目次
序 章 猥褻と近代の起源、一五〇〇年から一八〇〇年へリン・ハント
第 部 初期の時代における政治的文化的意味
第1章 イタリア・ルネサンスにおける人文主義、政治、ポルノグラフィ ポーラ・フィンドレン
第2章 ポルノグラフィの政治学
——『娘たちの学校』 ジョウン・ドジャン
第3章 時に王錫は王錫でしかないこともある
——王政復古期イングランドのポルノグラフィと政治 レイチェル・ウェイル
第 部 哲学的形式的特質
第4章 ポルノグラフィの唯物論的世界 マーガレット・C・ジェイコブ
第5章 一八世紀フランスのポルノグラフィにおける真実と猥褻語 リュシエンヌ・フラピエ=マジュール
第 部 一八世紀の恵まれた条件
第6章 リベルタン売春婦
——マルゴからジュリエットにいたるフランスのポルノグラフィにおける売春キャスリン・ノーバーグ
第7章 啓蒙主義時代のイギリスにおけるエロティックな幻想と男性のリベルタン思想 ランドルフ・トランバック
第8章 一七世紀から一八世紀にかけてのオランダ共和国における政治とポルノグラフィ ヴェイナント・W・メインハルト
第9章 ポルノグラフィとフランス革命 リン・ハント
原 註
訳者あとがき
執筆者一覧
人名/著作名索引
前書きなど
文学的、視覚的実践としての、そしてまた
理解のためのカテゴリーとしてのポルノグラ
フィは、西欧近代の長期にわたる出現と同時
に——そしてそれに付随して——成立した。
実際ポルノグラフィは、西欧近代が出現する
さいの主要な契機のほとんど、つまり、ルネ
サンス、科学革命、啓蒙主義、フランス革命
と関連がある。ポルノグラフィの作家や版画
家は、西欧を形成する発達段階の暗部をなす
いかがわしい世界、すなわち異端者、自由思
想家、リベルタン(libertin[放蕩者])の世
界から登場した。このために、近代文化にお
けるポルノグラフィの位置づけや機能を理解
するためには歴史的な視点が不可欠となる。
ポルノグラフィは、既定の事実ではなく、そ
れぞれの時代にくりひろげられた、作家、画
家、版画家と、スパイ、警官、聖職者、役人
との間のさまざまな闘争によって規定された
ものであった。したがって、その政治的、文
化的意味は、ポルノグラフィが思想、表象、
規制のカテゴリーとして出現してきたことと
切り離すことはできない。