目次
はじめに
第1部 イントロダクション
1.多文化共生のためのシティズンシップ教育とは
2.この教材を利用する教師に求めたいこと
3.パフォーマンス評価とルーブリック
○多文化共生のためのシティズンシップ教育 ルーブリック
4.この教材の使い方
授業で用いる資料・ワークシート・パワーポイントのダウンロード方法
第2部 共通レクチャー:人の移動と文化・社会の多様性
1)「日本人」って誰?
2)グローバル化時代の日本と多様性
3)日本の移民・難民受け入れのこれまでとこれから
4)おわりに
〔コラム①〕どうやって国籍は決まるのか
〔コラム②〕難民の定義と受け入れ
第3部 テーマ別アクティブ・ラーニング
1.多文化共生を考える7つのテーマ―多様性を前提とした社会的包摂とは?「私たち」とは?
①ホームルームで考えよう:異文化尊重と公平
〔コラム③〕自文化中心主義とは何か
〔コラム④〕文化相対主義とは何か
②学校で考えよう:合理的配慮と平等
〔コラム⑤〕日本の教育行政はどう応じているか
〔コラム⑥〕子どもの支援事例~とよなか国際交流協会~
③部屋探しで考えよう:ステレオタイプと偏見
〔コラム⑦〕神戸定住外国人支援センター(KFC)
〔コラム⑧〕来日外国人による犯罪は増えているのか
〔コラム⑨〕メディア・リテラシーの必要性と現代的課題
④職場で考えよう:人権と経済効率
〔コラム⑩〕すべての外国人とその家族の人権を守る関西ネットワークRINK
〔コラム⑪〕技能実習生の受け入れで先進的な企業
〔コラム⑫〕来日外国人はどのように働いているのか
〔コラム⑬〕多文化市民メディアDiVE.tv
⑤病院で考えよう:社会権とコスト
〔コラム⑭〕多言語センターFACIL
⑥避難所で考えよう:合意形成と多数決
〔コラム⑮〕民主主義と多数決
〔コラム⑯〕どうして食べないの?災害時でも食べてはいけないの?
⑦ルーツから考えよう:アイデンティティと政治参加
〔コラム⑰〕在日コリアン4世のアイデンティティ
〔コラム⑱〕外国人の政治参加の方法
〔コラム⑲〕諸外国の外国人参政権
〔コラム⑳〕「外国人市民」の意見を市政に反映―川崎市のとり組み
2.もっと知りたい人のための探求学習に向けて
おわりに
前書きなど
はじめに
コンビニエンスストアでレジを打つ外国人の若者。学校のクラスで友人とふざけ合う外国にルーツをもつ生徒。スポーツ界で日本代表として活躍する「ハーフ」アスリートたち。そんな風景を地域や学校で、あるいはメディアを通じて目にすることが増えている。日本に暮らす外国人は280万人を超え、日本の総人口の2.0%を突破した。多様な言語、文化、国籍をもった人々、すなわち「外国人」「外国につながる人びと」が、生産者および消費者として日本の経済を担い、税金を納めて行政サービスを支え、それを享受し、家族を形成して日本に暮らしている。
本書は、日本社会の急速な多文化化の状況を受けて、学習者一人一人が社会の担い手としてこれからの日本の多文化共生を模索し、新たな社会の構築に関与できるようになるための学習活動を提案するものである。本書でいう多文化共生とは、多様な文化が単に同じ社会に共存する状態を指すのではなく、多様性を前提とした社会的包摂をめざすことを意味している。社会的包摂とは、その社会に属するすべての人々が生活するために必要な、最低限の経済的、政治的、社会的、文化的諸権利が充足されない状態を解消し、それらすべての人々を社会の構成員として組み込むことである。
「日本社会に属する人々」の範囲をどのように捉え、社会的包摂の実現のために誰の声を聞き、社会の何を変えればよいのだろうか。正解はない。あるのは、これからの日本社会の担い手である学習者が、どう考えるかだけである。
(…後略…)