目次
はじめに――開発社会学の世界へようこそ!
第Ⅰ章 進化・発展・近代化をめぐる社会学
Overview
1 オーギュスト・コント、ハーバート・スペンサー『コント、スペンサー』
2 今西錦司『進化とはなにか』
3 富永健一『近代化の理論』
4 鶴見和子『内発的発展論の展開』
5 町村敬志『開発主義の構造と心性』
6 ジョージ・リッツア『マクドナルド化する社会』
7 アンソニー・ギデンズ『第三の道』
〈コラム1〉都市の明るい灯――流行歌『木綿のハンカチーフ』
〈コラム2〉中国における「発展社会学」と「転型社会学」
第Ⅱ章 途上国の開発と援助論
Overview
8 アンドレ・グンダー・フランク『従属的蓄積と低開発』
9 イマニュエル・ウォーラーステイン『史的システムとしての資本主義』
10 イヴァン・イリイチ『シャドウ・ワーク』
11 小倉充夫『開発と発展の社会学』
12 宮内泰介『開発と生活戦略の民族誌』
13 佐藤寛『開発援助の社会学』
14 マイケル・チェルネア編『開発は誰のために』
15 ヤン・ネーデルフェーン・ピーテルス『開発理論(第2版)』
16 ノーマン・ロング『開発社会学』
〈コラム3〉ケアギバー――ネパールでブームの家事育児支援
第Ⅲ章 援助行為の本質の捉え直し
Overview
17 エドワード・サイード『オリエンタリズム(上・下)』
18 マイケル・サンデル『これからの正義の話をしよう』
19 マルセル・モース『贈与論』
20 ジェームス・ミッジリィ『社会開発の福祉学』
21 エドガー・シャイン『人を助けるとはどういうことか』
22 岡真理『彼女の「正しい」名前とは何か』
〈コラム4〉ベルマーク――日本発のユニークな資金調達法
第Ⅳ章 押し寄せる力と押しとどめる力
Overview
23 福武直編『地域開発の構想と現実(Ⅰ~Ⅲ)』
24 舩橋晴俊・長谷川公一・畠中宗一・梶田孝道『高速文明の地域問題』
25 梶田孝道『テクノクラシーと社会運動』
26 ハーバート・ガンズ『都市の村人たち』
27 アラン・トゥレーヌ『声とまなざし』
28 マニュエル・カステル『都市とグラスルーツ』
29 ジェームズ・スコット『弱者の武器』
〈コラム5〉ダム問題を題材とした諸メディア作品
〈コラム6〉年表による問題構造の把握――『環境総合年表』の試み
第Ⅴ章 都市・農村の貧困の把握
Overview
30 松原岩五郎『最暗黒の東京』
31 鈴木榮太郎『日本農村社会学原理』
32 オスカー・ルイス『貧困の文化』
33 北原淳『共同体の思想』
34 新津晃一編『現代アジアのスラム』
35 青木秀男『マニラの都市底辺層』
36 ジグムント・バウマン『新しい貧困』
37 マイク・デイヴィス『スラムの惑星』
38 J.モーダック、S.ラザフォード、D.コリンズ、O.ラトフェン『最底辺のポートフォリオ』
39 C.K.プラハラード『ネクスト・マーケット』
〈コラム7〉むらの単位
〈コラム8〉シカゴ学派の都市研究
第Ⅵ章 差別や社会的排除を生み出すマクロ-ミクロな社会構造
Overview
40 サスキア・サッセン『グローバリゼーションの時代』
41 マリア・ミース、C.V.ヴェールホフ、V.B.トムゼン『世界システムと女性』
42 アジット・バラ&フレデリック・ラペール『グローバル化と社会的排除』
43 関根政美『エスニシティの政治社会学』
44 ナイラ・カビール『裏返しの現実』
45 ジョン・ターナー『社会集団の再発見』
46 アビジット・バナジー&エスター・デュフロ『貧乏人の経済学』
〈コラム9〉ランダム化比較試験(RCT)とエビデンス・ベースド・アプローチ
〈コラム10〉ジェンダーと開発
〈コラム11〉開発と海外出稼ぎの複雑な関係
第Ⅶ章 人々の福祉向上のための開発実践
Overview
47 松原治郎『日本の社会開発』
48 武川正吾・三重野卓編『公共政策の社会学』
49 佐藤嘉倫『意図的社会変動の理論』
50 エベレット・ロジャーズ『イノベーションの普及』
51 ジェームズ・ファーガスン『反政治マシーン』
52 デイヴィッド・モス『開発を切り拓く』
53 ロバート・チェンバース『第三世界の農村開発』
54 ビル・クーク&ウマ・コタリ編『参加』
55 サミュエル・ヒッキィ&ジャイルズ・モハン編著『変容する参加型開発』
第Ⅷ章 目にみえない資源の活用
Overview
56 ジェームズ・コールマン「人的資源の形成における社会関係資本」
57 ピエール・ブルデュー『資本主義のハビトゥス』
58 佐藤寛編『援助と社会関係資本』
59 宇沢弘文『社会的共通資本』
60 スチュアート・ホール編『表象』
〈コラム12〉誰を開発するのか――ある大学教授のつぶやき
索引(人名/地名/援助機関・研究機関など/学問領域/概念・キーワード/略語)
前書きなど
はじめに――開発社会学の世界へようこそ!
この本は、これから「開発社会学」という学問に触れてみたい、というあなたのために作られました。なぜわざわざそんな本を作ったかというと、開発社会学の仲間を増やしたいからです。なにしろ現在、日本で開発社会学者だと自称しているのは7~8人、多く見積もっても10人に満たない研究者しかいないのです。本書で取り扱う60冊の解説およびコラムの執筆者は全部で19人いて、ほぼ全員が「社会学者」ですが、みんながみんな「開発社会学者」だというわけではありません。
そんなに人気がないなら「開発社会学」なんて不要なんじゃない?
ごもっともな疑問です。でもあと一息で「開発社会学」にはまってくれそうな「予備軍」がたくさんいることを我々は知っているのです。しかもそういう人たちのほとんどは、「開発社会学」というものの存在を知らないので、まだ足を踏み入れていないだけなのです。だからそんな「予備軍」のみなさんを開発社会学の入り口にいざなうために本書を作りました。
(…中略…)
この本、どうやって使うんだ?
はい、お答えしましょう。本書のタイトルは、『開発社会学を学ぶための60冊』ですから、開発社会学を知るための基礎的な知識、モノの見方を示している代表的な本がずらりと並んでいるので、どこからでも開いていただいてよいのです。あくまでも「入り口」ですから、おもしろくなさそうだと思ったら入らなくてもよいわけです。おもしろそうだと思ったら、その文献のオリジナルにチャレンジしてください。
本書では60冊を8つの章にわけてありますから、関心のありそうな章をまとめて読んでいただくと、オリジナル文献にあたらなくても、現在、開発社会学的にはどんなことが焦点になっているのかがおおよそ把握できるはずです。また、大学生がレポートや卒業論文を書くときに、各専門書にいったいどんなことが書いてあるのかを、読む前にまず調べてみるとか、あるいは、ゼミで扱う文献をこのなかからピックアップするというような使い方にも適しています。ところどころ、開発援助に関する聞き慣れない専門用語が含まれているかもしれませんが、その場合は佐藤寛監修・国際開発学会編『国際協力用語集』(2014 第4版 国際開発ジャーナル社)などを参照して補完的な知識を効率的に吸収するきっかけとしてください。
すでに開発の実務についている人にとっては、報告書や同僚との会話のなかで出てきた社会学者の名前や社会学的用語について、少し理解を深めたいというようなときにうってつけです。
また、それぞれの本の解説の最後には「議論の広がりと関連文献」として、その後の議論の展開や興味深い関連文献が紹介されているので、こうした文献に手を広げてみるのも知識を深めるために有効です。
(…後略…)