目次
日本の読者へ
序 現在の危機
第一章 征服され、分断されて
第二章 平壌の視点
第三章 ワシントンの視点
第四章 砲艦グローバリゼーション
結論 統一への道
前書きなど
本書の目的は、二つの朝鮮と合衆国との関係に光を当てることである。本書は南北朝鮮の歴史や米国の外交政策、そして変わりつつある東アジアの経済・軍事状況を簡潔に分析する。また、米国の現政権が南北朝鮮の和解や再統一を進展させるより、むしろ分断して征服する政策を推し進めている実情を明らかにする。近視眼的思考、地政学的自信過剰、あるいは全くの無知といった理由から、米政府は南北の分断——さらにはこの地域の分断——が米国の経済や安全保障上の利益にかなうと決めている。 この種の政策の悲しい響きが、南北朝鮮の歴史を通して聞こえてくる。朝鮮半島は多くの攻撃にさらされた歴史をもち、一説によると過去二〇〇〇年の間に九〇〇回も侵略を受けた。二十世紀には、植民地化、分断、内戦という三つの衝撃に耐えてきた。第一章で明らかになるが、帝国主義の遺産と分断による心理的痛手を抱える人々にとって、民族自決は熱烈な思いのこもった価値観となっている。南では、この自決への願望が、民主化運動を刺激して強い自立経済を創り出す力となり、さらには、より自立した軍の創設に向けた昨今の動きの中心となっている。北では、経済・軍事力の衰退が一〇年以上も続き、自決の精神だけが残った。北朝鮮は自らを飢えたオオカミと呼ぶ。自由と自尊心だけはもち、攻撃を受ければ歯をむき出して激しく戦うオオカミだ——ぬるま湯につかった飼い犬のような南とは違うのだ、と。(「序 現在の危機」より抜粋)