目次
序文
謝辞
要約
はじめに
第1章 雇用危機を若者はどのようにくぐり抜けているか
第1節 若者の雇用失業動向
1.1 過去25年にわたるOECD諸国の定型的動向
1.2 経済危機の間、とくに若者が手痛い打撃を受けた
1.3 各国別の若年失業の最近四半期ごとの動向
1.4 若年失業の短期的見通し
第2節 問題となっている主要因
2.1 多くの要因が若者をとくに景気後退期に危険にさらす
2.2 最も不利な状況にある若者は「傷痕」効果というリスクにさらされている
第2章 若年雇用の課題
第1節 人口学的課題の重大さ
1.1 過去、若者人口が少ないからといって若者の雇用機会が生み出されてきたわけではない
1.2 労働年齢人口における若者の急激な減少は止まった
第2節 各国間の若年労働市場の結果の多様性
2.1 雇用と失業
2.2 代替指標:NEET(雇用されておらず教育も訓練も受けていない者)
2.3 平均を超えて:性別、年齢、民族、教育の役割
2.4 若者の不利な状況は繰り返し累積していき、雇用や賃金の劣悪化をもたらす
第3節 若年労働市場のスコアボードに向けて
第3章 若者の学校から職業への移行における経路と障壁
第1節 統計的指標
1.1 教育を離れる年齢の中央値は各国間でかなり異なるが、これは部分的には学習と労働の間の区別が曖昧なことを反映している
1.2 男女間の不均衡は労働市場への参入後数年間見られるが、各国間の若年労働市場のパフォーマンスを説明するうえでの主要な要因ではない
1.3 国内において教育は学校から職業への移行の質に大きく影響する
第2節 多様な経路
2.1 学校と職業の間の多様な経路を明らかにする必要性
2.2 OECD諸国における学校から職業へのさまざまな移行の比較:困難な課題
2.3 中等教育を離れた学生の学校から職業への経路は欧州諸国よりもアメリカのほうがダイナミックである
2.4 労働市場でうまく結果を出せないリスクのある集団
第4章 職業への移行を改善するよりよい教育訓練
第1節 初期教育と職場学習の主要な課題
1.1 15歳という重要な年齢における成績
1.2 学校中退という現象
1.3 高等教育
1.4 学習と労働の組み合わせ
1.5 若年労働者に対する職業関連訓練
第2節 労働市場で求められる技能を持って若者が教育を離れるよう保証すること
2.1 近年の経済危機における傾向と問題点
2.2 近年の政策方向
第5章 若年雇用に対する需要側の障壁を取り除く
第1節 主な労働需要側の機会と障壁
1.1 若者の仕事はどこにあるのか
1.2 賃金と労働コスト
1.3 雇用保護
第2節 若年雇用に対する需要側の障壁に取り組むこと
2.1 新しい仕事のための新しい技能を促進する基金への投資
2.2 低技能の若者を雇用するコストを減らす
2.3 労働市場の二重構造を全般的に減らすための努力を続ける
第6章 若者に対する雇用危機の長期間の影響を最小限にする
第1節 若者が雇用危機を乗り越える手助けをする
1.1 主要な指標
1.2 主要な課題
1.3 若者にとって仕事を豊富に生み出すような景気回復を保証するための主要な課題
第2節 若者に有効な施策
第3節 近年の離学者世代に対する「傷痕」効果を防ぐ
3.1 主な指標と課題
3.2 若年求職者とのつながりを維持する有望で革新的な施策
第4節 若年労働者のセーフティ・ネットと雇用・訓練経路の確保
4.1 主な指標と課題
4.2 若年労働者に対するセーフティ・ネットを保証する政策
第5節 最も就業能力に欠ける若者向けの積極的労働市場政策をより効果的にし、最も不利な状況にある若者のための社会保護を強化する
5.1 最も不利な状況にある若者を手助けするさらに突っ込んだ選択肢
5.2 若年失業者向けの長続きする雇用実績を達成するための総合的なプログラムが必要とされている
5.3 近年の経済危機において、多くの諸国が不利な状況にある若者向けの有効な既存のプログラムへの助成を改善している
第7章 結論:若者のための雇用政策を実行する
第1節 近年の経済状況において、機会を広げ、能力を開発する
第2節 長期的観点:早期に障害に取り組み、定期的に再評価する
2.1 質の高い幼児教育・保育への恒常的な参加を増やす
2.2 持続的な介入と定期的な再評価を確保する
2.3 就労していない時期の給付は一時的であるべきである
第3節 協調的見解:すべての関係者を巻き込む
参考文献
監訳者解説
訳者あとがき
Boxの一覧
Box1.1 「傷痕」効果についての既存の根拠
Box2.1 若年労働者と高齢労働者の仕事:労働のかたまりの誤謬
Box2.2 NEET:若者に向けた公共政策の対象カテゴリー
Box2.3 欧州では移民の子どもはネイティブの子どもよりも失業率が高い
Box2.4 不利益は労働市場において若者に累積される:フランスのケース
Box3.1 カナダの若年女性の高等教育を受けたことによる利益の大きさ:「移行過程にある若者調査」の一つの知見
Box3.2 教育修了後に雇用される期待年数の計算
Box3.3 学校から職業への移行の期間の測定に関する方法論的困難さ
Box3.4 学校を離れた人々の労働市場の結果を評価するうえでの異なる対象期間:日本では卒業後すぐ、フランスでは卒業から3年
Box4.1 イギリス、オランダ、カナダのオンタリオ州における義務教育修了年齢引き上げへの近年の動向
Box4.2 学校中退という現象の定義と測定
Box4.3 カナダとアメリカにおけるサマー・ジョブ・プログラムの近年の増加
Box4.4 学習と労働の組み合わせ:ちょうどよいバランスの達成
Box4.5 学校から職業への移行を急激なものにしないことは「まず勉強、それから仕事」という伝統的なモデルが支配的な諸国において、一夜にしては達成できない
Box4.6 フランスと欧州におけるセカンド・チャンス・スクール
Box4.7 10代の若者が学校を中退するのを防ぐ前途有望で革新的な近年の施策:教育第一アクティベーション戦略
Box4.8 高等教育の卒業生を支援し高等教育へのアクセスを広げる近年の前途有望で革新的な施策
Box4.9 『働くための能力開発』:OECD職業教育訓練政策レビュー
Box4.10 職業教育訓練の拡大:OECD諸国における近年の政策
Box4.11 実習制度のある諸国は経済危機において良好な若年労働市場をいかに持続したか
Box5.1 最低賃金、若年雇用、在学:国際的実証
Box5.2 スペインにおける雇用保護規制
Box5.3 足がかり仮説を検証するもう一つの方法:オーストラリアのケース
Box5.4 若者の起業家精神の育成:OECD諸国における近年の例
Box5.5 OECD諸国において近年設立された若者向けの新しい技能を促進するための基金
Box5.6 フランスと日本における労働市場の二重構造に取り組むよう設計された近年の若者関連政策
Box6.1 一部の欧州諸国における近年の若者向けの早期集中的なアクティベーションの強化
Box6.2 OECD諸国における若者への働きかけプログラムの近年の例
Box6.3 若年求職者に対する失業扶助給付
Box6.4 アメリカの2009年復興法によって助成された若者プログラム
Box6.5 アメリカのジョブ・コー・プログラム
Box6.6 2009年10月に施行されたオランダの若者投資法
Box6.7 不利な状況にある若者を支援するためのOECD諸国におけるプログラム(2009-2010年)
Box7.1 若者の雇用機会を促進するための教育、労働市場、社会政策の役割:政策フォーラムでの議論のまとめ
Box7.2 不利な状況にある家庭の子どもの困難さを減らす幼児教育・保育および就学前プログラムの役割
Box7.3 ノルウェーの教育制度における長期的展望
図の一覧
図1.1 若年労働市場指標(1985-2009年)
図1.2 若年男女の失業率格差:OECD諸国、欧州諸国、アメリカ、日本(1985-2009年)
図1.3 経済危機の間、若年雇用がとくに手痛い打撃を受けた(2008-2009年)
図1.4 失業率は成人よりも若者で増加した(2008-2010年)
図1.5 経済危機の間、OECD諸国で若年失業率が増加した(2008-2010年)
図1.6 近年の若年失業率はこれまで経験した最高水準に近いかそれを超えている(2010年および失業率最高水準年)
図1.7 高い若年失業率の持続(2007-2011年)
図1.8 若年失業率は成人失業率よりも景気循環に敏感である(1996-2007年)
図2.1 労働年齢人口における若者の割合の減少(1975-2025年)
図2.2 若者の失業と雇用の指標は国によってさまざま(2009年)
図2.3 若者は成人よりもかなり高い失業リスクに直面している(2009年)
図2.4 労働市場とのつながりを失うリスクのあるNEETの若者(2008年)
図2.5 経済危機の間に増加した15-24歳のNEETの数(2008-2010年)
図2.6 若者の就業率と失業率の社会人口学的格差(2009年)
図2.7 若者のNEET率の社会人口学的格差(2008年)
図3.1 教育を離れる年齢と学習と労働の組み合わせ(2008年)
図3.2 15-29歳のフルタイム学生とその他のカテゴリー(働いている学生、労働者、NEET):デンマーク、オーストラリア、ベルギー、スイス(2008年)
図3.3 男女別、教育を離れた後の5年間のフルタイム雇用、常用雇用、無業(2008年)
図3.4 男女別、教育を離れた後の5年間の労働市場の状況:オランダ、スペイン(2008年)
図3.5 教育達成度別、学校を離れた後の5年間に雇用される期待年数(2008年)
図3.6 学校を離れた後の5年間の常用雇用される期待年数(2008年)
図3.7 高校生の学校から職業への主要な移行経路:欧州諸国とアメリカにおける縦断調査
図3.8 取り残された若者:後期中等教育修了資格のない15-29歳のNEET(1995年、2005年)
図3.9 2005年の15-29歳時に臨時雇用に就いており、2年後もうまく入り込めていなかった若年労働者:欧州諸国(2005-2007年)
図3.10 リスクのある若者集団の推定規模:欧州諸国において臨時雇用の後に取り残された集団とうまく入り込めなかった集団(2005-2007年)
図4.1 職業課程と普通課程の15歳生徒の間の学習成績の差異(2006年)
図4.2 ネイティブと移民1世、2世の15歳生徒の数学的リテラシーの得点差(2006年)
図4.3 20-24歳の学校中退者(2008年)
図4.4 高技能の若者と比較した低技能の若者の失業リスク(2008年)
図4.5 高等教育修了率(2008年)
図4.6 年齢別、学習と労働の組み合わせ(2008年)
図4.7 労働者の職業関連教育訓練の年齢別実施率(2003年)
図5.1 若者の仕事は今日どこにあるのか(2008年)
図5.2 最低賃金:若者と成人の相違(2008年)
図5.3 フルタイムの最低賃金労働者の労働コスト(2006年)
図5.4 全体的な雇用保護の厳格性とその三要素(2008年)
図5.5 試用期間の長さ(2008年)
図5.6 若年雇用の不安定さは多くの国で増大してきた(1999年、2009年)
図5.7 15-24歳の若年雇用の雇用形態別の変化(2008-2009年)
図5.8 安定した若年雇用に向けて:失業の影響と臨時雇用の足がかり効果
図5.9 若年労働者のうち非農業自営業者の比率(2008年)
図6.1 積極的施策の対象となる15-24歳の若年者:欧州諸国(2008年)
図6.2 若者の長期失業率(1999年、2009年)
図6.3 15-24歳の若者の失業期間の増加(2008-2009年)
図6.4 若者の失業者、職安登録失業者、失業給付受給者の適用範囲の傾向(2008-2009年)
図6.5 失業給付の純代替率(2008年)
表の一覧
表1.1 将来の所得に対する労働市場参入時の失業率の効果(男性)(1990年代)
表2.1 15-24歳層の若年労働市場のスコアボード(1999年、2009年)
表5.1 成人と若者の最低賃金(2008年)
表5.2 使用者の社会保険料負担分を含めたタックスウェッジ(2000年、2009年)
前書きなど
学校から職業への円滑な移行を促進し、若者がキャリアと人生で前進する機会を与えられるよう保証することは、私たちの経済と社会にとって長らく根本的に重要な課題であり続けてきた。世界経済が過去50年間で最悪の危機から回復しつつある今日、それらは今まで以上に喫緊の課題である。実際、若者は近年の雇用危機の矛先を一身に受けてきた。若年失業率はOECD諸国で20%に近づき、若年失業者は2007年末よりおよそ400万人増えた。
労働市場における最初の経験は、後の職業生活に大きな影響を及ぼす。好調なスタートを切ることは、若者が仕事の世界に入り込むのを容易にし、よいキャリアへの基盤を作るが、最初に失敗すると追いつくのが難しい。とりわけ、雇用危機は、長く続く「傷痕」効果を最近学校を離れた世代に残す可能性がある。かれらが低技能や不利益を被る集団の出身など、複合的な不利益に直面していればなおさらである。
若者の雇用危機への取り組みには、すべての関係者の強い関与が必要である。若者自身をはじめ、政府は対象を絞った効果的な政策手段を通して、労使団体は政労使対話への参加を通じて、さらには教師、専門家、親などの主な関係者が、若者に投資することで事態を改善することができる。
この報告書は、若者に有益な雇用政策と実践の新しい課題に重要な貢献をするものである。雇用危機における若者の雇用と失業の状況を分析し、OECD諸国で成功した政策手段を明らかにしている。そしてまた、学校から職業への移行を容易にする教育と労働市場の構造改革も論じている。この報告書には、OECD『若者と雇用』シリーズの16か国のレビューから得られた近年のデータと主な教訓が活用されている。