紹介
初版から6年。最新の知見を取り入れて大幅に記述を改訂増補。
古代日本語の全体像を塗りかえる、名著の最新版。
言語研究の立場から、木簡から読み解けることを明らかにし、歴史学・考古学に還元すると同時に、八世紀以前の日本語の真の姿を追究する。言語学と歴史学がクロスする、Excitingな論考。
【本書の論考は、木簡をはじめとする出土物を日本語史研究の資料としてどのように取り扱い利用するか、そこから得られる知見がこれまでの認識にどのような変更をもたらし、証明の及ばなかったところを解明する手がかりとなるか、具体的な問題を取り上げて考察しながら、研究の観点と方法を示すことをねらいとしている。木簡という資料の性格から、論述の多くが漢字使用に費やされているが、真の目標は、漢字という衣を着た七、八世紀日本語の全体像である。】……前書きより
目次
口絵・前書き・年表
序論● 木簡が日本語史研究にもたらすもの
導言
1 八世紀日本における漢字の普及度
2 地方における漢字の普及度
3 七世紀以前の実状を知る手がかり
4 朝鮮半島との関係
5 結語
本論●
第一章 日本語史資料としての七世紀木簡
1 七世紀日本における漢字・漢語の普及
2 漢文訓読と字訓体系の成立
3 日本語に馴化した字音体系
4 漢字で日本語の文を書く諸様式
5 朝鮮半島の漢字使用とのかかわり
第二章 森ノ内遺跡出土手紙木簡の書記様態
導言
一.森ノ内木簡の字訓の性格
1 森ノ内木簡の使途と書記様態との相関
2 森ノ内木簡の用字の検討
3 森ノ内木簡の用字の位置
二.壬申誓記石と森ノ内木簡の空格
1 壬申誓記石の法量と書記様態と文意の相関
2 句読の示標としての空格
第三章 木簡上の日本語
導言
一.木簡の「ひとつひとつ」「ひとりひとり」
1 畳語形態による択一の語法
2 二項並列の構文と文意
二.人名「あしへ」と集団を指す「つら」
1 人名「悪閇」の語形と語義
2 「つら」による業務担当
3 人員の派遣と記録
第四章 地方中心地における漢字の受容—観音寺遺跡木簡
1 七世紀前半の層
2 七世紀中頃の層
3 七世紀後半〜七世紀末の層
4 七世紀末〜八世紀前半の層
5 結語
第五章 大宝二年度戸籍と木簡
導言
一、美濃国戸籍の文字言語史上の位置
1 美濃国戸籍が編まれた頃の漢字使用
2 文字言語としての美濃国戸籍の位置
3 中国籍帳の様式との乖離
4 記載された人名に反映している言語
二.「枚」と「牧」の通用—「牧夫」は「ひらぶ」—
1 上代戸籍の命名原理
2 「枚」と「牧」の通用
3 「牧夫」は「ひらぶ」
4 通用の背景
第六章 万葉仮名「皮」—万葉仮名前史試論
1 万葉仮名「皮」の存在確認
2 万葉仮名「皮」は「波」の略体か
3 単体の万葉仮名であった可能性
4 朝鮮半島の仮借との関係
5 字音と語音の整合性
6 五世紀の音韻体系推定の端緒
7 字音と音韻認識
第七章 古事記と木簡の漢字使用
1 問題設定
2 漢字の字種の比較
3 漢字の用法の比較
4 言語要素の文字化・非文字化
5 書記様態の比較
6 結語
第八章 「歌」を書いた木簡—律令官人が「難波津の歌」を書いた理由
1 律令官人が「歌」をつくる
2 出土資料に書かれた「難波津の歌」ども
3 出土資料に書かれた日本語韻文
4 詠歌の場とその記録
5 漢字で「歌」を書き和歌を書く書記様態
6 結語
・後書き・増訂版後書き
・Ⅰ著者名索引・Ⅱキーワード索引