目次
序章
第1章 市町村児童虐待防止ネットワークの実践理論構築の必要性とその位置
第1節 児童虐待の市町村ネットワークの位置づけと今日的課題
1.児童虐待の対応施策の推移
(1)児童虐待問題への関心
(2)児童虐待防止への法的対応の始まり
(3)市町村に向いた法改正等の動き
2.市町村児童虐待防止ネットワークの困難性
(1)児童虐待の固有性
(2)環境側である関係機関の状況
(3)市町村の実態
(4)ネットワークの困難性
3.海外における児童虐待領域の協働
4.市町村児童虐待防止ネットワーク領域の今日的課題
第2節 市町村児童虐待防止ネットワークに関係する理論
1.関係する理論の検討
(1)ジェネラリスト・ソーシャルワーク
(2)ネットワークに関する理論
(3)マネージメントに関する概念や理論
2.本研究で用いる概念の定義と明らかになった課題
第2章 研究デザイン
第1節 研究目的と研究の枠組み
1.研究目的
2.研究の枠組みとプロセス
(1)第1段階 問題の把握と分析
(2)第2段階 叩き台のデザイン
(3)第3段階 試行
第2節 理論構築のための研究方法
1.GTAの本来的特性
2.GTAからM-GTA誕生の意味
3.GTAを用いた先行研究の問題点
4.本研究にM-GTAを採択した理由
5.研究のプロセス
(1)調査対象とデータ収集
(2)調査者の位置
(3)分析手順
(4)質の確保と評価
第3章 結果と考察——ネットワークを機能させるマネージメントとは
第1節 マネージャーのコンテクストとその関係:影響要因
1.針のむしろ状態:ベースコンテクスト
(1)自己関与拒絶の受理
(2)パワレス状態
(3)対立・葛藤
2.針のむしろをふまえての方向性:ベースからサブへ
(1)視点の転換なし
(2)視点の転換
3.担当エリアにおけるポジション:サブコンテクスト
(1)限定的ポジション
(2)変幻自在なポジション
4.メンバーとの関係性:サブコンテクスト
(1)一方向関係
(2)双方向関係
5.虐待者への価値観:サブコンテクスト
(1)生き様軽視
(2)生き様尊重
第2節 閉殻の連鎖:ネットワーク初期段階のマネージメントプロセス
1.家族のリスクチェック偏重
(1)事例のキャッチ;通報待ち
(2)調査;家族情報の表面的把握
(3)コア会議;目先の相談
(4)アセスメント;リスク判断
(5)機関へのアプローチ;ワンパターン
(6)モニタリング;個別にリスクチェック確認
2.抱え込み維持
(1)相互不信の浮上
(2)動きの中断
第3節 内発の連鎖:ネットワーク機能段階のマネージメントプロセス
1.家族とメンバーの構図化
(1)事例のキャッチ;掘り起こしからの通報受理
(2)調査;家族とメンバー情報の関連づけ把握
(3)コア会議;展開ノウハウ獲得
(4)アセスメント;家族判断・メンバー判断
(5)機関へのアプローチ;マルチバリエーション
(6)モニタリング;全体に定期的意識化
2.共有の誕生
(1)相互信頼の浮上
(2)動きの発生
第4章 結論——実践理論を活かしていくために
第1節 ソーシャルワーク実践理論における意義
1.市町村児童虐待防止ネットワークのマネージメントにおける意義
2.各カテゴリーの意義
(1)マネージメントへの影響要因:コンテクストとその関係
(2)市町村児童虐待防止ネットワークのマネージメントプロセス:コア・カテゴリー
3.既存の理論との関連
第2節 市町村児童虐待防止ネットワーク領域への示唆
1.実践への示唆
(1)マネージメントプロセスへの示唆
(2)マネージメントプロセスへの影響要因からの示唆
2.制度面への示唆
(1)ネットワークマネージメントマニュアルの必要性
(2)現任教育の必要性
第3節 研究方法から見た研究の意義と今後の研究課題
1.M-D&Dから見た意義
2.M-GTAから見た意義
3.本研究の限界と今後の研究課題
参考文献
資料
あとがき
索引
前書きなど
あとがき
本書は、児童福祉の実践現場において、子どもや家族の思いや幸せが優先されるような市町村相談体制を策定していきたいという思いから、発したものです。2000年より、その実践を科学化するために、M-GTAによってモデル作りを行い、実践家であるがゆえに実践現場に返すことにこだわり、実践的活用として試行調査まで実施してきました。さらに、理論的サンプリングを行うという長い経緯を経てきました。
結果である第3章第3節が、機能するマネージメントプロセスですが、第3章第1節、第2節含めての実践理論です。是非、お読みいただき、ご批判いただけたら幸いです。
本書は、第1章については、拙著である、牧里毎治・山野則子編著『児童福祉の地域ネットワーク』「第8章 市町村における子ども専門機関のネットワーク」相川書房、pp.105-124、第3章第1節については、「『児童虐待防止ネットワーク』のマネージメントへの影響要因——針のむしろ状態と3つのコンテキスト」『社会福祉学』48(2), pp. 44-56、を基本に修正し、全体は2008年度関西学院大学学位博士論文に若干修正したものです。なお、本研究は、関西学院大学21世紀COEプログラム「人類の幸福に資する社会調査」2003年度研究費助成をいただいて実施し、出版に際しては、平成21年度日本学術振興会科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術図書)によるものです。
(…後略…)