紹介
20年後の生活と産業の姿を問い、あるべき超成熟社会への道筋を探る。
序章では、経済格差が人々の経済と社会への信頼度を低下させ、経済成長を鈍化させてしまうことが指摘される。これを踏まえ、社会の合意の下で、新しい社会経済システムを構築する必要性が語られる。
第Ⅰ部では、イノベーションの特質が論じられた後、長期的な経済成長におけるイノベーションの重要性が確認される。その上で、イノベーションを促進するための知的財産権等の制度的枠組みについて検討される。
第Ⅱ部では、今後成長が期待されている主な産業分野の第一線で活躍されている企業人や研究者から、超成熟社会の発展に向けて進められている企業活動や研究開発について、その現状や課題が紹介される。
目次
はじめに 清家 篤
序 章 グローバル経済における格差、信頼と経済成長 駒村康平
一 グローバリゼーション・パラドクス
二 トマ・ピケティが明らかにした長期的な所得と富の集中化
三 格差、信頼と経済成長
四 まとめ―グローバル経済をコントロールするためには何が必要か
第Ⅰ部 経済社会とイノベーション
第一章 イノベーションと知識 齋藤 潤
はじめに
一 なぜイノベーションを取り上げるのか
二 イノベーションの定義
三 シュムペーターのイノベーション
四 「知識」の特質
おわりに
第二章 イノベーションのマクロ経済学 齋藤 潤
はじめに
一 ソロー=スワン・モデル
二 技術進歩を内生化したモデル
三 超長期の経済成長
四 技術進歩と人口動態の統合理論
おわりに
第三章 イノベーションのミクロ経済学 齋藤 潤
はじめに
一 研究開発の過少性
二 知的財産権の特徴
三 知的財産権擁護論に対する批判
四 知的財産権なきイノベーション
五 研究開発の代替的促進策
おわりに
第Ⅱ部 産業分野とイノベーション
第四章 超成熟社会日本を牽引する健康・医療産業の成長戦略
木村廣道
はじめに
一 健康・医療産業への期待と課題
二 医療分野のオープンイノベーション
三 異分野融合の進展
四 イノベーションを加速する社会基盤の変化
五 健康・医療産業での新産業創出
六 健康・医療産業を興す人材イノベーション
第五章 環境・リサイクル・エネルギー技術で世界に貢献を 大下 元
はじめに
一 技術の変遷
二 自然エネルギー分野
三 環境分野
四 リサイクル事業
五 海外での取り組み
むすび
第六章 市場の長期的な変化と自動車産業の取り組み 市川晃久
はじめに
一 一九九〇年代の日本の自動車市場の変化と自動車産業の状況
二 日産の収益悪化とリバイバルプラン
三 今後の市場ニーズと技術開発
四 人口の減少や高齢化に向けて
五 新興国への対応
第七章 3Dプリンティングによるモノづくりの実状 前田寿彦
はじめに
一 加熱する報道、期待感
二 3Dプリンタとは
三 3Dプリンティング業界の変遷
四 アディティブ・マニュファクチャリング装置の特徴
五 アディティブ・マニュファクチャリングのポテンシャル
六 アディティブ・マニュファクチャリングの課題
おわりに
第八章 金融業界の長期的な展望と課題 小野裕士
はじめに
一 日本の金融機関を取り巻く環境変化
二 ミニバブル期の日本の金融機関の行動
三 リーマン・ショック―欧米大手金融機関の陥った罠
四 銀行の顧客―個人・企業の資金フローの動向
五 日本の金融機関の展望
六 最近の外国銀行のリテール戦略
むすび
第九章 風力発電の導入促進に向けて 斉藤哲夫
――風力発電の現状と課題
はじめに
一 風力発電の導入意義と主な日本メーカー
二 世界と日本における風力発電の導入実績
三 風力発電のポテンシャルと中長期導入目標
四 風力発電導入促進に向けて―課題と対策
五 風力発電機の構成と構造
六 風車のできるまで
むすび
おわりに 齋藤 潤
編著者紹介