紹介
現代思想が導く、国際政治の最前線
急激な気候変動を背景とする人新世の政治では、もはや人間中心主義(ヒューマニズム)は限界を迎えている。地球温暖化、ポピュリズムの台頭、資本主義による格差拡大…。これらはすべて繋がっているのか。現代思想を導き手に、国際政治の最前線に迫る迫真の論攷。
人新世や思弁的実在論など、近年登場した思想的テーマは、脱人間中心主義ともいうべき傾向をもっている。そうした議論や概念は人文学の世界だけではなく、実は現実社会を考える場面でも有効に機能する。つまり、人間以外の存在を考慮に入れる脱ヒューマニズムと、社会の分断を煽る反ヒューマニズム的言動が同時に勃興する現代の分析として。人間中心主義とリベラルアプローチによる政治が隘路に入り込んだかのようにみえるいま、資本、動物、食、科学技術、負債、地政学、宗教、ジェンダーなど緊迫する数々の問題に、豊富な思想的ツールを動員し分析する。
〇目次
序論 ポスト・ヒューマニティをめぐる政治――種を超える/類を分割する
第Ⅰ部 人間中心主義の隘路
第1章 人新世/資本新世の政治
第2章 動物論的転回の倫理と政治
第3章 食のポリティカル・エコノミー
第4章 制御不能のハイブリッド・モンスターという問題――3・11再考
第Ⅱ部 反ヒューマニズムの政治
第5章 負債の生政治
第6章 地政学的言説のバックラッシュ
第7章 システム危機の表象としてのスペクター(右翼ポピュリズム)
第8章 ポスト世俗化時代のジェンダー・ポリティクス
目次
序論 ポスト・ヒューマニティをめぐる政治――種を超える/類を分割する
第Ⅰ部 人間中心主義の隘路
第1章 人新世/資本新世の政治
1 〈文化(人間)の歴史/自然の歴史〉という分節化の問題
2 人の間における不平等の問題――人新世から資本新世への視座転換
3 物質代謝論の射程と限界――エコ・マルクス主義の論争(二元論/一元論)を超えて
4 反・再帰性の政治――右翼ポピュリズムと気候変動説否認の連動
5 類としての人間を分割する資本の論理を超えて
第2章 動物論的転回の倫理と政治
1 動物化のメタ・ポリティクス
2 動物論的転回――動物問題(人間中心主義問題)が提起するもの
3 人間社会内における抑圧・支配との交差――リベラル・アプローチを超えて
4 種差別主義という人間中心主義を超える共感的想像力
第3章 食のポリティカル・エコノミー
1 「均質新世(homogenocene)」の到来――コロンブス交換以降
2 金融化するグローバル・アグリフード・システムと場所性の喪失
3 GM作物・食品をめぐるリスク・ポリティクス
4 食料主権――場所性の復権を目指すローカルな運動の可能性と限界
第4章 制御不能のハイブリッド・モンスターという問題――3・11再考
1 啓蒙の弁証法、再び
2 不確実性の政治的操作――不運と不正義の境界線をめぐって
3 低線量被曝をめぐる政治――レジリエンスを強要するリスク・ガバナンス
4 道具的理性がもたらす破局を回避するために
第Ⅱ部 反ヒューマニズムの政治
第5章 負債の生政治
1 負債関係の新しい局面――全生活領域の金融化
2 債務関係の原基――高利の禁止と神への債務
3 債務関係の世俗化――国家・債権者への債務
4 経済的権力(債務的関係)と軍事的主権権力の連結
5 グローバル・バイオ・キャピタルに呑み込まれて――債務関係のさらなる深化
6 債務帳消し運動について
第6章 地政学的言説のバックラッシュ
1 「地政学の逆襲」というバックラッシュの言説政治
2 似非科学として記憶から消去されたドイツ地政学、大東亜地政学
3 列強諸国間における地政学という帝国主義的知の交配
4 批判的地政学というチャレンジとその限界
5 認知システム1に訴えるポップ地政学
第7章 システム危機の表象としてのスペクター(右翼ポピュリズム)
1 右翼ポピュリズムのヘゲモニー時代の到来――新しいファシズム?
2 論争的な概念としてのポピュリズム――実体のないスペクター
3 リベラル・デモクラシーに内在するズレの修正を試みるポピュリズム
4 リベラリズムとデモクラシーの乖離――資本主義との蜜月期の終焉
5 差別主義のグローバル化・常態化――世界内戦との共振
6 リベラル国際秩序の危機――ネオ・ウェストファリア世界の到来?
7 移行パラダイムの終焉――ハイブリッド・レジームの定着化とリベラル・ピースの失敗
8 終わり(の始まり)
第8章 ポスト世俗化時代のジェンダー・ポリティクス
1 ポストコロニアル・モメントにおけるマスキュリニティの再編的強化
2 ポスト世俗化時代におけるジェンダー・イシューの位置
3 世俗主義のメタ・ヒストリーと歴史的/性的アイデンティティ
4 「ラディカルな他者」への《宗教的暴力についての神話》の投影
5 進歩史観、回帰史観、破局史観、いずれでもないメタ・ヒストリーへ
あとがき
初出一覧
人名索引