目次
「叢書グローバル・ディアスポラ」刊行にあたって
序論(小倉充夫・駒井洋)
第I部 アフリカ大陸
第1章 サハラ以南アフリカにおける黒人取引――フランス・インド会社の活動(大峰真理)
第2章 西アフリカにおける移動・移民――コートジボワールを事例として(原口武彦)
第3章 南部アフリカにおける植民地支配と移民労働――モザンビーク農村社会の変容と南アフリカ金鉱業の発展(網中昭世)
第4章 民族の離散と回帰――ソニンケ商人の移動の歴史と現在(三島禎子)
第5章 サハラ以南アフリカの難民と定住化――ウガンダの事例から(杉木明子)
第II部 新大陸
第1章 英語圏カリブ海知識人にみるラディカルな知の遺産と実践――M・ガーヴェイ、C・L・R・ジェームズ、R・ネトルフォード、W・ロドニーの軌跡(柴田佳子)
第2章 ネグリチュード、民族主義、汎カリブ海性――フランス語圏カリブ海地域のディアスポラ知識人群像(一九三〇~一九七〇年代)(中村隆之)
第3章 アメリカ合衆国のアフリカン・ディアスポラ――反人種主義の連携を求めて(江成幸)
第4章 ブラジルのブラック・ディアスポラ――リオデジャネイロのファンキにみる言説と身体の政治学(北森絵里)
第5章 カナダのブラック・ディアスポラ――ポピュラー音楽、多文化主義、観光、インターネット空間との関わりから(粟谷佳司)
索引
前書きなど
序論(小倉充夫・駒井洋)
はじめに
本巻は他巻のまとめ方と異なり、送り出し地域から移動を捉えるばかりか、到着地、定住地からも論じている。アフリカ大陸からの人の移動は大航海時代以降の世界における最初の大規模な移動であり、その世界的な影響の大きさということでも、アフリカン・ディアスポラ(ブラック・ディアスポラ)は特異な存在である。本巻の構成はそのことに配慮した結果である。移動の歴史的変遷や地域的特徴について、あるいは移住先での差別と苦難、そしてそれらとの闘いの展開について包括的に論じてはいず、それはマニングの『アフリカン・ディアスポラ』などの諸研究に委ね、ここでは各執筆者によるアフリカ研究・カリブ海地域を含むアメリカ大陸研究の成果に基づき、特定のテーマを取り上げ、ディアスポラにおける諸相の一端を示すことにした。
(…中略…)
おわりに
以上新大陸のブラック・ディアスポラについて、知識人・運動家と音楽表現を中心に概観してきた。奴隷という最悪の限界的状況を共有することから出発したこの人びとには、カリブ海地域、北アメリカ、ブラジルというそれぞれの地域的な条件のもとにさまざまな社会的相違が出現していることは否めない。それにもかかわらず、抑圧されてもけっして消えることのなかった故郷アフリカの痕跡が、この人びとの営為に他との比較をゆるさない独自性を刻印していることは疑えない。それとともに、この人びとのもつ二重三重のディアスポラ性は、その認識と行動をこれからも一層コスモポリタンなものとしていくであろう。