目次
まえがき
序章 植民地化の基点
日清戦争後の日本の経済侵略
日清戦争後の政治状況
第一章 統監政治と民衆の抵抗
日露戦争と保護条約
義兵の抗争
新文化運動の芽生え
第二章 植民地統治の成立
併合への道程
一九一〇年代の植民地統治と一〇五人事件
土地調査と林野調査
植民地経済の始まり
第三章 武断統治下の社会と文化
教育と宗教の発展
開化期の文学
第四章 三・一独立運動と臨時政府の樹立
二・八独立宣言から三・一独立宣言へ
三・一運動の全国的波及
三・一運動の評価と臨時政府の樹立
第五章 文化・社会運動の発展
文化政治の統治
言論活動と社会主義運動
物産奨励運動と衡平社運動
学生運動と帰農運動
新幹会の成立と崩壊
一九二〇年代の文学
第六章 軍国主義の支配と民衆の沈黙
兵站基地化政策と皇民化政策
日本統治末期における弾圧
最後の抵抗と民族背反
第七章 民族解放と南北分断
八・一五前後の動き
南北分断と朝鮮戦争
第八章 四・一九民主革命と軍事政権の時代
四・一九民主革命から「十月維新」まで
光州事件と新軍部勢力の登場
民主化前夜の日々
第九章 民主主義という試練
反動の時代を超えて
金泳三政権の民主化
金大中政権の課題
民主政権の挫折
むすび
さくいん
前書きなど
まえがき
朝鮮の近現代史をいつ頃から書きはじめればいいのかと多少は迷った。歴史は過去を語りながら現在を思うものである。
日本の近代とアジア特に中国との関係では優れた著述が溢れている。私は日本の近代と朝鮮との関係を具体的にたどるために、一九〇五年日本が朝鮮を保護国にした歴史から始めようと考えた。それからの時代をやや厳しく問うてきたのは、いまそれとはちがった新しい北東アジア、特に日韓関係が求められていると思うからである。これからの歴史のなかで日韓関係は過去とは異なった意味で強く求められるであろう。そのためにもその過去は厳しく問われなければならないかもしれない。
(…中略…)
ことわっておかなければならないことがある。韓国近現代史の名の下でここでは一九四五年以降の北朝鮮のことについてはほとんど触れることができなかった。それは私が北朝鮮のことに関して知るところが少なく、参考にすべきものを持っていないからであるに過ぎない。北朝鮮が韓国との関係においてのみではなく北東アジアの歴史のなかに積極的に参加する日を祈ってやまない。
歴史はつねにそれを書く人、それが書かれる時代に深くかかわってくることはいうまでもあるまい。歴史にはそれを書く人の歴史の見方はもちろん、その人の念願ともいうべき願いがこめられているといえよう。あえていうならば、この韓国近現代史には私の願い特に日韓関係に対する願いがこめられているといえよう。
北東アジアの新しい時代、それが平和であることはもちろんであるが、創造的交流の時代を念ずる思いがここにはこめられている。北東アジアの三国、日・中・韓は半世紀近い時間をかけて、ともにオリンピックという大きな行事を終えた。この三国がかつてないほど近く感じられる、日帰りで往来のできる国となった。このような世紀を生きる知恵を思いながらこの韓国近現代史が読まれれば喜びこれに過ぎるものはない。
(…後略…)