目次
新版の刊行にあたって
初版へのはしがき
第1章 中等教育学校という学びの場
中等教育学校とは
6年間をともに過ごす意味
この時期の知的発達の特徴
第2章 学び合う子どもたち
「学びの共同体」による学校改革――中等教育のモデル・スクールへ
教科で学ぶ子どもたち
[前期生]自ら考え、探求する基礎を培う
[後期生]学びを深め、発展させる
知の総合を経験する子どもたち
[総合学習入門]1・2年は基礎期
[課題別学習]3・4年は充実期
[卒業研究]5・6年は発展期
第3章 成長する子どもたち
行事で成長する
[銀杏祭]自分たちで作り上げる文化祭
[体育祭]生徒主体の体育祭
[水泳と遠足]自分自身への挑戦
[宿泊研修]調査・研究・発表に取り組む
仲間とともに成長する
異学年交流
現代の友情
第4章 生徒の成長を見守る目
三者協議会の始まり
「開かれた教職の専門性」の探求を――たしかな子ども論・学校論の獲得を基礎に
第5章 双生児研究最前線
ふたごのいる学校
脳の発達と言語習得
第6章 巣立つ子どもたち
卒業生から見た東大附属
東大附属で学んだことの意味
第7章 特色ある入学選抜
志願者が増えている推薦選抜
秘めた可能性を測る一般選抜
第8章 次へのステップ
授業改革のふり返りと展望――全教員のアンケートから
「教えて考えさせる授業」は何をめざすのか――理解・思考・参加のある授業に向けて
あとがき
平成20・21・22年度入学検査問題
前書きなど
新版の刊行にあたって
本書の初版は、東京大学教育学部附属中等教育学校の創立60周年記念事業の一環として、2008年6月に刊行されました。本校の創立以来の伝統である中高一貫教育のなかで学び合い、成長し、巣立っていく生徒たちの姿を描き、同時にその成長を促し見守る学校・教師・授業のあり方、さらには研究校としての挑戦を記録したものとして、幸いなことに多くの方に読んでいただくことができました。
本校では、この2年間の間に、東京大学教育学部の金子元久前学部長、武藤芳照現学部長のもと、東京大学との連携がさらに進められ、授業研究、カリキュラム評価、大学教員による特別授業や研究室紹介、学校図書館の改革、双生児データベースの構築など、さまざまな領域で大学との協力体制がつくられました。
2009年には本書の初版に推薦文を寄せてくださった小宮山宏総長から濱田純一総長に代わり、現在、東京大学全体の将来像を描く行動シナリオが示されようとしています。本校も東京大学の部局のひとつとして、以下の三つの柱からなる行動シナリオを提出しました。
1.「大学・社会での学び」につながる中等教育のモデルの提示
2.双生児研究の拠点づくり
3.教育研究のフィールドとしての整備拡充
このうち、第一の柱については、本校が重視してきた、受験学力に偏らない「確かな学力」の育成と、主体的・実践的に学ぶ力を育てる「総合学習」をベースに、「大学・社会での学び」への接続を見すえたカリキュラムの見直し・充実を図り、中等教育の新たなモデルとして全国
に提示・発信していきたいと考えています。
この視点に立ったとき、本校が進めてきた「学びの共同体」による学校づくりの成果や反省点をしっかりと見きわめ、さらに多様な授業のあり方に視野を広げ、実証的に、そして理論的にも納得のいく方法で、「確かな学力」を育てていくことが重要になってきます。
本書の増補改訂の機会に、このような観点から、「次へのステップ」という新しい章を加え、新版として改めて世に問うことといたしました。既存の章に関しましても、記述や資料の追加等がなされ、また付録では本校が入学者に対して何を求めているかがわかる最近の入学検査問題が収められています。
この新版によって、「常にチャレンジしている学校」(衞藤隆前校長の「初版へのはしがき」より)の姿をご覧いただければ幸いです。初版同様、多くの方に読んでいただき、忌憚のないご意見をいただけることを願っています。
2010年3月 東京大学教育学部附属中等教育学校校長 南風原朝和