目次
はじめに
序章 日本の社会的養護においてライフストーリーワークが必要である理由
第1節 日本の社会的養護の子どもの現状から
第2節 日本におけるライフストーリーワークの普及動向
第1章 ライフストーリーワークとは
第1節 ライフストーリーワークの歴史
第2節 ライフストーリーワークとは何を指すのか
第3節 ライフストーリーワークの3つの形式
第4節 子どもの知る事実と支援者の知る事実
第5節 生活場面型とセッション型
第2章 ライフストーリーワーク実践のポイント【準備編】
第1節 実施者に求められる覚悟
第2節 子ども自身のニーズをどう確認するか
第3節 職場の理解をどう得るか
第4節 子どもの家族の理解をどう得るか
第5節 家族の情報・生活史に関する情報をどう収集するか
第6節 関係機関や職種間ではどう連携すればよいか
第7節 実践の安全性を高めるために必要なこと
第3章 ライフストーリーワーク実践のポイント【実践編】――生活場面型
第1節 ソーシャルワークとケアワーク(生活場面)
第2節 ライフストーリーワークの基盤となる生活環境の構築
第3節 生活場面型ライフストーリーワークにおける養育者の役割
第4節 養育者自身の価値観・家族観を振り返る
第5節 子どもの客観的なライフヒストリーの把握
第6節 子どもと養育者の関係性
第7節 生活のなかで自己物語を紡ぐ
第8節 実施上の注意点・留意点
第9節 記録の保存・保管
第10節 セッション型への移行
第4章 ライフストーリーワーク実践のポイント【実践編】――セッション型
第1節 セッション型ライフストーリーワークの意義
第2節 どうやって子どもをライフストーリーワークに誘うか
第3節 ライフストーリーワークで使われる手法・ツール・アイテム等の紹介
第4節 子どもが知らなかった情報を伝える際の留意点
第5節 多職種によるフォロー体制の確保
第6節 生みの親を尊重する姿勢の重要性(忠誠葛藤との関連)
第7節 モニタリングと評価(ライフストーリーワーク実施中の行動化への対応、中止の判断等)
第8節 ライフストーリーワークのゴール(実施期間・内容の到達点等)
第9節 セッション型ライフストーリーワークの特長と課題
第5章 事例(モデルケース)で考えるライフストーリーワーク
はじめに
事例'v:LSWの実施準備が不十分だったため、支援がうまくいかなかった思春期女児
事例'w:父親の精神疾患を理解していない高齢児の自立に向けて
事例'x:児童自立支援施設入所中の思春期男子の事例
事例'y:「真実告知」後に、里親・里子が一緒に取り組むLSW
事例'z:「生活場所の移行」「新たな家族の誕生」に伴う乳児院での取り組み
第6章 ライフストーリーワーク導入から展開への経緯
第1節 大阪ライフストーリー研究会
第2節 三重県の児童相談所(組織的な展開につなげるための工夫)
第3節 熊本ライフストーリーワーク研究会
第4節 児童心理治療施設 あゆみの丘
第5節 実践者養成のための集中研修の試み
第6節 「LSWメーリングリスト」と「LSW実践・研究交流会」の取り組み
■コラム 施設生活経験者からのメッセージ「“人・情報・タイミング”の見極め」
第7章 ナラティヴ・アプローチからみたライフストーリーワーク実践
第1節 ライフストーリーワークにおける実践と研究のギャップ
第2節 社会的養護の子どものライフストーリー
第3節 ナラティヴ・アプローチの視点から解釈するライフストーリーワーク実践
第4節 おわりに~子ども一人ひとりのライフストーリーに目を向ける
終章 日本におけるライフストーリーワークの課題と展望
第1節 ライフストーリーワーク実践と記録保管やアクセス支援
第2節 ライフストーリーワークの今後の展開と課題
ブックガイド
資料 ライフストーリーワーク(LSW)実施前確認シート
あとがき
前書きなど
あとがき
平成20年12月に広島で開催された日本子ども虐待防止学会第14回学術集会において、「子どもの話を聞く――子どもからの成育歴の聴取とlife story work」というタイトルの分科会が開催されました。私の知るかぎり、この学会で社会的養護の子どもたちへのライフストーリーワークの話題が大きく取り上げられたのは、この時が初めてだったと思います。
平成20年といえば、私の職場である三重県では、施設の子どもに生い立ちに関する情報をどう伝え返すのか、まだまだ試行錯誤していた時期です。そんな時にこの企画を見つけた私は、実践の手がかりをつかみたいと思い、広島へ出かけました。
この分科会で実践発表していたのが、楢原真也さん(本書編著者)と藤澤陽子さん(同共著者)でした。発表者の方々にどうしても質問したいことがあった私は、思い切ってフロアから挙手し、「その子に過去の情報を伝えても大丈夫と判断した根拠は何か? 自分たちの実践でも大変苦慮している」といった趣旨の質問をしました。
そんな私の様子を見て、「ライフストーリーワークの実践者がいる!」と驚いた人たちがいました。後から分かったことですが、この分科会には、当時、日本で先駆的にライフストーリーワークに取り組んでいた人たちが何人も参加されていたそうです。そのなかの一人が才村眞理先生(同共著者)でした。私に続けて、才村先生もフロアから発言されていたことを今もはっきり覚えています。
この日を境に、日本のライフストーリーワーク実践・研究に関するネットワークがつながり始めたのです。
(…中略…)
私自身、かつては発表を聞く側の人間でした。そんな私が、縁あって自分たちの実践を発信する機会に恵まれ、多くの社会的養護関係者に聞いていただくことができました。発信をきっかけに、同じような関心や問題意識をもっている人たちと交流が始まり、ネットワークができ、今度はその人たちが自分たちの実践を発信する……。本書の共著者には、かつて私たちが企画した日本子ども虐待防止学会の分科会でフロアにいた方が何人かいます。このような連鎖のなかから本書は生まれました。
そんな経緯で生まれたこの本が、これから社会的養護の子どもたちへのライフストーリーワークを実践する人たちのお役に立つのであれば、これほど嬉しいことはありません。次は、読者の皆さんの番です。私たちと一緒にライフストーリーワーク実践の質を、さらには社会的養護そのものの質を高めていきましょう。
平成27年11月20日 編者を代表して 山本智佳央