前書きなど
推薦 多和田葉子さん(作家)
「わたしはこれまで少なからず東ドイツなど社会主義圏を舞台にした物語を読んできた。アフリカ文学やアメリカ黒人文学を読んで近しさを感じることも少なからずあった。移民文学については、もう読み飽きたと思うことさえあった。ところがこのグラフィックノベルはこれまで知らなかった入り口から、私の中にすっと入ってきた。登場人物ひとりひとりにちゃんと体重があって、顔も身体も美化されていないのに目をひきつける。社会主義の歴史は個人的な記憶のディテールでできているんだなと思う。いつまでも同じページに留まりたくなるような愛おしい線の描く人間や事物。誇張のない、シンプルで驚きに満ちたアイデアが至るところに満ちていて、ページをめくるのが楽しかった。」