブックとして役立つことと思います。
仮説実験授業というのは,ある意味ではとてもやりやすい授業です。
ですから, I この授業は子どもによろこばれ,学力も身につく」という
ことになると, I少しまねしてみょうか」という気にもなります。しか
し,そういう人は失敗することが少なくないようです。仮説実験授業の
基本的な考え方を知らないために,やさしいはずの授業運営の原則をふ
みはずすことがよくあるからです。概して,いわゆる教育熱心な先生や,
見かけだけでも教育熱心であると思われたい先生に,そういうことがよ
くあるようです。
そこで私たちは,これまで、ず、っと,仮説実験授業を安易にやる人がふ
えないように細心の配慮をこらしてきました。仮説実験授業を実施する
ときの中軸になる授業書も,仮説実験授業をかなりよく知っていると思
われる人々にだけおわけするようにしてきました。そして,その代わり,
全国各地で「仮説実験授業入門講座」というものを聞くなどして,この
授業に関心をもってくださる方々に,仮説実験授業の考え方や実施方法
についてくわしく親切にお伝えしようとしてきました。
この本は,そういう入門講座で行われた私の講演記録3 点に,仮説実
験授業を実施するときに役立つ便利な資料を加えたものです。仮説実験
授業をはじめるまえ,またはじめてからも,ときどき読み返してみて,
仮説実験授業を誤解なく実施してくださるようお願いします。
1977年10 月
板倉聖宣
〔第3 版追記〕
初版以来,たのしい授業に関する研究がさらに幅広く進められ,美術,
社会科学,その他の分野で特筆すべき成果をあげてきました。そこで
1980年版発行に際して「最近3 年間における研究運動の成果」を第4 話
として加えました。また, 1983 年3 月には月刊『たのしい授業』が創刊
されたこともあり,参考資料もふえましたので, 1984年版では第5 話に
増補改訂を加えました。(1984年)
第4 版の発行に際して
本書はこれまで, (はじめて仮説実験授業を実施する人〉にとっても
っとも手頃な入門書として役立つてきました。そこで,この本をもとに
して仮説実験授業を実施して成果をあげて下さった方々はすでに数万人
に上ることでしょう。
この本は仮説実験授業の初心者だけでなく,すでに長いあいだ仮説実
験授業を実施してきた人ぴとにとっても,便利な「授業書案内J として
活用していただいてきました。そこで,私はこれまで本書を3 回改訂し
て仮説実験授業の研究の新段階に即応させるように努めてきました。し
かし,最近は他の忙しい仕事にかまけて,本書の改訂をしないままでし
た。1984年7 月の第3 版の発行以後も新しい授業書がたくさん生み出さ
れてきているというのに,それらの授業書のことが本書に紹介されるこ
となく,時間が経過してきたのです。それは,その少し前の1983年3 月
に『たのしい授業J (仮説社)という便利な雑誌が創刊されたという事情
にもよります。『たのしい授業』を見れば,新しい授業書その他の情報
を得ることができるようになったからです。しかし,その『たのしい授
業J も創刊以来14年を経て,その全体を見渡すことは困難になっていま
す。そこで,本書の全面的な改訂に着手することにしました。
とは言っても,本書の骨格自身は変える必要がないように思えてなり
ません。仮説実験授業がはじめて提唱されたのは1963年夏のことで,そ
れ以後34年もたっているのですが,そのあいだに仮説実験授業の考え方
が大きく変わるということがなかったからです。それなら,そのあいだ
私たちはまるで進歩しなかったのでしょうか。いえ,そんなことはあり
ません。その間,私たちは授業書の種類を増やして,仮説実験授業の内
容を豊富にする仕事を着実に積み上げてきたのです。その結果,はじめ
は力学中心だ、った授業書の範囲が自然科学全体に広がりました。そして,
初期にはすべて小学校でも教えることができる教材を中心にしてきたの
に,最近でははじめから大人や大学・高校用を目当てにした授業書も作
成されるようになってきました。それだけではありません。十数年前に
は仮説実験授業の考え方とそっくりな美術の授業「キミ子方式」が現れ
たかと思うと,社会の科学や数学の授業書も作成されるようになりまし
た。
そこで,今回の改訂では, I 第5 話」を増補改訂するだけでは間に合
わなくなりました。そこでこれを, I第5 話どんな授業書があるか一
授業書その他の教材一覧」として,全面的に書き換えました。驚いたこと
に初版では40 余りだ、った授業書の数が,今回の改訂では100余りに増え
ていました。その結果,今では小学校の理科や社会科,生活科では教え
きれないほどの授業書が出来ています。数学や国語・英語,技術・体育
などの授業書の作成研究も始まっています。
それだけではありません。じつは,仮説実験授業の授業書作成の作業
を社会の科学や数学の授業に発展させるためには, I仮説実験授業」と
いう概念の拡張が必要であることが明らかになりました。そこで,私は
新たに「イメージ検証授業」と「仮説証明授業」という概念を作って,
広義の仮説実験授業の中に含めることにしました。また, (展望の広い
読み物教材〉を「新総合読本」としてまとめていく仕事をはじめました。
そしてさらに,仮説実験授業の目指す自然や社会の科学の教育とは別に,
個別的な技術・技能の教育の重要性を重視する仕事も進めてきました。
仮説実験授業の理論そのものは変わらなくても,その理論が豊富になっ
てきたのです。そこで,今度の改訂増補版では, I 第4 話最近3 年間
における研究運動の成果ーたのしい絵の授業や歴史の授業書など」を全
面的に書き改めて, I第4 話仮説実験授業の理論の多様化イメージ
検証授業・仮説証明授業・新総合読本・もの作りの授業」として, I イメー
ジ検証授業」ゃ「仮説証明授業」の考え方を紹介するとともに,絵の教
育理論である「キミ子方式」ゃ「新総合読本」や「もの作りの授業」と
仮説実験授業との関係についても論ずることにしました。第5 話には,
それらの理論に基づく授業書や教材,参考文献なども紹介してあります
ので,本書の内容は見違えるように豊富になったことと思います。
なお, I第6 話」として藤森行人さんの「授業の進め方入門一一初めて
仮説実験授業をする人のために」という講演記録を収録させていただき
ました。藤森さんは小学校の教師として長い間仮説実験授業を実施して
こられた方です。これと似たことは,すでに「第1 話,仮説実験授業の
授業運営法」にも書いてありますが, <授業運営法〉となれば,現場で
実際の授業をやっている人の文章の方が,はるかに具体的で、説得力があ
るように思えます。そこで,藤森さんにおねがいして収録させていただ
いた次第です。
これまでと同様,今後とも本書を活用して下さるよう,お願いします。
板倉聖宣(1997年3 月7 日)
〔第5版追記〕
2011年,第5版発行に際して,第4版が出て以後にできた授業書や単行本などを第5話に書き加えました。また,「研究会の最近の活動」もすこし改訂しました。