目次
序文と謝辞
イントロダクション
1 自由と反レイシズムを両立させるために――本書の見取り図
Ⅰ 表現の自由
2 ヨーロッパにおけるヘイトスピーチ規制の多様性
1920年代から90年代のヨーロッパ――規制に向けたゆっくりとした歩み
1990年以降の展開――ヘイトスピーチを規制する立法とその執行
・イギリスの2006年宗教的憎悪法
・フランスの法規制
・デンマークの風刺画とヘイトスピーチ規制の限界
結論――ヨーロッパにおける規制の限界
3 ホロコースト否定とその極限
ホロコーストにまつわるレイシズム――類型と潮流
ホロコースト否定を禁止する法律の制定時期とその種類
施行されるホロコースト否定禁止――高まっていく圧力
かくも遠くまで来てしまった――これからどこへ向かうべきか
4 アメリカは例外なのか?
「言論の自由」の原則が生まれるまで――19世紀から1930年代
言論規制の時代――1940年代から50年代
ヘイトスピーチの保護へ――1960年代から70年代
アメリカにおけるヘイトスピーチの制限――90年代の状況
ヨーロッパとの比較
Ⅱ 結社の自由と人種差別
5 結社の自由と人種差別団体規制のジレンマ
人種差別団体規制の課題
アメリカ――人種差別団体が自由を謳歌する国
ベルギー――極右政党封じ込め その可能性と限界
ドイツ――ネオナチと闘う民主主義
各国の事例から学べること
6 人種差別とヘイトクライムを罰する
レイシストの犯罪を違法化する
アメリカにおける差別禁止法の歴史
アメリカにおけるヘイトクライム法
ヨーロッパにおける差別禁止法とヘイトクライム法
結論
結論
7 どの程度の自由をレイシストに与えるべきなのか
自由とレイシズムをめぐる歴史の教訓
どの程度の自由をレイシストに与えるべきなのか
・政策の文脈を理解する
・法律の影響を評価する
・原則を構築する
レイシストでいる自由をめぐる政治哲学
訳者解説
はじめに
訳語と構成
・訳語について
・本書の構成
本書の内容
・各国の法制度のまとめ
・補足的な論点
日本という文脈
・日本のレイシズムの現状
・ヘイトスピーチとしての「在日特権」
・政府の対応
・法学者の立場
・反レイシズム運動の登場
おわりに――本書翻訳の経緯について
注
参考文献
索引
前書きなど
訳者解説(明戸隆浩)
(……)
本書の構成
その上で、本書の構成について簡単に書いておきたい。本書はぜんぶで7章からなり、第1章は序論、第2章から第6章までが各テーマについての具体的な議論、最後の第7章が結論となっている。第1章は原著者が本全体の見取り図について書いている部分なので、まずはこの部分をざっと読むのがよいだろう。その上で第2章から第6章に入るわけだが、この部分については、必ずしもこの順序のとおりに読む必要はない。むしろ、自分が一番興味のあるところから読み始めるということでかまわないと思う。
たとえば、ヘイトスピーチ規制に興味がある場合で、そうした規制に比較的熱心なヨーロッパについて知りたいというときには、第2章から。ヨーロッパでの規制の中でも、特にホロコースト否定(より広くは「歴史修正主義」の問題)の扱いについて気になる場合は、第3章から。ヘイトスピーチ規制に興味がある場合でも、むしろ規制がほとんどないと言われるアメリカに興味があるときには、第4章から。少し角度を変えて、むしろこうした問題の担い手である極右政党や差別団体に対する規制について知りたいという場合は、第5章から。ヘイトスピーチではなく、ヘイトクライム法および人種差別禁止法について知りたいという場合は、第6章から。なお、第7章は本全体の議論のまとめとして書かれている部分だが、細かい事実関係よりこの問題に対する基本的なスタンスについて考えたいという場合は、第7章から入るのもまったく無理なことではないだろう。各章の議論はそれぞれ関連しているから、もちろん最終的には全体を通して読むに越したことはないが、それは結果的にそうなればいいことである。