目次
はじめに
第I部 グローバリゼーションと多文化共生
1章 グローバリゼーションとは
1.グローバリゼーションと私
2.グローバリゼーションの概念
2章 グローバリゼーションと社会変動
1.多文化化という社会変動
2.システムとしての地球規模化という社会変動
3.多文化共生が大きな課題に
3章 多文化共生のパースペクティブ
1.同心円的から多文化・グローバルなパースペクティブへ
2.同心円的なパースペクティブ
3.多文化なパースペクティブとグローバルなパースペクティブ
4.グローバルなパースペクティブ
第II部 多文化社会に生きる
4章 文化とは何か
1.文化とは
2.グローバリゼーションと文化
5章 現実はつくられる――女性と男性
1.現実はつくられる
2.つくられる女性らしさ
6章 外国人として生きる
1.外国人とは
2.外国人として生きる
7章 マイノリティとマジョリティ
1.多文化社会とマジョリティ・マイノリティ
2.外国人の子どもたちと日本の学校
8章 多文化社会と社会統合のあり方
1.日本のなかのマイノリティ――女性、在日コリアン、アイヌ、被差別部落、障がい者
2.多文化社会の統合のあり方――アメリカの事例を手がかりに
第III部 グローバル社会に生きる
9章 つながる世界――世界を見るレンズ
1.システムとしての地球
2.世界を見るレンズ
10章 南北問題を考える
1.南北問題とは
2.貧困を考える
11章 環境問題を考える
1.グローバリゼーションと地球環境の悪化
2.熱帯林の破壊と私たちの生活
12章 平和問題を考える
1.グローバリゼーションと戦争
2.平和な社会をめざして
13章 国際協力と開発
1.国際協力とは
2.国際協力を考えよう
第IV部 多文化共生社会をめざして
14章 日本社会と日本人であること
1.日本人であること
2.日本社会の再構築
15章 未来をつくるために
1.クラスサミットを開こう
2.私たちにできることを考える
補章
1.多文化共生をめざす授業デザイン
2.レポートの作成
資料.多文化共生のための世界地図
参考文献
前書きなど
はじめに
(…前略…)
さて、グローバリゼーションにともない、社会の多文化化が進み、異なる文化との接触が日常化している。また、地球の縮小化が進行し、地球規模の深刻な問題を共有するなかで、宇宙船地球号という運命共同体としての認識を深めている。もはや異なる文化をもつ人々と共に生きる多文化共生の課題は、私たち人間の追究すべき緊急かつ必須のプロジェクトとなっている。
本書は、この多文化共生の課題に答えるために、アポリアとしての他者理解/自己理解に挑んでいくジャーニーへの招待である。
本書では、さまざまな学習材を通して私たち自身、異なる他者、あるいは、まわりの世界についての見方や考え方、言葉を換えれば私たちのもっている「パースペクティブ(perspective)」について考えていく。そのことを通して、私たちがもつ自文化中心主義の同心円的なパースペクティブへの気づきを促すとともに、多文化なパースペクティブ、および、グローバルなパースペクティブを学んでいく。本書は、このように自らのパースペクティブをふり返り相対化を試みることで、多文化共生のために責任を負う地球市民としての資質能力の基礎を培うことをめざすのである。
本書は、4部15章から構成されている。
I部「グローバリゼーションと多文化共生」では、グローバリゼーションという現象が進むなかで、多文化共生が今日的な課題となっていることを検討する。
そこでは、「グローバリゼーションとは」(1章)何かを捉えた上で、「グローバリゼーションと社会変動」(2章)が進行するなかで、「多文化共生のパースペクティブ」(3章)を培っていく必要性を検討する。
II部「多文化社会に生きる」では、多文化社会の特徴を理解するとともに、そうした社会のなかでいかに生きていくかを自分の課題として考察する。
まず、「文化とは何か」(4章)を捉えるとともに、文化というレンズを通して、「現実はつくられる」(5章)ことをジェンダーをもとに考える。さらに、「外国人として生きる」(6章)、「マイノリティとマジョリティ」(7章)、「多文化社会と社会統合のあり方」(8章)について検討することを通して、多文化社会の特質とそこで生きることの意味を考察する。
III部「グローバル社会に生きる」では、グローバル社会で世界の人々とつながっていることを理解するとともに、地球規模の問題をいかに解決していくのかについて検討する。
まず、1つのシステムを形成する地球のなかで「つながる世界」(9章)の特徴とその世界をみるレンズについて考えるとともに、南北問題(10章)、環境問題(11章)、平和問題(12章)を自分との関わりの点から検討する。さらに、これらの地球規模の問題の解決に向けての「国際協力と開発」(13章)のあり方について検討する。
IV部「多文化共生社会をめざして」では、それまでの議論をもとに、多文化の共生する社会へ向けて、私たちには何ができるのかを考察する。
具体的には、「日本社会と日本人であること」(14章)では、日本人であることの脱構築と再構築という問題を学校を事例として考える。さらに、「未来をつくるために」(15章)では、多文化社会に生きる地球市民として、私たちは何をしていけばよいのかについて考察する。
本書は、高校生、大学生、一般の成人を対象に、多文化共生を学ぶための教科書として執筆したものである。各章では、テーマごとに考えを深める手がかりとしていくつかの課題を設定している。皆さんには、これらの課題に取り組み、個人やグループで考えたり、クラスで話し合ったりすることを通して、自分自身のパースペクティブをふり返ってほしい。
また、巻末に補章1「多文化共生をめざす授業デザイン」、補章2「レポートの作成」を載せている。先生方には、本書を活用したり、授業をご自身でデザインしたりする際に参考にしていただければ幸いである。
(…後略…)