目次
刊行によせて 1
刊行によせて 2
著者序文
謝辞
図表一覧
第Ⅰ部 予備知識、アセスメントおよび治療
第1章 序論
第2章 成人期のADHDのアセスメント
第3章 ADHDの治療
第Ⅱ部 中核症状
第4章 不注意と記憶の問題
第5章 時間の管理
第6章 問題解決
第7章 衝動性
第Ⅲ部 共存・関連する問題
第8章 社会的関係
第9章 不安
第10章 欲求不満と怒り
第11章 気分の落ち込みとうつ病
第12章 睡眠の問題
第13章 薬物乱用
第Ⅳ部 将来
第14章 将来に向けた準備
参考文献
監修者あとがき
索引
前書きなど
監修者あとがき(田中康雄)
1.本書について
本書は、スーザン・ヤングとジェシカ・ブランハムによるADHD in Adults: A Psychological Guide to Practice(2007)の全訳です。
注意欠如多動性障害(Attention Deficit Hyperactivity Disorder:以下ADHD)とは、不注意、多動、衝動性を主訴とする精神疾患で、このたびのDSM-5(APA, 2013)では和訳名が注意欠如・多動症となり、神経発達障害というカテゴリーへ入ることになりました。いわゆる発達障害である以上は、その特性は生涯にわたり存在し続けるものです。
それでも、サム・ゴールドスタイン博士が冒頭で触れているように、以前はADHDといえば小児・青年期にみられても、次第に収まっていくものと理解されていました。
しかし、Barkley(2006)は、小児期にADHDと診断された子どもの78%が、青年期に至っても症状が継続していると報告しました。また、Biedermanら(2006)のADHDと診断された子どもの10年後の予後調査によれば、10年後に、気分障害や統合失調症といった精神障害、不安障害、反社会的障害(行為障害、反抗挑戦性障害、反社会的パーソナリティ障害)、発達障害(排泄障害、言語障害、チック障害)、物質使用障害(アルコール、薬物、たばこ等)を呈した子どもたちは、コントロール群に比しADHD群で2倍から3倍以上の高い出現率を認めたといいます。
(…中略…)
本書では、スーザン・ヤングとジェシカ・ブランハムが開発したヤング・ブランハム・プログラムの全容が詳細に述べられています。読者は、まず第1章から順を追って本書を読み解いていただければと思いますが、その前に、マーガレット・ウェイス医学博士らの「刊行によせて 2」を読むことで、本書全体の概要を手に入れることができます。とてもよくまとまった読書ガイドとなっています。
本書は、いくつかの章にわたって繰り返し述べられている部分があります。おそらくそれだけ重要な項目だからでしょう。われわれは、本書を活用することで、患者さんと対話し行動自体を変えていくことを促し、マイナスの考えや怒りとのつきあい方を一緒に相談しては、よりよい方向へ一緒に歩もうとし続けることができます。
おそらく成人期のADHDの患者さんは、この歩みを継続することに、時には挫折しそうになるかもしれません。治療者は、些細なことでも大きな報酬に置き換えて、勇気づけ、あきらめずに伴走し続けないとならないでしょう。
治療者が挫けそうになったときは、第14章の結論を読み直してください。そこには「ADHDの患者が生まれながらに持つ情熱と立ち直る力(natural ebullience and resilience)は、セラピストの努力を大いにあと押しする」(p.369)と書いてあります。彼らにあるプラスへ変化する可能性が現実のものになるとき、お互いに報われる体験を得ることができるはずです。
(…後略…)