目次
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まえがき
Ⅰ 観るということ
初めの出会い-感情
考えるということ-思考
描くということ-意志
知るということ-認識
認識に至る道
Ⅱ 観察の実際-方法
全体を見る-印象〈出会い〉
事実を観る「体」
①形態と色、事実を記述する
②時間経過に従って記述する
③思い出しながら描く-表象
心を通わせる「魂」
草花の本質を観る「霊」
Ⅲ ゲーテの指針-生命の法則
成長と再生、衰微
らせん運動〈二重らせん〉
収縮と拡張
メタモルフォーゼ(変容)
「植物」-ゲーテの言葉
Ⅳ 植物と人間
人間の三層構造と植物の三要素との関係
①人間の頭部-神経感覚系-根
②胸の領域-循環器系(リズム機構)-葉
③手足と生殖器の領域-代謝四肢系-花
Ⅴ 四大元素と四つのエーテル
元素とエーテルを描く-白黒線描
①火-熱エーテル
②空気-光エーテル
③水-音エーテル、数エーテル、化学エーテル
④地-生命エーテル
Ⅵ 形が生まれる-フオルメン線描
Ⅶ 色彩が生まれる
Ⅷ 水彩画による連作
Ⅸ 協働について、その可能性-座談会
ゲーテの色環
シュタイナーの色環
協働作品
あとがき
前書きなど
“よく観れば、≪自然≫はその公然の秘密を明らかにする”
とゲーテは彼の『形態学論集、植物編』の中で語っています。
この謎めいた言葉は何を伝えようとしているのでしょう?
ゲーテの時代から200年以上経った現代の私たちは、物質的・科学的技術主義の発展する中で、自然との関係をどのように持てばよいのかを模索しています。“地球の衣”である植物界。植物はもっとも純粋な形で「生命の秘密」をその姿の中に明かしています。光と闇の織り成す緑の草原を歩けば、私たちは身も心もさわやかになり、緑の木々の間や森の中では、深い呼吸と共に、生き還ったように感じます。私たちが暮らすこの地球は、たくさんの植物で覆われています。自然は私たちの生活の傍にあって、当然のごとく、黙しています。そして私たちはその恩恵を、ほとんど無意識に受け取っているのです。
ゲーテの自然観に深く影響を受けたシュタイナーは“植物学は根源的な生命世界に目覚めることである”と言っています。植物の世界は調和的な世界です。太陽の熱と光、風や雨の恵みを受け、大地の力を受け取り、規則正しく自然界の法則に逆らうことなく身をゆだねています。したがって注意深く見れば、その姿の中に自然界の法則性を見て取ることが可能です。ですから植物界に関心を持ち、観察し、記述し、考えることは、生命の成り立ちに出会い、驚きと共に少しずつ生命世界に分け入る体験となります。そしてそうした行為を通して、私たちと世界との関係性がより具体的に現実性を帯びて、確かなものとなり、「この世界があって、ここに私がいる」という実感がわいてきます。またそれは宇宙や自然界の姿には自分自身も責任の一端を担っているという、私たちの自覚を促すことでもあります。