目次
はじめに――国際開発学と開発政治学
第Ⅰ部 現代世界と途上国開発
第1章 開発の政治経済学のいくつかの視角
1 絵所秀紀『開発の政治経済学』
2 ダニエル・ヤーギン&ジョゼフ・スタニスロー『市場対国家』
3 ステファン・ハルパー『北京コンセンサス』
第2章 比較政治学と政治発展論
4 ハワード・J・ウィーアルダ『入門 比較政治学』
5 サミュエル・ハンチントン『変革期社会の政治秩序』
6 リチャード・A・ヒゴット『政治発展論』
第3章 開発援助と政治
7 西水美恵子『国をつくるという仕事』
8 マイケル・エドワーズ『フューチャー・ポジティブ』
9 トーマス・カロザース他『政治に直面する開発援助』(英文)
10 ヴェレーナ・フリッツ他編『課題対応型の政治経済分析』(英文)
第Ⅱ部 途上国開発における国家の役割
第4章 開発・国家・ガバナンスに関する国際機関の議論
11 世界銀行『世界開発報告1997』
12 世界銀行『世界開発報告2017』
13 国連開発計画『人間開発報告書2002』
14 クレイグ・N・マーフィー『国連開発計画(UNDP)の歴史』
第5章 開発と制度・制度改革
15 ダグラス・C・ノース『制度・制度変化・経済成果』
16 ダロン・アセモグル&ジェイムズ・A・ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか』
第6章 国家論と開発国家
17 ヨン・ピエール&ガイ・ピーターズ『ガバナンス・政治・国家』(英文)
18 エイドリアン・レフトウィッチ『国家と開発』(英文)
19 メレディス・ウー・カミングス編『開発国家論』(英文)
20 リチャード・サンドブルック『アフリカ経済危機の政治分析』
第7章 脆弱国家論
21 ポール・コリアー『民主主義がアフリカ経済を殺す』
22 世界銀行『世界開発報告2011』
23 稲田十一編『開発と平和』
第8章 ナショナリズムと近代国家
24 アーネスト・ゲルナー『民族とナショナリズム』
25 ベネディクト・アンダーソン『(定本)想像の共同体』
26 アントニー・D・スミス『ネイションとエスニシティ』
第Ⅲ部 開発のための国家運営
第9章 開発と法の支配
27 松尾弘『良い統治と法の支配』
28 ラン・ハーシュル『司法官僚支配へ』
第10章 汚職対策
29 スーザン・ローズ=アッカーマン他『汚職と政府』(英文)
30 梅田徹『外国公務員贈賄防止体制の研究』
第11章 リーダーシップ論の途上国への適用
31 ジョセフ・S・ナイ『リーダー・パワー』
32 鈴木康次郎・桑島京子『プノンペンの奇跡』
第12章 開発行政と官僚制
33 ガイ・ピーターズ『官僚制の政治学』(英文)
34 マーク・ターナー&デイビッド・ヒューム他『ガバナンス・経営・開発』(英文)
35 ジョン・クア『シンガポール方式の行政』(英文)
第13章 途上国流の公共政策と政治
36 マット・アンドリュース『開発における制度改革の限界』(英文)
37 玉田芳史・船津鶴代編『タイ政治・行政の変革 1991-2006年』
第14章 ローカル・ガバナンス
38 シャビール・チーマ&デニス・ロンディネリ編『分権化するガバナンス』(英文)
39 石田徹・伊藤恭彦・上田道明編『ローカル・ガバナンスとデモクラシー』
第Ⅳ部 開発を取り巻く政治過程
第15章 クライアンテリズムとレント・シーキング
40 河田潤一編著『汚職・腐敗・クライエンテリズムの政治学』
41 メリリー・グリンドル『地方へ』(英文)
42 ハーバート・キッチェルト&スティーヴン・ウィルキンソン編『パトロン、クライアント、政策』(英文)
43 ニコラス・シャクソン『タックスヘイブンの闇』
第16章 開発途上国の政党と政治
44 ジョヴァンニ・サルトーリ『現代政党学』
45 アンジェロ・パーネビアンコ『政党』
46 アレン・ヒッケン&エリック・クホンタ編『アジアにおける政党システムの制度化』(英文)
第17章 市民社会
47 マイケル・エドワーズ『「市民社会」とは何か』
48 高柳彰夫『グローバル市民社会と援助効果』
49 メアリー・カルドー『グローバル市民社会論』
第18章 民主化
50 ジーン・グリューゲル『グローバル時代の民主化』
51 サミュエル・ハンチントン『第三の波』
52 スティーヴン・レヴィツキー&ルカン・ウェイ『競争的権威主義』(英文)
第Ⅴ部 開発への国際関与
第19章 政策改革支援
53 ステファン・ハガード&ロバート・カウフマン編著『経済調整の政治学』(英文)
54 世界銀行『有効な援助』
55 石川滋『国際開発政策研究』
第20章 平和構築支援
56 ローランド・パリス『戦争の終わりに』(英文)
57 篠田英朗『平和構築と法の支配』
58 オリバー・リッチモンド『ポスト自由主義的平和』(英文)
第21章 民主化支援
59 トーマス・カロザース『重要な任務』(英文)
60 サラ・ブッシュ『飼いならされるデモクラシー支援』(英文)
61 杉浦功一『民主化支援』
索引
前書きなど
はじめに――国際開発学と開発政治学
(…前略…)
本書の構成
開発政治学は開発学と政治学をドッキングさせたものである。政治学は、政府が、一国の富をどのようにつくり出し、多くのレベルで分配するシステムをどのようにつくるか、誰が、何を、いつ、いかにして、なぜ獲得するかを分析する学問分野である(ラスウェルの定義をイギリス高等教育品質管理庁「政治学・国際関係論」部門が再確認)。
「第Ⅰ部 現代世界と途上国開発」ではまず、開発研究の主流であった経済学に政治学を結びつける政治経済学(political economy)について分析するいくつか視角と主要論点を整理したのち、途上国の政治発展論、および開発援助における政治的側面について解説し、文献を紹介する。もう1つの大枠が途上国国家論の全体像に迫る諸側面の解説である。「第Ⅱ部 開発途上国における国家の役割」では、国際機関による途上国国家認識、制度、国家論、なかでも脆弱国家論、およびナショナリズムと国家形成について論じている。
政府は、法体系をつくり、軍と警察などを使って秩序を維持し、インフラや都市計画、教育・保健医療体制の整備などで経済と社会の舵をとる。そのため税を徴収し、公債を発行する。その政府メカニズムの諸要素についての議論が「第Ⅲ部 開発のための国家運営」であり、その分配をめぐる政治的駆け引きの構成要素理解が「第Ⅳ部 開発を取り巻く政治過程」である。第Ⅲ部では、国家運営の主要な要素、すなわち、法の枠組み、違法行為の中でもとくに負の効果が大きい汚職、リーダーシップの決定的重要性、官僚制と公共政策、および地方分権について取り上げている。第Ⅳ部で重要なことは、途上国では、民主政の中心にある政党政治の駆け引きで予算などの分配が決まるのではなくて、その前に与党が政権を維持する構造であるクライアンテリズムがあることである。それに対して、市民社会は非常に小さく、民主政の全体像を抜きにした形式的な「民主化」には問題が多すぎる。
最後に「第Ⅴ部 開発への国際関与」として、政策改革支援、平和構築支援、民主化支援という政治関係の国際関与について解説し、文献紹介をしている。
本書はどの章から読んでもいいようにできている。目次だけでなく、索引からアプローチすることも一案である。
(…後略…)