目次
まえがき(多田孝志)
序章 日本国際理解教育学会の回顧と展望(多田孝志)
第I部 カリキュラム開発の理論的枠組み
第1章 国際理解教育の理論と概念(渡部淳)
第2章 カリキュラムの目標・内容・方法
1 国際理解教育の目標と内容構成(大津和子)
2 教師のカリキュラム・デザイン力(藤原孝章)
3 子どもの学びからつくるカリキュラム(宇土泰寛)
4 学びの基本技能としての対話力(多田孝志)
5 実践のためのフォーマット開発(中山京子)
第II部 モデルカリキュラムの開発と実践
第3章 多文化社会
1 学習領域「多文化社会」(森茂岳雄)
2 海を渡る日系移民――多文化共生にむけて(中山京子)
3 「多みんぞくニホン」――人との出会いから学ぶ(織田雪江)
4 地域の人とコンサートを開こう――韓国・朝鮮と日本の音楽でつくる音楽活動(磯田三津子)
第4章 グローバル社会
1 学習領域「グローバル社会」(藤原孝章)
2 グローバル化大論争――三つの立場(石川照子)
3 グローバルヒストリーに向けて――環境史の視点を取り入れた授業作り(田尻信壹)
4 グローバルイシューと英語学習――英語学習における内容中心アプローチ(石森広美)
第5章 地球的課題
1 学習領域「地球的課題」(藤原孝章)
2 世界に広がる戦争――直江津捕虜収容所の学習を通して(坂口和代)
3 持続可能な未来への希望――ESD教材としての「対人地雷」(成田喜一郎)
4 人権の普遍性と地域性――「女性差別? 伝統? 誰にとって?」(松井克行)
第6章 未来への選択
1 学習領域「未来への選択」(多田孝志/藤原孝章)
2 新しい市民社会を創る――「つながる力」を育む(小嶋祐伺郎)
3 未来志向の日韓関係を築く――現在と過去の連続性に気づき、未来を考えようとする学習活動(釜田 聡)
4 歴史認識の違いを乗り越えて――「原爆投下の是非」の扱い方(鹿野敬文)
第III部 国際理解教育の多様な試み
第7章 連携でつくる国際理解教育
1 国際理解教育における社会連携(森茂岳雄/高橋順一)
2 学校間連携――UNESCO ASPnetでの協同実践(伊井直比呂)
3 地域での連携(山西優二)
4 内外のNGOとの連携――スタディーツアーの実践(野中春樹)
5 博物館との連携――国立民族学博物館を活用した実践(今田晃一)
6 海外機関との連携――パールハーバーワークショップの実践(中山京子)
第8章 これからの国際理解教育
1 世界遺産教育と国際理解教育(田渕五十生)
2 ことばと国際理解教育(吉村雅仁)
3 シティズンシップと国際理解教育(嶺井明子)
4 持続可能な開発のための教育(ESD)と国際理解教育(永田佳之)
5 外国語活動と国際理解教育(中山博夫/多田孝志)
6 歴史認識と国際理解教育(桐谷正信)
終章 国際理解教育の未来に向けて(米田伸次)
付録 国際理解教育をさらに学びたい人のために――基本文献案内(森茂岳雄)
[資料1]年表:日本国際理解教育学会の研究活動の歩み
[資料2]学会誌『国際理解教育』の主要目次
コラム 国際理解教育の風
1.アメリカ合衆国編(藤原孝章)
2.イングランド編(藤原孝章)
3.オーストラリア編(宇土泰寛)
4.ロシア編(嶺井明子)
5.中国編(森茂岳雄)
6.韓国編(釜田聡)
7.アジア編(永田佳之)
8.アフリカ(ザンビア)編(大津和子)
あとがき(藤原孝章)
索引
前書きなど
あとがき
日本国際理解教育学会の研究大会は1990年に第1回が開催され、2010年をもって20回を迎えた。学会の設立は1991年だが、第1回研究大会が学会設立準備大会であることを考えると、2010年は実質、学会設立20周年にあたると考えてよい。
国際理解教育に関連する学会や活動団体の動向を見ても、日本グローバル教育学会(1997年設立)が、10周年を記念して『グローバル教育の理論と実践』(教育開発研究所、2007年)を、開発教育協会(1982年結成、2003年にNPO設立)が、25周年を記念して、田中治彦編著『開発教育――持続可能な世界のために』(学文社、2008年)、日本国際教育学会(1990年設立)が、20周年を記念して『国際教育学の展開と多文化共生』(学文社、2010年)を刊行している。
本学会も、学会の共同研究として取り組んだ科研費研究(研究代表者・多田孝志、2003-2005年度)が、『グローバル時代に対応した国際理解教育のカリキュラム開発に関する理論的・実践的研究』として成果をみたことをふまえて、節目である2010年の20周年を記念して、まず今年2010年に記念図書を刊行し、次いで翌2011年を目標に『現代国際理解教育事典』(仮題)を刊行することとなった。
本書のベースになっているのは、科研費研究の成果報告書である。本書の構成も多くは報告書にしたがっている。国際理解教育の理論的な枠組みを明らかにしたあと、授業実践に不可欠のカリキュラム(目標、学習領域、方法)を論じ、教師と子ども、そして対話という授業実践の主体に関わる基本要素について述べた。そのあと、本学会の特色ともいうべき学校現場の先生方の授業実践を、多文化社会、グローバル社会、地球的課題、未来への選択という国際理解教育の四つの学習領域におけるモデルカリキュラム開発と実践として示した。
本書の最大の特色と意義は、国際理解教育のカリキュラム開発にいたるプロセスを実践的な枠組みとモデルよって示したところにあるといえる。この点で、単なる異文化理解や他国理解、外国語学習、文化交流、国際交流をもって国際理解とする従来の国際理解教育とは一線を画すものになっている。
本書の意義は、もう一つある。本書第III部に示されているものである。それは、博物館や地域、NGO/NPOなど、学校内外の領域へと国際理解教育の視野を広げ、連携を深めている点であり、さらに、世界遺産学習、シティズンシップ、ESD、外国語活動など国際理解教育の新たな領域の可能性を示している点である。これらは、この数年間の学会の研究プロジェクトや研究紀要にあらわれているものでもあるが、国際理解教育学会の新しい研究動向の一端を示し、今後をうかがうものとなっている。
(…後略…)