目次
はじめに
第Ⅰ部 異文化接触と葛藤、価値観の研究動向
第1章 日本における留学生の現状と異文化接触研究動向
第1節 留学生の動向と現状
第2節 異文化接触研究
第3節 異文化接触と留学生
第4節 結語
第2章 異文化間葛藤と価値観
第1節 葛藤と葛藤解決方略とは
第2節 葛藤解決方略における文化差
第3節 文化的価値観
第4節 教育価値観
第5節 結語
第Ⅱ部 教育価値観の尺度作成、教育価値観と葛藤解決に関する実証研究
第3章 教育価値観の理論的分析――項目の収集と選抜
第1節 教育価値観の理論的分析と項目の作成――研究1
第2節 結語
第4章 教育価値観尺度の作成と異文化間比較
第1節 教育価値観尺度の作成と因子構造の検討――研究2
第2節 教育価値観の異文化間比較――日本人教師、中国人学生、韓国人学生、日本人学生との違い――研究3
第3節 教育価値観尺度(短縮版)の作成――研究4
第4節 教育価値観の異文化間比較――短縮版を用いた中国人学生、韓国人学生、日本人学生の違い――研究5
第5節 教育価値観の上位因子構造と異文化間比較――研究6
第6節 教育価値次元と一般的価値次元との関連
第7節 結語
第5章 日本人日本語教師と留学生との葛藤事例
第1節 日本語教育場面の異文化接触の現状
第2節 葛藤事例の内容分析と典型例――研究7
第3節 結語
第6章 日本語教育場面における日本人教師と中国人学生、韓国人学生の葛藤の原因帰属と解決方略
第1節 葛藤の原因帰属と葛藤解決方略の関連性及び教師の予測――研究8
第2節 結語
第7章 日本語教育場面における葛藤解決方略と教育価値観
第1節 教育価値観の包括的価値次元と葛藤解決方略との関連――研究9
第2節 結語
第8章 葛藤解決と教育価値観の総合的考察
第1節 研究成果の概要
第2節 葛藤の帰属と解決方略、教育価値観との関連
第3節 本研究の意義と異文化間の教師教育へ向けて
第4節 今後の課題
第5節 結語
第Ⅲ部 教育価値観と一般的価値観の国際比較研究
第9章 大学生の教育価値観の国際比較――7か国・地域の質問紙調査
第1節 7か国・地域の大学生の教育価値観の比較――研究10
第2節 結語
第10章 大学生の一般的価値観の国際比較――Schwartzの価値尺度を用いて
第1節 7か国・地域の大学生の一般的価値観の比較――研究11
第2節 結語
引用文献
おわりに
索引
前書きなど
はじめに
(…前略…)
本論文は、全Ⅲ部、10章から構成される。第Ⅰ部は異文化接触と葛藤、価値観の研究動向編(1章から2章)、第Ⅱ部は教育価値観の尺度作成、教育価値観と葛藤解決に関する実証研究編(3章から8章)、第Ⅲ部は国際比較研究編(9章から10章)である。
第Ⅰ部、第1章では、日本における留学生政策を含めた留学生の受入れ動向と現状について概観する。留学生研究の背景となる理論として、おもに接触仮説、カルチャー・ショック、異文化適応関連の研究動向を概観し、日本における留学生とホスト社会の日本人との異文化間葛藤研究が僅少であることを論じる。第2章では、異文化間葛藤と価値観に関する研究について概観する。本研究の対象者である異文化間の教育場面で起こる葛藤の多くは、日本人教師とアジア系留学生を含むものであるため、解決行動を解明するためには教育価値観を導入する必要性を述べる。教育価値観を領域ごとに概観し、一般的価値観と教育価値観との関連について説明する。
第Ⅱ部、第3章では、教育価値観の3領域(教育観、教師観、学生観)について意見項目を収集し、理論的にその構造を検討する。第4章では、理論的に選抜された教育価値観尺度を用いて、日本人教師、中国人学生、韓国人学生、日本人学生の教育価値観の比較を行う。また、短縮版教育価値観尺度を作成し、評定法と分析方法を変えて比較を行い、それぞれの集団別特徴を明らかにする。さらに、包括的価値次元を明らかにする。第5章では、日本語教育場面での日本人教師の認知している葛藤事例を分析し、その内容を明らかにする。第6章は、異文化間葛藤における日本人教師、中国人学生、韓国人学生の原因帰属と解決方略の関連を検討し、また、日本人教師による予測との比較から異文化間の葛藤解決の特徴を明らかにする。第7章では、教育場面における教育価値観と葛藤解決方略の関連を明らかにするために、日本人学生、中国人学生、韓国人学生を対象に、教育価値観の包括的価値次元が葛藤解決方略にどのように影響するか、学生集団の差異を加味して検討する。第8章では、本研究の研究課題である原因帰属、葛藤解決方略、教育的価値観の関連について総合的考察を行う。さらに、本研究の意義を事例研究の視点、教育価値観の視点から述べ、異文化間の教師教育へ向けて提案を述べる。
さらに、第Ⅲ部では後続の調査研究として第9章では留学生と本国の大学生では異なる可能性があるために、日本を含め、留学生受入れの上位国である台湾、中国、韓国、マレーシア、タイ、アメリカの7か国・地域の本国の大学生対象に教育価値観の国際比較調査を行い、教育価値観の異同について検討する。第10章では、同時期に同対象者で行ったShwartzの一般的価値観の調査を行ったため、7か国・地域の大学生の一般的価値観の異同について検討し考察を行う。
(…後略…)