目次
序文
第1章 宗教への社会学的視点
地域社会における宗教的輪郭
社会学的視点の特質
宗教の定義
宗教の諸相
宗教社会学の発展
要約
第2章 意味と帰属の供給
宗教と意味体系
意味の危機
共同体と宗教的帰属
応用 現代の社会運動における千年王国論と二元論
要約
第3章 個人における宗教
個人の宗教の形成
入信
コミットメント
脱会
要約
第4章 公認宗教と非公認宗教
宗教の公認モデル
公認宗教における構造的変化
公認モデルにおける個人的宗教性
公認の宗教と宗教性の研究
非公認の宗教と宗教性
歴史的展望:「宗教」の社会的構築
現代社会における民衆宗教
非公認的様式の個人的宗教性
非公認の宗教と宗教性の調査
応用 女性の宗教と性別役割
要約
第5章 宗教的集合体のダイナミックス
宗教集団とその社会環境との関係
宗教的志向性
いかに宗教的集合体が発展、変化するのか
応用 宗教運動の出現
要約
第6章 宗教、社会的結束、対立
宗教と社会的結束
宗教と社会的対立
応用 北アイルランドにおける対立
要約
第7章 社会変動に対する宗教の影響力
社会変動における諸要因
宗教は現状を支持する
宗教による社会変動の促進
宗教と社会変動の相関関係を作り出す諸要因
応用 アフリカ系アメリカ人の宗教表現
要約
第8章 現代世界の宗教(メレディス・B・マクガイア/ジェイムズ・V・スピカード)
宗教社会学の4つの物語
現代社会の理解
現代世界における宗教、権力、秩序
現代世界の宗教社会学
要約
付録 フィールド調査のガイド
地域の宗教集団の調査を始めるためのガイド
訳注
用語解説
参考文献
訳者あとがき
索引
前書きなど
訳者あとがき(一部抜粋)
(…前略…)
マクガイア自身が本書の序文で若干述べているように、他の宗教社会学のテキストは、その主な対象を制度宗教とし、宗教とその他の制度との関連(たとえば、宗教と経済、宗教と家族)に重点を置いた章構成となっていることが多い。これに対して本書では、制度よりも、むしろ制度化されるまでの過程に焦点を置き、特に宗教の機能主義的定義を重視しながら、個々人が自らの生に意味付与する仕方に高い関心を払っている。ただ注意しなければならないのは、この個人の意味付与に重点を置いたいわゆる現象学的なアプローチは、マクガイアの場合には個人の主観的意識を焦点としたミクロな視点にとどまっておらず、むしろ個人や集団を取り囲む、より大きな社会状況の変動とそれらとのダイナミックスを強調しているという点であろう。さらに、マクガイアは、この大きな社会状況の変動をグローバル化の議論と接続させることで、現代社会の統合と分裂をめぐる正当化の問題を中心とした宗教と国家のあり方を詳述しており、そこに彼女自身の強い危機意識を読みとることができるかもしれない。
また、他のテキストではほとんど扱っていない、「非公認宗教(nonofficial religion)」(宗教の非制度的側面)に多大な力点を置いているのも本書の大きな特徴であろう。民衆的な生きた宗教実践や超常現象・オカルトなど、制度宗教を重視する視点からはこぼれ落ちてしまう多様な宗教現象にも十分な目配りがなされている。また、多くの事例を紹介しながら、宗教とジェンダーの問題を積極的に扱っている点も本書の魅力であろう。
本書は、アメリカの大学における社会学専攻の3、4年生を主な履修者とする宗教社会学関連クラス用のテキストとして作成されたものである。しかし、初学者用のいわゆる「入門書」とは違い、本書で扱われている研究視座、理論、方法論、概念、および事例のいずれの点においても、大学院生、さらには宗教を専門とする研究者にも十分読み応えのある内容となっている。さらに、本書は、「社会的統合」や「宗教と社会変動」といった宗教社会学のおなじみのテーマを概説したうえで、中心となる章には「応用」という項目を設け、こうしたテーマをさらに具体的な事例を使って小気味よく解説しており、著者の学識の確かさと問題意識の広さに感心させられる。(……)
(…後略…)