目次
日本語版への序
序 過酷な選別
第1章 縮小する経済、拡大する放逐
持続不能な矛盾? 包摂から放逐へ
難民という負担を背負う
結論――収奪性の編成
第2章 新しいグローバルな土地市場
規律体制としての債務――土地取得の基礎を整える
外国の土地取得の実行者、場所、取得されたもの
大規模土地取得の実態
一つのケース――地表レベルでのパームオイル生産
結論
第3章 金融とその能力――システムの論理としての危機
地方の住宅がグローバルな金融商品になるとき
グローバルな拡大の可能性
その他のグローバル住宅市場――超富裕層のためのスーパープライム
金融――自らのパワーを制御できない?
成長と繁栄に対する認識を変える
第4章 死んだ土地、死んだ水
土地の劣化
産業廃棄物――その多様なメカニズム
鉛汚染
クロム汚染
鉱業と資源採取
土地、水、空気を汚染する力
水資源の収奪
グローバルな規模拡大
結論 国境線を超えて――グローバルな条件
結語 システムの末端で
謝辞
訳者あとがき
原註
引用文献
索引
前書きなど
訳者あとがき
本書は、Saskia Sassen, Expulsions: Brutality and Complexity in the Global Economy, The Belknap Press of Harvard University Press, 2014を全訳したものです。邦訳に当たっては、タイトルを『グローバル資本主義と〈放逐〉の論理』に変更し、サブタイトルを添えました。
(…中略…)
そして本書においては、世界規模の不平等の拡大と並行した「放逐」の論理の出現と「包摂から放逐へ」の流れに着目し、その背後にある資本主義の構造変化を分析しています。なお、この「放逐」と、多くの研究者が現代社会の特徴として指摘する「包摂から排除へ」の「排除」との違いは、放逐がサブプライム・ローンの破綻に伴う中低位層の住居からの追い立てや、グローバル・バイヤーによる土地取得に伴う農地からの農民の立ち退き、不法移民や難民の施設収容など人間を対象にしたものに加え、企業や、土地や水資源さらには地球環境全体を巻き込んだ全面的なものである点です。象徴的なものが水圧破砕と呼ばれる先端的な天然ガスや原油の抽出技術であり、これに伴って地下深くにある資源も収奪の対象となり、人間の暮らしのみならず、生物圏までもが根こそぎ破壊される恐れがあります(こうした複雑な技術がもたらす残忍さも本書の大きなテーマです)。しかし、こうした放逐の論理は目に見えにくいため、極端な現象が発生しているシステムの末端に照準を合わせて可視化する必要があるとも著者は指摘しています。
(…攻略…)