目次
謝辞
本書に寄せて
第1章 社会学における感情の概念化
1 感情の要素
2 どれくらいの数量の感情があるか
3 感情と合理性
4 感情の社会学理論
5 むすび
第2章 感情のドラマツルギー的、文化的な理論化
1 アーヴィング・ゴッフマンのドラマツルギー的アプローチ
2 スティーヴン・ゴードンの感情文化
3 アーリー・ホックシールドの文化分析
4 モリス・ローゼンバーグの感情と再帰性
5 感情の逸脱に関するペギー・ソイトの理論
6 むすび
付録 感情に関する心理学の概観――ジェームズ・アヴェリル
第3章 儀礼による感情の理論化
1 エミール・デュルケムの影響
2 ランドル・コリンズによる相互作用の儀礼理論
3 エリカ・サマーズ=エフラーの相互作用儀礼理論
4 むすび
第4章 象徴的相互作用論による感情の理論化
1 ジョージ・ハーバード・ミード
2 チャールズ・ホートン・クーリーの寄与
3 スーザン・ショットの社会統制理論
4 シェルドン・ストライカーのアイデンティティ理論
5 ジョージ・マッコールとJ・L・シモンズのアイデンティティ理論
6 ピーター・J・バークによるアイデンティティ制御理論
7 デーヴィッド・ヘイズの情動制御理論
8 むすび
補論 感情の心理学的な見方――E・トリー・ヒギンズおよびチャールズ・カーバーとマイケル・シャイアー
第5章 精神分析的要素を用いた感情の象徴的相互作用論の理論化
1 感情社会学理論へのジークムント・フロイトの貢献
2 トーマス・シェフの恥理論
3 ジョナサン・H・ターナーの理論
4 むすび
補論 感情の心理学的考察――ジューン・タンネイ
第6章 感情の交換理論
1 ジョージ・C・ホマンズの行動主義的理論
2 ピーター・M・ブラウの理論
3 リチャード・エマーソンの権力依存理論
4 交換、正義、感情
5 正義関数と感情――ギジェルミーナ・ハッソ
6 情動制御と正義――スティーヴン・シェルとデーヴィッド・R・ヘイズ
7 エドワード・J・ローラーの社会交換の情動理論
8 むすび
第7章 感情の構造理論
1 セオドア・ケンパーの権力地位モデル
2 ロバート・K・シェリーの心情と期待の理論
3 ジャック・M・バーバレットの感情のマクロ構造理論
4 むすび
第8章 進化論による感情の理論化
1 ウィリアム・ウエントワースの「深層社会性」の分析
2 ジョナサン・ターナーの進化論的な理論
3 ターナーの理論を用いた調査研究
4 マイケル・ハモンドの情動の最大化理論
5 ハモンドの理論を利用した調査研究
6 むすび
第9章 感情社会学の展望
1 感情社会学における概念上の争点
2 感情社会学における調査研究と方法論上の諸問題
3 むすび
原注
訳者あとがき
参照文献
人名索引
事項索引
前書きなど
本書に寄せて
感情の社会学が一つの自立した専門分野として認知されるようになって、すでに三十有余年の歳月が経過した。その期間に感情社会学がなし遂げた社会的感情研究の劇的な発展を見ないですませることもできる。われわれは感情の生理学、感情を形成する文化規範、そして感情を喚起する相互作用の状況がどれほど密接に結び合っているかについて多くのことを知っている。しかし残念なことに、われわれはこうした知識の蓄積について熟考するうえで適切な共通の土台をもちあわせていない。感情社会学の分野はずっと早い時期に、社会的構築論者と実証主義者のとげとげしい論争に呑み込まれてしまった。その論争が激しさを失った後になって、ようやく多数の理論家がそれぞれ自らの研究の細脈を掘り起こし始めた。それにもかかわらず、彼らはジェンダー効果、集団効果、そして社会生物学の研究などの分野の成果に執着したため、感情研究の全体像を見失うことになった。だから一部の悲観論者は、感情社会学が独自の知識大系を目指していないと考えたほどである。
一九七〇年代後半に突如湧きあがった知的な燃え盛りが勢いを失ってすでに久しい。しかしいままさにあなたが手にしている本書は、実にみごとな感情社会学の知的再噴火であるとまちがいなくいいきれる。わたしはその分野を代表する諸理論の説得力についての再検討を期待しつつ本書を読み始めた。ところがわたしはその期待を実感しただけでなく、それ以上の成果を本書に見つけることができた。本書は大学院生用の教材としてすばらしい役割をはたすにちがいない。しかしだからといって本書は理論的枠組のすべてを網羅した百科事典風の概説書ではない。そうではなく、本書は感情社会学の科学としての創造的かつ論理的な発展の傑作である。本書は概念的に関連しているにもかかわらず、表現法、技法、あるいは歴史時代によって分断されてしまったいくつかの考えを連結しながら、理論的見解のあらたな分類法を見つける作業に着手している。本書は主要な理論的な考えと関連する経験的な文献を慎重に再検討し、そして既存の理論を調査研究に適用することで蘇生させている。もっとも重要なことは、いくつかのアプローチが互いに接続されたことだ。本書はわれわれが探究している中範囲理論のモザイクのどこに亀裂が生じたかを検証している。本書はその主張――われわれは社会学内部において一般的で、しかも包括的な感情理論を創出することに接近できるということ――を信頼できる主張――もっと境界を限定した中範囲理論を概して選好するわたしのような懐疑論者にとっても――につくりかえるための枠組を提供している。
(…後略…)