目次
まえがき
第1章 被害者刑事訴訟法の意義
第2章 被害者刑事訴訟法の逐条解説
第1節 損害賠償命令
第2節 記録の閲覧・謄写
第3節 犯罪被害者等に関する情報の保護制度
第4節 被害者参加
第3章 諸外国の制度
第1節 ドイツ
第2節 フランス
第3節 イタリア
第4章 背景と歴史
第1節 全国犯罪被害者の会(あすの会)の設立
第2節 あすの会によるヨーロッパ調査
第3節 調査報告書の発行とあすの会シンポジウムでの大会決議
第4節 訴訟参加制度案要綱と附帯私訴制度案要綱の作成
第5節 街頭署名と小泉首相との面会
第6節 犯罪被害者等基本法の制定
第7節 犯罪被害者等基本計画検討会の開催
第8節 法制審議会刑事法(犯罪被害者関係)部会の開催
第9節 国会での成立まで
第5章 犯罪被害者等基本計画検討会における審議状況
第1節 概要
第2節 閣議決定された基本計画の内容
第3節 閣議決定に至るまでの検討会の審議状況
第6章 法制審議会における審議状況
第1節 損害賠償命令制度
第2節 公判記録の閲覧・謄写
第3節 犯罪被害者等に関する情報の保護
第4節 被害者参加制度
第7章 批判と反論
批判1 (国家刑罰権・刑事司法の目的)
批判2 (二当事者対立構造)
批判3 (無罪推定の原則)
批判4 (法廷の混乱)
批判5 (被告人の萎縮)
批判6 (防御の負担の増大)
批判7 (裁判員制度)
批判8 (厳罰化)
批判9 (検察官とは別に主張させる必要性がない)
批判10 (参加しない被害者に対する非難)
批判11 (被告人のお礼参り)
批判12 (被害者が落ち度を責められる)
批判13 (証人の負担)
批判14 (証人尋問と二当事者対立構造)
批判15 (証人尋問と被害者の証言の信用性)
批判16 (証人尋問と被害者の在廷)
第8章 今後の課題
第1節 今日までの歩み
第2節 法改正後の課題
第3節 本章の最後に──刑事司法全般におけるパラダイム転換
付章 参加と損害賠償命令Q&A
1 被害者参加制度Q&A
2 損害賠償命令制度Q&A
資料
衆議院与党修正案要綱/衆議院民主党修正案要綱/衆議院附帯決議/参議院民主党修正案要綱/参議院附帯決議/法制審議会諮問80号(平成18年9月6日)/答申(犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための法整備に関する要綱(骨子))(平成19年2月7日)/法制審議会刑事法(犯罪被害者関係)部会の名簿/犯罪被害者等基本計画検討会の名簿/訴訟参加制度案要綱(全国犯罪被害者の会[あすの会]作成)/附帯私訴制度案要綱(全国犯罪被害者の会[あすの会]作成)
あとがき
前書きなど
まえがき
2007年6月20日、被害者参加制度、損害賠償命令などを含む「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」が成立しました。
私たちが2000年に全国犯罪被害者の会(あすの会)を立ち上げてから7年半が経過し、やっとその思いが叶えられたのです。
その間、私たち被害者は、被害者がいかに過酷な状況におかれているか、また、どのような支援や制度が必要かを訴え続け、国民のみなさんの理解を求めてきました。訴訟参加や刑事裁判を利用しての損害賠償請求はその中でも大きな要望でした。ヨーロッパに学者、弁護士を中心とする調査団を派遣して、訴訟参加制度や附帯私訴制度を調査したり、会員が全国各地で賛成を求める署名活動を行ったり、自治体から意見書を関係方面に提出してくださるよう働きかけたりもしました。
会員はみな被害者やその家族ですが、自分の刑事裁判は殆ど終わっており、これらの活動は自分自身の利益のために行ったものではありませんでした。これから現れる犯罪被害者が、私たちが味わった苦しみを味わってほしくない、犯罪被害者が信頼できる司法制度を作りたい、その一念で活動してきたのです。
あすの会の運動は、顧問弁護士団や協力弁護士の存在を抜きにしては語れません。調査や署名による多数の国民の支持のもとに、我が国の憲法及び刑事訴訟制度のもとでどのような制度を実現できるかについて検討を重ね、訴訟参加制度案要綱、附帯私訴制度案要綱も作成しました。今回の法制審議会刑事法(犯罪被害者関係)部会では、全国犯罪被害者の会の作成した要綱が参考資料として使用され、議論の叩き台ともなりました。顧問弁護団と協力弁護士の諸先生には心から感謝申し上げます。
今回の刑事訴訟法等の改正で実現する被害者参加制度は、全国犯罪被害者の会が要望してきたものと比べれば、かなり小さなものとなっています。しかし、それでも、被害者参加や損害賠償命令の制度創設は、被害者にとって大きな意義を持つと思います。この制度を利用することにより、被害者はやるだけのことはやったと、心の中で一つの区切りをつけることもできるでしょう。
本書は、顧問弁護団の弁護士で、犯罪被害者等基本計画の策定の検討会、法制審議会の審議にも私の随行者として審議の経過を知悉している、守屋典子、高橋正人[高は口がはしご]、京野哲也が後記のとおり分担執筆し、私が監修したものです。
新しい法律の解説だけでなく、諸外国の制度や法案成立の背景、内閣府における検討会や法制審議会の審議状況、法案に対する批判や今後の課題にも触れております。
本書が、新しい法律の理解だけにとどまらず、犯罪被害者の尊厳を守りつつ、適正な制度運用がなされる一助になれば、幸いに存じます。
平成19年7月25日
岡村 勲