目次
訳者はしがき
序文
謝辞
頭字語・略語
要旨
第1章 はじめに
▼コラム1 行動情報を活用した規制政策の2つの事例
▼図1 ガロン当たりマイル(MPG)尺度と、一定の距離を移動した時の車両による燃料消費量の非線形的な関係
第2章 定義と範囲
第1節 行動経済学とは何か?
第2節 規制政策とは何か?
▼図2 規制の循環
第3節 「ナッジ」
第3章 政策に対する行動経済学の広がり続ける影響
第1節 米国
▼コラム2 2009年CARD法
第2節 英国
▼コラム3 英国ビヘイビア・インサイト・チーム(UKBIT)により設計された介入の2つの事例
第3節 欧州委員会
第4節 他の諸国
第5節 いずれの政策類型および政策分野か
第4章 行動経済学と政策設計
第1節 情報と選択肢の単純化
第2節 デフォルトと利便性
第3節 顕著性と注意
第4節 バイアスの除去と決定の質
第5節 規制方法
第5章 規制デリバリー
第6章 結論
参考文献・資料
訳者解説
1 OECDによる行動公共政策の動向
2 国際機関による行動公共政策の動向
3 なぜ行動公共政策が必要なのか?
4 本書が焦点を当てた選択アーキテクチャ
訳者あとがき
前書きなど
訳者はしがき
(…前略…)
本書は、ピート・ラン(Pete Lunn)博士により執筆され、2013年11月に行われた第9回規制政策委員会において公表が承認された報告書である。本書では、米国、英国、欧州連合や他の欧州諸国における行動経済学を活用した規制策政策の事例を紹介するとともに、行動経済学を政策設計にどのよう活用することができるかについて検討されている。特に、政策のアプローチとして、「情報と選択肢の単純化」「デフォルトと利便性」「顕著性と注意」「バイアスの除去と決定の質」の有効性について議論が展開されている。さらに、そのような規制政策をどのように波及していくのかについての検討もなされている。
本書の影響は、OECDの他部局へも広がっている。一例を挙げると、2016年3月には、科学技術イノベーション局(Directorate for Science, Technology and Innovation: DSTI)に設置されている消費者政策委員会(Committee on Consumer Policy: CCP)において、「電子商取引における消費者保護(Consumer Protection in E-commerce)」(OECD, 2016)というタイトルの勧告が公布された。本勧告では、消費者行動を行動科学の側面から洞察し、そのような行動特性を基にした消費者保護を講じることを国際社会に対して勧告している。
このように、国際政策において広がりを見せる行動公共政策の動向を日本の読者の方々にお伝えできることは、意義深いことであると考えている。