目次
本書の目的
序章 留学生獲得が日本の大学にもたらすもの[春口淳一]
はじめに
1.ポスト留学生10万人計画から留学生30万人計画へ
2.留学生30万人計画
3.新たな留学マーケットの開拓と30万人の達成
4.定員充足のための留学生獲得
第Ⅰ部 受入れ側の実態-留学生が持つ価値と国内高等教育機関の期待-
第1章 大規模大学 留学生政策の牽引役として期待される役割とは[宮崎里司]
はじめに――留学生政策を取り巻く諸課題
1.ある大規模校の留学ならびに日本語教育政策事例
2.雇用政策から捉えた留学生政策
3.オーストラリアの留学生政策を事例とした検証
結びと提言――大規模校の果たすべき役割
第2章 中規模大学 留学生担当教員が抱える問題意識から見えるもの[永岡悦子]
1.問題背景と研究目的
2.先行研究
3.調査方法
4.結果・考察
5.本調査のまとめ
6.総合的考察と今後の課題
第3章 小規模大学 存続をかけて展開される留学生獲得マーケット[春口淳一]
1.対象大学について
2.マーケットの現状
3.海外マーケットの開拓と維持
4.国内マーケットの開拓と維持
5.日本留学を決定する要因
6.今後のマーケットの展望
第Ⅱ部 送り出し側のホンネ-魅力的な日本留学とは-
第4章 中国 相対的な日本語学習者減と日本の社会文化に対する関心の高まり[楊秀娥/葛茜]
1.中国における日本語教育の現状
2.中国における留学事情
3.日本の高等教育機関への送り出しの実態――中国のF大学の場合
4.総合考察
第5章 韓国 中国語教育との競争を背景に変化する日本語学習・日本留学の目的と形態[金東奎]
1.韓国における日本語教育の概況
2.韓国の高等教育における留学事情
3.日本の高等教育機関への送り出しの実態
4.考察
第6章 台湾 少子化でもなお冷めることのない日本語学習熱を背景に[郭碧蘭]
1.台湾における日本語教育の現状
2.台湾の高等教育における留学事情
3.日本の高等教育機関への送り出しの実態
4.考察
第7章 香港 短期大学を特色とする当地において見出せる日本留学の展望[郭穎侠]
1.香港における日本語教育の現状
2.香港の高等教育における留学事情
3.考察
第8章 タイ 高校と大学の両面からみた日本留学の現状と課題、そして新しい留学制度設計へ[中山英治/アサダーユット・チューシー/鶴石達]
1.タイにおける日本語教育の現状
2.タイの高等教育における留学事情
3.日本の高等教育機関への送り出しの実態
4.考察
第9章 マレーシア 留学生送り出し大国から受入れ国への転換を目指す[木村かおり/ウー・ワイシェン]
はじめに
1.マレーシアの日本語教育の現状
2.マレーシアの高等教育事情と留学
3.高等教育における日本留学の実態――マラヤ大学の事例から
4.提言
おわりに
第10章 シンガポール 卓越した教育政策により成長し続ける都市国家[ウォーカー泉]
はじめに
1.シンガポールの高等教育
2.留学の現状と課題
3.留学に対する学生の意識
4.日本留学をより魅力あるものにするための提言
第11章 ベトナム 日本語教育の質向上に向けた対応に苦慮する一大留学生派遣国[チャン・ティ・ミン・フォン/ウォン・ティ・ビック・リエン/宮崎里司]
1.ベトナムにおける日本語教育の現状
2.ベトナム(ハノイ)の高等教育における留学事情
3.日本の高等教育機関への送り出しの実態――V大学を例に
4.提言――留学生派遣・受入れポリシー
第12章 ウズベキスタン 日本語の「孤立環境」から変化を遂げつつも、社会要因に悩む特徴を持つ国[イヴァノヴァ・マリーナ]
はじめに
1.ウズベキスタンにおける日本語教育の現状
2.ウズベキスタンの高等教育における留学事情
3.日本の高等教育機関への送り出しの実態(機関の場合)
4.日本留学における問題点および提言
第13章 インドネシア 高度人材育成に向けて高等教育機関における日本語教育に期待される役割[ジャフリ・ファトマワティ]
はじめに
1.インドネシアにおける日本語教育の現状
2.インドネシアの高等教育における留学事情
3.日本留学への関心に関する実態調査――インドネシア人日本語学習者を対象に
まとめ
第14章 インド 日本語教育の現状と課題――英語圏への留学との格差をどう捉えるべきか[サテー・アシュウィニー]
1.インドの日本語教育の現状
2.インドの高等教育における留学事情――日本留学者数の変化
3.考察
終章 留学生政策の意義と可能性[宮崎里司/春口淳一]
1.総括
2.持続性のある留学生政策に向けて
3.提言
4.留学生EMによる持続可能な留学生政策
執筆者紹介
前書きなど
本書の目的
本書は、日本の高等教育機関が留学生を迎え入れるにあたって留意すべきポイントを具体的に指摘し、その改善に向けて提言することを目的とする。どのようにして留学生を獲得し、また獲得した留学生をいかに支援することで、留学生の満足を得られるのか、こうした留学生政策を考える上で、特に本書の新規性として挙げられるのは、日本へ送り出す海外の日本語教育機関の目線に立ったことにある。
だが、「政策」と一口に言っても、国レベルでの教育政策の中で位置づけられるものから、地域社会での取り組み、さらには直接受け入れる教育機関まで、様々なレベルが想定される。本書が多様な政策にどう向き合うのか、その構成について触れることで、おわかりいただけるだろう。
まず、序章「はじめに」で留学生30万人計画からの留学生受入れの動向を整理し、マクロレベルでの留学生政策を概観する。そして、日本社会における留学生の存在が持つ意味を考える。
第1章から第3章にかけては、日本国内の高等教育機関に注目し、受入れ側の目線に立った論考が並ぶ。規模の異なる3つの大学の事例から、ミクロレベルでの留学生政策の実態を記述し、またその課題を明らかにする。
一方、留学に送り出す側は、日本留学をどう評価しているのか。これを取り上げるのが、第4章から第14章までである。アジア各国・地域の日本語教育事情、そして日本留学の実態を紹介するとともに、日本に学生を送り出す教育機関が日本留学、そして留学生を受け入れる日本の高等教育機関に何を期待するのかを記述する。
最終章となる終章で全体を総括し、留学生を受け入れる意義を再考する。そして、持続性のある留学生政策の重要性とその実現に向けた提言を行うことで稿を閉じる。
(…後略…)