目次
序
はじめに
謝辞
第1章 ADHDの概要
ADHDの発生率
ADHDのある子どもの学校での問題
ADHDのタイプ
ADHDの原因
ADHDの重症度に対する環境的要因の影響
ADHDのある子どもの長期的予後
次章以降の構成
第2章 学校でのADHDのアセスメント
学校でADHDを評価するために用いる診断基準
アセスメントの概要
アセスメントの諸段階
発達を考慮した上でのADHDのアセスメント
アセスメント・モデルの実施
症例
アセスメント・プロセスにおける学校で働く専門家の役割
まとめ
資料2.1 子どものための学校混合観察コード
資料2.2 教師−生徒のための行動コーディングシステム基準
第3章 ADHDと学習障害——どんな関係があるのか?
ADHDに併発する認知障害
ADHDに併発する学業不振
ADHDと学習面の問題の因果関係
アカデミックスキルの障害の有無によるADHDの分類
アセスメントの指針——ADHDと学習成績障害
症例
介入への影響
ADHDと特殊教育
まとめ
資料3.1 ジルケルのADD/ADHDのある子どもたち用の受益資格チェックリスト
第4章 早期スクリーニング、特定、介入
幼児期のADHD
スクリーニングと診断手続き
早期介入方法・予防法
地域社会での予防法・介入方法
結論
第5章 学校での介入方法
注意力の問題への介入の概念的基盤
教室での介入方法の基本的内容
随伴性マネジメント法
自己管理法
効果的な指導法
仲間による指導
コンピューターを使った指導
課題修正と指導法の修正
戦略的訓練
高校生の場合の注意点
教師へのサポート
結論
第6章 薬物療法
使用される向精神薬の種類
中枢神経刺激薬の行動に対する効果
中枢神経刺激薬の想定される副作用
薬剤の試験的服用をいつすすめるか
教室での服薬効果の評価法
結果を処方医に伝える
服薬反応の継続的監視
中枢神経刺激薬療法の問題点
まとめ
資料6.1 ADHDの中枢神経刺激薬療法——教師向けパンフレット
第7章 ADHDに対する補助的介入方法
学校での介入方法
家庭での介入方法
効果がほとんどあるいは全くない介入方法
まとめ
第8章 親、専門家、生徒とのコミュニケーション
DSM診断と教育サービス
教育専門家に対する訓練と彼らの責務
中枢神経刺激薬療法をめぐる問題
教育専門家と親とのコミュニケーション
医師やその他の専門家とのコミュニケーション
生徒とのコミュニケーション
まとめ
資料8.1 親・教師向けのADHD関連参考書リスト
資料8.2 医師への紹介状
資料8.3 試験的薬物療法についての医師への問い合わせ状
資料8.4 医師に対する試験的薬物療法の依頼
資料8.5 医師に対する試験的薬物療法の結果報告
第9章 結論と今後の方向性
ADHDのある生徒とかかわるための今後の方向性
結論
参考文献
監修者あとがき
索引
前書きなど
はじめに 不注意で破壊的な行動を呈する生徒は、教育専門家にとって大きな課題となる。事実、教室で行動抑制に問題を示す子どもや青少年の多くが、注意欠陥/多動性障害(ADHD)と診断されている。ADHDのある生徒は、慢性的な学業不振、反社会的行動、仲間・親・教師との人間関係に問題が生じるリスクが高い。従来、この障害の判断と治療は、臨床専門医(小児科医、臨床心理士)が外来ベースで行ってきた。ADHDのある子どもや青少年にとっての最大の問題は学習の場で現れることから、近年、学校で働く専門家はこうした子どもたちのニーズに大きな注意を払うようになっている。加えて、連邦法で特殊教育を受ける資格が定められたことにより、教育者が、学校でのADHD評価・治療に関する訓練を受ける必要性が高まった。この本の目的は、学校で働く専門家が、ADHDのある子どもや青少年を理解し、彼らを治療できるよう手助けすることにある。 1994年にこの本の初版が刊行されて以来、ADHDを題材とした論文、書籍、教科書が爆発的に増加した。だが長年そうであったように、過去の文献のほとんどは、臨床専門家によって、臨床専門家のために書かれたものである。われわれは、親、地域の専門家、教育者がチームとなって協力する必要性を認識しつつ、ADHDに伴う問題を学校という視点から捉えようとした。具体的には、この本では(1)ADHDの可能性がある子どもを発見、評価し、(2)彼らに対する教室での介入プログラムを作成、実施し、(3)治療に中枢神経刺激薬を使う場合、医師とコミュニケーションをはかって協力する、ことを重視している。 第2版では、学校で働く専門家が総合的にADHDを理解し、管理できるよう、以上の3点に関する最新情報を掲載した。この本は、学校心理士、指導カウンセラー、管理スタッフ、一般学級及び特殊学級の教師といった、学校で働く様々な専門家のニーズに応えることを目的としている。ADHDのある生徒はほぼすべての学校に存在し、彼らが幅広い問題を抱えていることを考えると、どの分野の専門家も、この本に何かしらの興味を覚えるにちがいない。また、学校に関連する様々な職業を目指して研鑚を積んでいる学生にとっても、ADHDという複雑な障害を理解する上でこの本が役立つにちがいない。この本は、現場の専門家が使いやすいように書かれている。数字や、用紙のひな型(パンフレット、観察コーディング・シートなど)を含む資料など、教育者に必ず役立つと思われる情報も多数掲載している。必要に応じてこうした資料をコピーし、活用していただきたい。