目次
はじめに
要約と主な提言
序
第1章 これからの課題
第1節 人口動態と労働市場の成果
A.労働年齢人口における若者の割合は減り続けている
B.若年就業率と失業率
C.就業しておらず、教育や訓練を受けていない若者(NEET)
第2節 学校から職業への移行
A.若年労働市場における高い職業流動性
B.不安定雇用の増加
C.入職時の地位はその後の地位を決める決定的な要因である
D.より多くの若者がより長期間、親と同居するようになっている
第3節 要点
第2章 教育と訓練
第1節 教育制度の全般的な成果
第2節 後期中等教育と労働市場
A.職業教育は相対的に希少である
B.教育と労働市場の連携
C.学校中退者
第3節 高等教育と労働市場
A.労働市場からの要求に対する対応能力の改善
B.高等教育資格における男女格差に取り組む必要性
C.高等教育への経済的支援が限られている
第4節 学校と職業の間
第5節 訓練
第6節 要点
第3章 若年雇用への需要側の障壁に対する取り組み
第1節 雇用慣行
A.使用者は長期雇用にあまり固執していない
B.年齢に基づいた採用慣行
C.仕事を維持する上で若い母親が直面する困難
第2節 年功賃金制度
A.賃金
B.最低賃金と非賃金労働コスト
第3節 雇用保護規制と若年労働市場
A.雇用保護規制と労働市場の二重構造の拡大
B.さらなる課題
第4節 要点
第4章 積極的労働市場政策と給付
第1節 若年労働市場の成果を改善するための近年の対策
第2節 公共及び民間の職業安定機関
第3節 失業給付
第4節 要点
参考文献
訳者解説
監訳者あとがき
Box一覧
Box1.1 NEETと日本語の「ニート」
Box1.2 日本の労働力調査における非正規労働者カテゴリー
図一覧
図1.1 OECD諸国の労働年齢人口における若者の割合の減少(1975〜2025年)
図1.2 各年齢別、男女別の日本の人口(2007年10月)
図1.3 日本とOECDにおける若年失業と就業の指標(1980〜2007年)
図1.4 OECD諸国における若年失業と就業の男女別指標(2007年)
図1.5 OECD諸国(一部)における高等教育卒業者に対する後期中等教育卒業者の若年失業率(2005年)
図1.6 OECD諸国の若者における長期失業者の割合(1997年、2007年)
図1.7 日本とOECDにおける年齢別、男女別の就業率(1980〜2007年)
図1.8 日本における男女別、学歴別若年NEET率(2006年)
図1.9 OECD諸国における学歴別若年NEET率(2006年)
図1.10 日本における学歴別卒業生就職率(1980〜2006年)
図1.11 日本における年齢別入職率及び離職率(1995年、2005年)
図1.12 日本における2004年卒業生の学歴別3年以内離職率
図1.13 OECD諸国(一部)における入職率(2004年)
図1.14 日本における年齢別非正規労働者率(1988〜2007年)
図1.15 日本における男女別、年齢別、職種別非正規労働者率(2006年)
図1.16 日本における非正規労働者とフリーター(1987〜2006年)
図1.17 OECD諸国(一部)における若年臨時雇用の傾向(1990〜2007年)
図1.18 OECD諸国(一部)における若年パートタイム雇用の傾向(1990〜2007年)
図1.19 日本における年齢別、男女別、正規職に就いている若者の割合(卒業直後、調査時)
図1.20 OECD諸国(一部)における親と同居している未婚者の割合(年齢別、年別)
図2.1 OECD諸国における学歴別25〜34歳人口(2005年)
図2.2 PISA2006における日本の生徒の成績
図2.3 OECD諸国(一部)におけるPISA数学的リテラシー得点の学校間及び学校内の生徒の成績の分散(2006年)
図2.4 日本とOECD諸国(一部)における学校の成績と社会経済的背景との関連(2006年)
図2.5 OECD諸国の後期中等教育における普通教育と職業教育の在籍者(2006年)
図2.6 OECD諸国における学校のカリキュラムへの経済と産業の影響(2006年)
図2.7 OECD諸国における学校中退者(1997年、2006年)
図2.8 OECD諸国における男女別、プログラム別高等教育の卒業者率(2006年)
図2.9 OECD諸国における数学的リテラシー及び読解力の得点における男女の違い(2006年)
図2.10 OECD諸国の高等教育における男女格差(2005年)
図2.11 OECD諸国(一部)における高等教育タイプAの授業料、公的ローン及び奨学金/給付金(2004〜05年度)
図2.12 OECD諸国(一部)における学歴別勤労学生・生徒(2006年)
図2.13 日本において労働者に教育訓練を提供している企業の割合(2005年)
図3.1 OECD諸国(一部)における年齢別労働者の平均在職期間(1996年、2006年)
図3.2 日本における産業別、企業規模別雇用(1970〜2002年)
図3.3 日本における終身雇用に対する労働者の考え方(2004年)
図3.4 日本、OECD及び数か国における末子の年齢別15〜64歳女性の就業率(入手可能な最新年)
図3.5 OECD諸国(一部)における保育の利用可能性と若い母親の就業率(入手可能な最新年)
図3.6 日本とOECD諸国(一部)におけるフルタイム労働者の男女別賃金カーブ(1996年、2006年)
図3.7 OECD諸国(一部)における学歴別、男女別25〜64歳の相対収入(2006年)
図3.8 OECD諸国における臨時雇用と常用雇用に関する雇用保護規制(EPL)指標(2003年)
図3.9 OECD諸国における正規雇用に対する雇用保護規制と臨時雇用の割合(2003年)
図4.1 OECD諸国における若年労働市場プログラムへの公的支出(1995年、2002年)
図4.2 OECD諸国における純失業給付代替率(2006年)
図4.3 OECD諸国(一部)における若年失業給付受給者(1996〜2006年)
表一覧
表1.1 日本における後期中等教育卒業者の進路(1990〜2006年)
表1.2 日本における学歴別若年非正規労働者の割合(2006年)
表1.3 男女別、学歴別、日本の卒業生の卒業後のキャリアパス
表1.4 日本とOECDにおける15〜24歳若者の比較(1997年、2002年、2007年)
表2.1 日本における学校種別高等教育の学生在学率(2006年度)
表2.2 日本における高等教育の専攻分野と仕事の対応性の自己評価(2001年)
表2.3 日本における公的職業訓練(2004〜2006年度)
表3.1 日本における次年度に向けた人事政策上の終身雇用に対する企業の考え方(1993年、2002年)
表3.2 日本における雇用形態別、男女別、年齢別月収(2007年)
表3.3 OECD諸国における成年及び若者の最低賃金(2006年)
表3.4 OECD諸国における使用者の社会保障負担分を含めたタックスウェッジ(2000年、2006年)
表4.1 日本の若年労働市場の成果を改善するための主な政策措置(2007年度)
表4.2 日本における離職理由別、年齢別、加入期間別失業給付受給期間(2007年)
前書きなど
訳者解説
(…前略…)
本書の構成
本書の構成は以下のとおりである。まず第1章では、若者の労働の状況、すなわち失業と就業の動向が示される。具体的には、日本における若年長期失業がOECD諸国の状況とは相反して増加傾向にあること、低学歴層においてNEET率が高いこと、若者の離職率や非正規労働者が増加していること、女性の非正規労働者率が高いこと、入職時の雇用形態がその後の地位を決定する可能性が高いこと、親と同居する若者の割合が増加していることがデータによって明らかにされている。
つづく第2章「教育と訓練」では、OECD諸国と比べて日本では後期中等職業教育の規模が小さく、後期中等職業教育と高等教育のカリキュラムが労働市場の需要とマッチしていないこと、在学中の職業経験の機会も少ないことが述べられている。また、若干増加傾向にある後期中等教育資格のない学校中退者がマイノリティとしてスティグマ化されかねないこと、OECD諸国と比較し、高等教育資格の男女差が大きいこと、高等教育への経済的支援が非常に限定的であることが問題として示されている。さらに、訓練は企業が正規労働者に施すことが中心となってきたため、公的な職業訓練の機会が少なく、非正規労働者が職業訓練を受ける機会が限られてきたと指摘されている。
第3章は労働市場の需要側に焦点を当て、若年雇用への障壁について考察している。日本の労働市場は長期雇用を前提としており、需要変動への対応が鈍い。その代わりに労働市場の二重構造を強化してきた。終身雇用、年齢に基づいた採用慣行、とりわけ子どものいる女性に不利な雇用慣行が労働市場需要側の問題として指摘され、公共保育施設の少なさとファミリー・フレンドリーな職場の重要性が述べられている。さらに、日本の賃金、最低賃金、非賃金労働コストの水準は若年労働者を採用する上で大きな障壁となっているとは考えられないとする一方で、正規労働者に対する強い雇用保護規制の存在が、雇用保護規制の緩い非正規労働者を増大させていることが指摘されている。また、過去10年に労働基準法や労働派遣法の改正により非正規型雇用の規制が変化したことも、派遣労働者の数を増加させた。この章では今後の課題として、使用者と労働者両方のニーズに対する返答として、セキュリティ(安定性)とフレキシビリティ(柔軟性)の双方を高める、いわゆるフレキシキュリティ・アプローチの採用を提案している。
最終章である第4章では、2000年代初頭から導入された日本の積極的労働市場プログラムについて批判的に検討している。これまで日本の労働市場は学校から職業への円滑な移行を保障してきたため、若年労働市場の成果に払われてきた政策関心はそれほど高くなかった。積極的労働市場プログラム全体の支出における若者対象プログラムへの公的支出の割合は未だOECD平均よりもかなり下回っている。本章では「若者自立・挑戦プラン」に基づくジョブカフェ、日本版デュアルシステム、若者自立塾などの一連の政策措置が検討され、このような政策措置に対する政策評価の必要性と低学歴の若者などに対象を絞ることが重要であると指摘されている。一方、日本の公共職業安定所の近年の改革は望ましく、困難にあるすべての若者が職業紹介にアクセスできるよう政府がさらなる努力をするべきだと述べる。また、現在の雇用保険制度と失業給付についても批判的に考察している。日本では失業給付を受給している若年失業者の割合もかなり低く、過去10年の間にさらに減少すらしている。本章では相互義務アプローチの下で、若者に対する雇用支援と所得保障対策を強化する努力を続けることが望ましいと結論付けている。
(…後略…)