目次
はじめに
I 国土の特徴と住民
第1章 自然――ルウェンゾリ山からビクトリア湖の多様な自然
第2章 人口増加――その背景とゆくえ
第3章 ゴリラと野生生物の復活劇――内戦の悲劇を越えて
【コラム1】ウガンダ博物館
第4章 農業――種子作物・イモ類・バナナの共存
第5章 多民族国家の民族分布――民族集団と政治経済
II 激動をくぐりぬけた歴史
第6章 大湖地方の王国の盛衰、牧畜民の移動――保護領化以前
第7章 イギリスによるウガンダ統治の始まり――帝国イギリス東アフリカ会社の進出
第8章 イギリスの間接統治――独立運動が起こった素地
第9章 独立達成までの困難――紆余曲折の政治過程
第10章 独立後の政治混乱の時代――アミンはなぜ大統領になったか?
第11章 ムセベニ政権による政治安定化と経済復興への道のり――ウガンダの再建
【コラム2】ウガンダの国旗と国祭日
III 行政と経済・生業
第12章 地方分権化の歴史――政治的背景とその展開
第13章 地方行政と開発――与えられすぎた地方自治?
第14章 小農輸出経済の形成――コーヒーと綿花生産が支えた農業発展
第15章 農業を支える取り組み――農産物の生産と流通支援
第16章 村の雑貨店――商品経済への窓口……ではあるけれど
第17章 人とバナナの豊かな関係――栽培・利用・品種
【コラム3】バナナの屋敷畑をめぐる人びとの思い
第18章 アルバート湖畔の漁民の生活――月・星・風に導かれるハンターたち
第19章 乾燥地における牧畜民の生活と生態環境――家畜との濃密な関係
第20章 産業と企業――インド系財閥と伝統的産業構造
第21章 都市の中小企業――カンパラの地場産業
【コラム4】商都としてのカンパラ
第22章 ウガンダ観光の勧め――自然・文化・人との交流を体験
第23章 ゆるやかに、自立して生きる――北部ウガンダ、ランゴ女性たち
IV 社会と暮らし
第24章 村の学校から――UPE政策以降の初等教育
第25章 高等教育――マケレレ大学いまむかし
第26章 ウガンダの教会――国の全域に広がったキリスト教
【コラム5】文化は悪魔――ウガンダ・イテソ民族における新ペンテコステ・カリスマ派キリスト教
第27章 死者を葬る――農村の災いと死、そして施術師について
第28章 カンパラの結婚式――都市部での結婚模様
【コラム6】ふたごとその名前、儀式
第29章 ガンダ人の食卓――主食料理を中心に
【コラム7】調理法から見るウガンダ料理
第30章 商品作物と農村の暮らしの変化――あるトウモロコシ栽培山村から
【コラム8】農村におけるラジオの効用―ウサマ・ビン・ラディンと呼ばれた女
第31章 農村でのもめごと解決――村評議会と親族会議
【コラム9】カンパラのストリートファミリー
第32章 牧畜民ドドスの地理空間のとらえ方――認知地図を手がかりに
【コラム10】牧畜民ドドスにおけるレイディング
第33章 水産資源管理政策と漁民――センターマスターからBMUへ
【コラム11】隣で小用――ウガンダ厠考
第34章 近代医療というもの――ウガンダにおける救いと資源
【コラム12】タクシー、ボダボダ――「市民の足」あれこれ
V さまざまな文化活動
第35章 ガンダ語のポピュラー音楽――カンパラが夢中、女性歌手ジュリアナのことば
第36章 カンパラのエンターテインメント最前線――カラオケの登場
【コラム13】カンパラ育ちのサバイバー
第37章 伝統音楽と舞踊――酒とドラムと男と女
第38章 演劇文化――時代を映し、社会を動かす
【コラム14】ウガンダの劇作家たち
第39章 文学――オコト・ビテックを中心に
【コラム15】『ラウィノの歌』のレトリック
第40章 王様と大統領――復活王国の文化と政治
第41章 アートとクラフト――その評価と市場
VI 開発と現代的課題
第42章 エイズ対策への新たな取り組みの可能性――禁欲・貞節型の予防プログラムを超えて
第43章 カンパラの「スラム」と「サバーブ」――郊外についての考察
【コラム16】カンパラにおけるゴミ処理事情
第44章 「未開」社会への近代火器の導入と流通――19世紀後半から20世紀初頭におけるウガンダ北東部の銃
第45章 子ども兵の社会復帰――北部における平和・復興・開発計画
第46章 北部の人びとから見た外国人の援助――欧米的「援助」に翻弄される人びと
第47章 アチョリの伝統的正義――「正義」として語られる実践
第48章 「反政府ゲリラ」神の抵抗軍(LRA)とその歴史――「非合理」を理解するために
第49章 森林管理政策の転換と保護区をめぐる争い――政治資源としての森林
第50章 カリンズの森とチンパンジー保護――エコツーリズムの現状
第51章 日本の対ウガンダ政府開発援助――援助協調先進国における模索の道
【コラム17】ウガンダと日本
第52章 周辺国との関係――特に「東アフリカ共同体」について
第53章 マスメディアと政治・社会変動――新聞・ラジオ・テレビの役割
おわりに
もっと知りたい人のための文献リスト
前書きなど
はじめに
(…前略…)
この本は読みやすくするために、比較的短い53の章からなっていて、どこから読みはじめてもいいのですが、やはり全体としての構成に沿って読んでくださると最も理解が進むと思いますので、本の構成をまず説明しておきます。全体は6部に分かれています。
第I部は、「国土の特徴と住民」と題して、ウガンダの自然環境をはじめとし、人口はどのようなものか、国立公園で名高い地域の野生動物の現状はどうか、基軸産業である農業の形態、住民の民族的分布にどのような特徴が見られるのかなどが説明されます。
第II部では、「激動をくぐりぬけた歴史」と題して、植民地となる以前からウガンダ地域に北部を通って移動してきた牧畜民の動きと、南部における諸王国の勃興、さらに19世紀末からイギリスの植民地となり、その統治が独立運動の機運をつくり出し、紆余曲折を経た後、1962年に独立を達成するにいたった経緯が語られます。さらに独立達成後の政治混乱がなぜ起こったか、またようやく1980年代になって政治的安定を取り戻し、一度は転落した国民経済の復興をどのように成し遂げつつあるのか、などの現在までの歴史を通観します。この歴史の流れを知ることが、ウガンダの現在を理解する鍵だといってもいいでしょう。
第III部では、行政と経済の特徴を、住民の生業としての活動に焦点をあて、近い距離からそれをとらえながら記述します。地方行政に見られる分権化、コーヒー生産に代表される小農輸出経済、主食としての料理用バナナの重要性、漁労民と牧畜民、工業と企業家、観光産業などの位置づけ、女性の生活上のたくましさなどが理解できるでしょう。
第IV部では、社会と暮らしのいろいろな側面を語ります。学校教育、宗教、特に住民の多数が帰依するキリスト教のウガンダ的特徴、人生において遭遇する死と葬儀に関する社会的行為や、祝い事としての結婚式をめぐる儀式などが語られます。また食事の内容、農村の暮らしの変化、牧畜民特有の社会規範、漁労民の生活などが説明されます。さらに医療という社会行為をめぐって起きている状況が描写されます。
第V部は、現場を熟知する者しか描けないウガンダの文化の発露を、主に若者文化の側面から描写した章を中心に構成されています。現場の躍動感や人々の行為の柔軟性が鮮やかに記されていて、読む者を圧倒するでしょう。
第VI部は、「開発と現代的課題」と名づけられていますが、ウガンダがまさに国家として直面しているいくつかの問題を、具体的に取り上げ、その問題克服への努力を、住民の目線の高さから理解するための材料を提供したものです。何が社会の現場で問題になっているのかを、これによって知ることができると思います。
2011年11月 吉田昌夫