目次
刊行によせて
序文
謝辞
寄稿者
序論
第1章 障害に対する理解
障害とは何か
障害と人権
障害と開発
第2章 障害――世界の状況
障害の評価
有障害率――生活機能の困難
健康状態
人口動態
環境
障害と貧困
サービスとアシスタンスのニーズ
障害にかかわる費用
結論と勧告
第3章 一般的な医療
障害のある人々の健康に対する理解
医療を阻む障壁への取り組み
結論と勧告
第4章 リハビリテーション
リハビリテーションに対する理解
リハビリテーションを阻む障壁への取り組み
政策、法律および制度の改正
リハビリテーションのための資金調達メカニズムの開発
リハビリテーションを担当する人材の増強
サービスの拡大と分散化
技術の利用促進と負担可能性の改善
調査研究とエビデンスベースの実践の拡充
結論と勧告
第5章 アシスタンスと支援
アシスタンスと支援に対する理解
アシスタンスと支援を阻む障壁
アシスタンスと支援を阻む障壁への取り組み
結論と勧告
第6章 可能にする環境
物理的環境と情報環境へのアクセスに対する理解
建築物と道路における障壁への取り組み
公共交通機関における障壁への取り組み
情報通信を阻む障壁
情報技術における障壁への取り組み
結論と勧告
第7章 教育
就学と障害のある子ども
教育と障害に対する理解
障害のある子どもの教育を阻む障壁
教育を阻む障壁への取り組み
結論と勧告
第8章 就労と雇用
労働市場に対する理解
労働市場への参加を阻む障壁
就労と雇用を阻む障壁への取り組み
結論と勧告
第9章 今後に向けて――勧告
障害――世界的な問題
勧告
勧告1 すべての主流の政策、制度およびサービスへのアクセスの実現
勧告2 障害のある人々のための特別なプログラムとサービスへの投資
勧告3 国家障害戦略と行動計画の採用
勧告4 障害のある人々の参加
勧告5 人材の能力(キャパシティ)向上
勧告6 十分な資金の提供と負担可能な費用での利用の促進
勧告7 障害に対する一般の人々の認識と理解の向上
勧告8 障害に関するデータ収集の促進
勧告9 障害に関する調査研究の強化と支援
結論
付録
用語集
索引
訳者あとがき
前書きなど
序論
障害のある人々の多くは、医療、教育および雇用の機会への平等なアクセスを持たず、必要な障害関連サービスを受けることなく、日常生活活動から排除されている。国連障害者の権利条約の発効を受け、障害はますます人権問題として理解されつつある。また障害は重要な開発課題でもあり、障害のある人々は障害のない人々よりも社会経済的成果が少なく、貧困に直面していることを示すエビデンスが増加している。
障害問題に関する認識と科学的情報は、問題の深刻さにもかかわらず不足している。定義について合意は得られておらず、障害の発生率やまん延状況、傾向に関する国際的な比較が可能な情報はほとんどない。障害のある人々のニーズに取り組む各国の政策と対応の開発方法をとりまとめて分析している文書はごくわずかである。
この状況を改善するために、世界保健総会は(「予防、管理およびリハビリテーションを含む障害」に関する決議58.23において)世界保健機関(WHO)事務局長に対し、現時点で入手可能な最良の科学的エビデンスに基づく『世界障害報告書』の作成を求めた。複数の機関による連携が、意識向上と政治的意思の強化、そして部門を超えた活動に利益をもたらすことが、過去の経験から明白であったため、『世界障害報告書』は世界銀行との協力の下に作成された。
『世界障害報告書』は、政策立案者、実践者、研究者、学術関係者、開発機関および市民社会を対象としている。
○目的
本報告書の全般的な目的は以下のとおりである。
政府および市民社会に対し、現時点で入手可能な最良の科学的情報に基づき、障害の重要性を総合的に解説し、各種調査から得られた障害への対応の分析結果を示す。
上記分析に基づき、国内・国際レベルにおける行動に関する勧告を行う。
○報告書の対象範囲
本報告書は、アクセシビリティ改善と機会均等化、参加とインクルージョンの促進、そして障害のある人々の自律と尊厳のさらなる尊重のための施策に焦点を絞っている。第1章では、障害などの用語を定義し、予防と倫理的配慮をとりあげ、国際生活機能分類(ICF)と障害者の権利条約を紹介し、障害と人権および障害と開発について論じる。第2章では、有障害率に関するデータと世界各地の障害のある人々の状況を概説する。第3章では、主流の医療サービスへの障害のある人々によるアクセスを模索する。第4章では、各種療法と支援機器を含むリハビリテーションについて論じる。第5章では、支援とアシスタンスサービスについて検討する。第6章では、建築物や交通機関などへの物理的なアクセスだけでなく、情報通信技術によるバーチャル環境へのアクセスという観点からも、インクルーシブな環境について探る。第7章では、教育について論じ、第8章では障害のある人々の雇用を再検討する。各章には勧告が含まれているが、それらは第9章でまとめられ、幅広い政策と実践の考察が行われる。
(…後略…)