目次
まえがき
第1章 ひきこもりの理解と支援――人とつながり・社会とつながる支援方法論
1 はじめに――ひきこもり支援の基本姿勢
2 ひきこもり支援の方法論
[1]不登校の統計と不登校の原因について
[2]ひきこもりとはどんな問題か・ひきこもる人とはどんな人か
[3]ひきこもる人の支援――個別の諸事情を考慮した長期・総合支援方式
[4]ひきこもる人の支援目標――「ゆるやかな支援目標」について
[5]ひきこもりへの道と回復への道
[6]健康心理学の考え方と支援への活用
[7]ひきこもる人への具体的支援方法――「暮らしの世界」を基本にした支援
[8]ひきこもる人との「適正距離」(ほどよい距離)を保つことについて
[9]関わる入り口のない人とはどう接したらよいか(1)――触れられたくない領域を大切に
[10]関わる入り口のない人とはどう接したらよいか(2)――支援者との間接的対話関係の形成
[11]関わる入り口のない人とはどう接したらよいか(3)――安全な人間関係を「人工的」につくる
[12]関わる入り口のない人とはどう接したらよいか(4)――いつか関係は形成される、その機会はいつ来るのか
[13]本人が来所したときの対話について
[14]家庭内暴力へどう対処したらよいか
[15]就労に向かう支援はどう考えどう取り組んだらよいか
[16]回復過程(自立過程)の不安――ひきこもっているとき以上に慎重な支援を
[17]「ひきこもる人の個別支援計画」と「親と語り合うこと」について
[18]ミニサポートチームとは何か・どう活用できるか
[19]家庭訪問型サポートについて
[20]居場所の意義、居場所づくり、居場所につなぐ働きかけ、関連した支援手段
[21]まとめ(1):家族・支援者の「共同支援」の諸段階
[22]まとめ(2):「共同支援」を「世代間と世代内支援関係」から見る
[23]まとめ(3):ひきこもり支援に必要な社会資源の活用の諸段階
3 おわりに:ひきこもる人への支援の段取り――親・家族へのメッセージ
[資料1]ひきこもる人の個別支援計画の例示
[資料2]ひきこもる人への支援のために親と語り合うこと
第2章 年齢段階から見たひきこもり支援の実践・事例――多様な支援方法の柔軟な活用
1 はじめに
2 ひきこもり支援の具体的局面――実践・事例
3 ひきこもりと支援に関する再確認(まとめにかえて)
4 ひきこもりについてさらに考えたいこと:論点の例示
第3章 ミニサポートチームによるひきこもり支援――当事者にも支援者にもたよりになるチーム支援の方式
1 はじめに
2 ミニサポートチームの手法
3 ミニサポートチームの作業開始から終了まで:ケアマネージャーの役割
4 「長期・年長ひきこもり」の家族・当事者にそれぞれのミニサポートチームを
5 ミニサポートチームの費用負担という問題
第4章 ライフステージに対応したひきこもり支援――「ひきこもり状況」と支援課題
1 はじめに
2 「ひきこもり状況」の類型と必要とされる支援
3 考察――各群・期に必要とされる重点的支援課題(論点)をめぐって
4 結語――ライフステージに対応した支援を構築するために
第5章 ひきこもる人のニーズの多様性と社会的支――包括的支援の法制化を展望して
1 はじめに
2 ひきこもる人の「長期総合的支援方式」をめぐって
3 ひきこもる人およびその家族の個別的支援と社会的支援(ネットワーク)
4 行政に期待されるひきこもり支援――社会資源整備とネットワーク形成
5 従来および現行のひきこもり支援関連制度・施策例
6 ひきこもり支援の法整備をめぐって
7 「ひきこもり支援推進法案(仮称)」のイメージ案――ひきこもる人の包括的支援の制度化のために
8 おわりに
第6章 「青少年総合対策推進法案」および「子ども・若者育成支援推進法」をめぐって――「ひきこもり支援新時代」を展望して
1 はじめに――これまでの経過にふれて
2 青少年総合対策推進法案の主な内容
3 青少年総合対策推進法案の評価・課題など
4 修正法「子ども・若者育成支援推進法」の成立をめぐって
5 「ひきこもり問題の独自の難しさ」と支援の手立て
6 まとめとして――新しい法・施策への期待
第7章 ひきこもり支援をめぐるいくつかの論点――「ひきこもり支援論」の提唱をふまえて
はじめに
1 「ひきこもり支援論(学)」のイメージ
2 ひきこもり支援者論――ひきこもり支援者のタイプについて
3 ひきこもり支援は必要なのか・お節介なのか
あとがき
巻末資料
1)青少年総合対策推進法(案)
2)子ども・若者育成支援推進法
3)子ども・若者育成支援推進法・概要
索引
初出に関するメモ
前書きなど
まえがき
(…前略…)
本書は、「ひきこもり理解と支援方法論」「ひきこもり支援の実践内容」「ライフステージに対応したひきこもり支援」「ひきこもり支援の社会的手立て・法制度の現実とあり方」について整理したものです。その上で、「ひきこもり支援論(学)」の枠組みについてささやかな提案をしています。
ここで、本書の構成について一言触れておきます。第1章は、ひきこもりの理解と支援の具体的方法論を提示しました。第2章は、第1章の展開をふまえて、実際の実践・事例で支援内容を語っています。日常ひきこもり支援に関わり支援方法について苦労している支援者の方には、まず、第1章、第2章を読んでいただきたいと思います。第3章は、ひきこもり支援の方法の一つとして、ミニサポートチームについて触れています。多くの支援現場で実現可能なチームアプローチの方法について述べています。2人でも3人でも可能なチームアプローチです。
続く第4章は、長い人生を展望した支援(ライフステージに対応した支援)のあり方を論じた部分です。一口にひきこもり問題と言っても、思春期(10代後半)から壮年期(40代、50代)あるいはそれ以後まで、40年以上にわたる問題です。ひきこもり支援のあり方を長い人生の視点から、人生の諸段階に対応して論じてみました。
第5章、第6章は、包括的なひきこもり支援を実現するための法制度について論じたものです。第5章は、筆者の視点から、ひきこもり支援の問題点を克服するための制度論、法律論を論じたものです。第5章を執筆した時点では、今回のような立法化の動きは具体的には見えていませんでした。遠くかすかにその胎動を感じていたという時期です。第5章の内容は、「子ども・若者育成支援推進法」が成立した現時点では、古くなったとも言えますが、一人の支援者がこの問題をどう考えてきたかという証言として読んでいただければと思います。第6章は、国会に「青少年総合対策推進法案」が上程された時期に書き始め、「子ども・若者育成支援推進法」が成立した直後に書き終えました。法案に至るまでの経過についても簡潔に触れました。本当は法律の施行状況を見届けたいと思いますが、後日を期したいと思います。
終章は、筆者が考える「ひきこもり支援論(学)」の概要を示したほか、支援者論、支援の意義(ひきこもり支援はなぜ必要なのか)などについて部分的に論じました。
本書では筆者の実践と学習に基づいて、ひきこもり支援の考え方や様々な方法について述べますが、支援方法の選択は、支援者の年齢や性別や支援経験、および、支援される人の年齢・性別・状況によって異なります。それぞれの支援者が、ひきこもり支援に関する基本的な理解を共有した上で、その人らしい独自の支援スタイルを身につけることがよいのだと思います。若い人は若い人なりによき支援者に、年配の人は年配の人なりによき支援者(若い支援者を支援することも含む)になり得るのだと思っています。
本書では、不登校の支援については、部分的にしか触れていません。不登校支援については筆者の前著(『ひきこもり・ニート・不登校の支援――健康心理学と社会的支援の視点から』三和書房、2006年)を参照していただきたいと思います。
(…後略…)